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» 2012年10月12日 11時00分 公開

甚さんの「バンバン板金設計でキャリアアップ」(5):断面探索スキャン&絵辞書でしっかり板金設計! (2/3)

[國井良昌/國井技術士設計事務所(Active Design Office),MONOist]

 甚さんの言う「居心地のいい日本企業」とは一体、どういう意味でしょうか?

 実は、隣国企業でのコンサルテーションは土曜日、セミナーは日曜日というパターンがほとんどです。セミナーは、朝の9時から始まり、夕方の17時で終わります。

 セミナー会場のドアの前は、7時半前から参加者の列ができています。8時ちょうどになり、ドアが開くと同時に、まるでデパートの初売りバーゲンさながらに突進します。前席を取るためです。もう一度言いますが、これは“日曜日の朝の”出来事です。

 日曜日でも受講者の「休出手当て」はありません。手当てどころか、約5000円の受講料を支払います。5000円は、隣国においては、約1万〜1.5万円の価値に相当します。集められた受講料は明朗会計の下、その企業名義で国内の恵まれない子どもたちへ寄付されます。

良

甚さん、僕の会社だと、講習会費用は会社負担、おまけに出張手当や宿泊手当て、休日の場合は、「休出手当て」も出ます。


甚

そうか、だから“例の現象”が起きるんだなぁ! 日本のセミナーは、後部座席の両端から埋まる。「飽食」の末期症状かもしれねぇよなぁ!


日本人技術者と中国/韓国人技術者の意識の相違:甚さんの設計サバイバル大特訓(3)より「例の現象」

 この「甚さんシリーズ」で何度も言ってきたことですが……。

 日本の生産技術はほぼ世界一です。正解にいえば、生産技術ではなく量産技術です。しかし特に近年、日本の商品企画力と設計力は、世界の先進工業国の中で恐らく、最下位ではありませんが、かなり下位です。

 そして今、日本の大企業は、戦後最大の危機に陥っています。その理由を企業の経営者は東日本大震災、海外の自然災害(タイの洪水)、長引き円高とよくいわれますが、本当でしょうか?

 ある経済誌では、「経営者の判断力や決断の遅さが原因」と述べられていました。

 一方、当事務所では「商品企画力と設計力の低下である」と各方面で主張してきました。その証拠が「世界の異端児」「何でもあり!」の日本の携帯電話です。客が望んでいない機能を盛り込むだけ盛り込み、気が付けば「ガラパゴス仕様」になっていました。

甚

それでも飽き足らず、1台4役や5役のOA機器、エアコン付洗濯機、イオン発生装置付液晶テレビ、きわめ付けは「放射線測定」機能付きスマホだろ……。もう、あきられるどころか、末期症状じゃねぇかい!


 前回は、DIY店で販売されていた以下の部品のコストを見積もりしましたね。

前回の図8 三角リブによる補強と薄肉化で低コスト化設計(「ついてきなぁ! 加工部品設計で3次元CADのプロになる!」日刊工業新聞社刊より)

 設計見積もりとは、本来、図面がない状況で「およそ、いくらか」を算出する設計プロセスです。これができなければ、図面がない状態での設計審査が実施できません。低コスト化活動もできません。競合機分析もできないことになります。

 その一方で、隣国の企業は日本製品に対して徹底した競合機分析、例えば、コスト分析をしているのに、多くの日本企業で国内および隣国製品の競合機分析をしていません。その理由の1つに、設計者がコスト見積もりできない現実がありました。

 「できない」とは口が裂けても言えません。そのような自分のプライドを優先させて「やらない」と言うのです。

良

ぬぬぬ、この悪しき先導者……。僕の会社で言えば、うちの部課長のことですよ!


甚

なぁるほど! 競合機分析をやらないのではなく、「できない」まで落ちたか? あん? その主犯格が、オメェの会社の部課長……!? それは真実か?


良

そうですよ! 飲食店のご主人の方がよっぽど進化していますよ。


 表1は、日本企業における低コスト化会議の議事録と、あの有名な隣国企業における同、議事録との比較です(商品は「手動鉛筆削り」に置き換えました)。

表1 日本企業と隣国企業の低コスト化活動に関する議事録の比較(「ついてきなぁ! 加工部品設計の『儲かる見積もり力』大作戦」日刊工業新聞社刊より)

 差異に気が付きましたか? 日本企業は、アイデア出しだけで会議が終了します。その議事録には、「本日○○件抽出」と記録されます。しかし、隣国企業の議事録には、「本日○○件抽出、△△ウォンの低コスト化の見通し」となっています。

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