3次元CADやPDMの開発に日本人ユーザーが大貢献SolidWorks World Japan 2012より

ソリッドワークス・ジャパンが開催したユーザー向けイベントで、同社が毎年実施する次期バージョンのβ版テスト貢献者表彰が実施された。日本人ユーザーが、CAD、PDM、CAEと3部門全てで1位を獲得。同イベント内で開催されたプレスイベントでは、同社の国内外におけるビジネス概況や、新たなサービス構想についても語られた。

» 2012年11月15日 21時15分 公開
[小林由美,@IT MONOist]

 ソリッドワークス・ジャパンは、2012年11月14日、同社のユーザー向けイベント「SolidWorks World Japan 2012」を開催した。基調講演には、大和ハウス工業 代表取締役会長 樋口武男氏が、日程後半のラップアップセッションには、京都造形芸術大学 教授 竹村真一氏が登場した。

 「SolidWorks 2013 ベータコンテスト」の表彰式も開催。同コンテストは、ユーザーが参加する次期バージョンのβ版テストで、不具合やリクエストの申告数や採用数を基にランキングし、表彰するというもの。今回は、「SolidWorks」(CAD)、「Enterprise PDM」(PDM)、「Simulation」(CAE)すべての部門で部品メーカー NOKの東野正信氏が1位を獲得した。

 

ベータコンテスト各部門上位貢献者:全世界での結果。黄色が日本人ユーザー

 「β版テストも、私たちが携わる部品の開発と似ている。部品開発でも、試作の段階では修正や変更を受け入れやすいが、量産に入ってからでは対応が難しくなる。CADも同じで、市場に出てから製品に対して代理店経由で不具合や要望を申告するよりも、β版の段階で申告した方がはるかに採用されやすい」(東野氏)。

(左から)ソリッドワークス・ジャパン 代表取締役社長の大古俊輔氏、NOK 東野正信氏、米DS SolidWorks ワールドワイド販売担当副社長 ケン・クレイトン(Ken Clayton)氏

プレスイベントから「東欧においては、経済が立ち上がってきている」

 同イベント日程内で、プレスイベントも開催した。その場で、米DS SolidWorksのワールドワイド販売担当副社長 ケン・クレイトン(Ken Clayton)氏は、同社の各国におけるビジネスについて、以下のように語った。

「中国やインドは、通貨問題や製造需要の低下などが要因で落ち込んだ。欧州では、スペイン、ギリシャ、イタリアの金融危機が依然として続く中にもかかわらず、トップ3といわれる、フランス、ドイツ、イギリスは順調に伸びている。北南米、韓国、日本も順調。東欧においては経済が立ち上がってきていることを身近に感じている。トルコ、ロシア、ポーランド、クロアチアなど。伸びている国で興味深いのは、北アフリカ。これまであまり実績がなかった国で当社製品の採用があった。その背景としては、国内で新規に立ち上がった企業が多いことが考えられる。中でも、ベンチャーのような小さい企業が目立つ。そういった企業は、テクノロジーに対し、必ずしも多額の投資ができるわけではないので、非常に注意深く(テクノロジーを)選定して投資しているのだと思う」。

 日本のビジネスについてソリッドワークス・ジャパン 代表取締役社長の大古俊輔氏は、次のように補足した。「日本の顧客は、まだ2次元と3次元のCADが共存しているところが少なくない。2次元の投資を節約してもらうことで、3次元に投資をしてもらうスタンスは今後も同様。国内では、CADのほかに、CAE、PDMも伸びている」。

――日本のSolidWorksユーザーの中で、設計者によるCAEの社内展開で苦労しているという声をよく聞くが、ソリッドワークスではどう考えているか。(以下、敬称略)

クレイトン CAEは私どもにとっては、まだ新しいビジネス。特にアメリカ外では、SolidWorks Simulation(CAE)の投入が比較的最近だったということもあり、実際は、CAEのビジネスの約50%がアメリカという現状。ただし他の地域でも徐々に増えてきている。

大古 SolidWorks Simulationを日本で提供し5年ぐらい。まさに「いま、立ち上がってきている」ときだと思う。以前、CAEがテーマである200人規模のユーザー向けセミナーを開催した。そこで取ったアンケートで「SolidWorksを使っているか」と尋ねたところ、69%の人が「使っている」と回答した。日本国内の、SolidWorksの現在のシェアは約30%だが、その中のうちの約7割ということになる。つまりそれだけの数の人が、CAEに興味を示しているといえる。

クレイトン 設計者向けのCAEの世界では、かつてCADが2次元から3次元への移行していった時期と似たようなことが起こっている。SolidWorksが登場する以前、3次元CADもごく限られた技術者が使うツールだった。設計者コミュニティーの、まさに主流の部分にCAEを普及させたい。設計検証は設計プロセスの早い段階でぜひ使っていただきたい。

大古 当社は設計者向けのCAEを「設計検証(ツール)」と呼んでいる。設計者が、自分自身で設計検証することで、後工程での手戻りを減らし、開発サイクルを短くし、コストも抑える。あるユーザーの方が、SolidWorks Simulationの使い方について、「ちょこっと試してみる(感覚)」と表現していたが、これがキーワードだと思う。解析専任者がスパコンを回して計算するのではなく、設計者が「ちょっと検討してみる」感覚で使うことがもっと設計現場に浸透してくれば、もっと広がっていくと思う。

――ソリッドワークスはユーザー、リセラー、ベンダーのコミュニティーを深めていく活動に力を入れていると聞いたが、今後はどのような取り組みを考えているか。

クレイトン 詳細や名称は現時点明かせないが、いま、あるコラボレーション用ツールを開発している。ナレッジのデータベースを作り、そこにユーザーがアクセスし、チュートリアルやトレーニング、材料力学といった座学教材などが利用できるようにしたい。またユーザー同士のコラボレーションができるようにもしたい。当社側は、ユーザーが「どのトレーニングレベルにいるか」「どの程度の知識を持っているのか」を把握し、ユーザーに必要とされるトレーニングを提供する、あるいはユーザーの習熟状況を見て新しい技術を開発するなどしたいと考えている。実際にビジネスになるまでには、何年もかかるだろう。

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