板金のベテラン設計者になれる6つのステップとは甚さんの「バンバン板金設計でキャリアアップ」(6)(1/3 ページ)

過去記事と今回の記事を読めば、ベテランの板金設計力の80%がカバーできる! それでは、100%カバーするためには、どんな知識が必要なの?

» 2012年11月16日 11時00分 公開
[國井良昌/國井技術士設計事務所(Active Design Office),MONOist]

当連載の登場人物

甚

根川 甚八(ねがわ じんぱち)

根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん

良

国木田良太(くにきだ りょうた)

ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生まれのイマドキな若者。機構設計者。通称、良君


*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。


甚

前回(第5回)はよぉ、日本と隣国の技術者とを比較して、企業や技術者の意識の差について説明したけど、ちょいと暗くなっちまっただろぉ?


良

そんなことないですよ、甚さん! 真実や実力をしっかり見極めないと、リベンジできません。アスリートだってそうでしょう!


甚

そうだよなぁ……。フィギュアスケートの高橋大輔選手や浅田真央選手も、何度もスランプからはい上がっているもんなぁ。しかも、それが早いときたもんだ! しかし、オメェに教わる日がくるとは思わなかったぜぃ。


良

それでは、前回の最低限のキーセンテンスだけ拾いましょう。それなら暗くなり過ぎることはないと思いますよ。


キーセンテンス1

隣国企業でのコンサルテーションは土曜日、セミナーは日曜日というパターンがほとんどです。セミナーは、朝の9時から始まり、夕方の17時で終わります。


キーセンテンス2

なぁるほど! 競合機分析をやらないのではなく、「できない」まで落ちたか? あん? その主犯格が、オメェの会社の部課長……!? それは真実か?


キーセンテンス3

現在、衰退している日本企業に共通しているキーワードは、「C(コスト、低コスト化)」です。円高とは無関係です。円高でなくても、衰退しているはずです。


キーセンテンス4

図2に示した「軟鉄の応力−ひずみ線図」は、「学問」と決め付けてはいけません。技術の職人なら知っているべき「常識」です。これを知らないということを料理人に例えれば、「米が炊けない」に相当します。炊飯は、米の特性を知り尽くし、微妙に火加減を調整する必要があります。「それなら、電気炊飯器を使えばよい」という人は、料理の実力はそこで頭打ち。電気炊飯器自身では、米の産地や銘柄は選択できません。


甚

オレサマはよぉ、「キーセンテンス4」が気にいっちまったぜぃ。


良

僕も同感です。日本人技術者なら響きますね。「軟鉄の応力−ひずみ線図」は、学校でもこのように教えてほしかったですよ。


甚

そんじゃ今回はよぉ、「バンバン板金設計」にふさわしい、学校では決して教わらない、板金職人直伝の即戦力としようじゃねぇかい。


良

甚さん、よろしくお願いします。一生懸命に勉強して、あんな課長がいる会社を辞めてやるぅーっ!


それでは、教科書にはない、「板金設計の即戦力になるためのフロー」を以下に示します。

バンバン板金設計の即戦力になるフロー

1.断面急変探索のテクニックを身に付ける

甚さんの設計サバイバル大特訓(1)

甚さんの「バンバン板金設計でキャリアアップ」(1):1ページ目

まずはこれだけで、一気にベテラン設計者の50%まで追い付けます。


2.板金設計の絵辞書を携帯し使いこなす

甚さんの「バンバン板金設計でキャリアアップ」(1):2ページ目

これで、ベテラン設計者の60%まで追い付けます。


3.板金設計の基本であるL型板金を上記1、2で設計できる

今回の記事で解説します。

これで、ベテラン設計者の70%まで追い付けます。


4.板金設計の応用である板金箱を上記1〜3で設計できる

今回の記事で解説します。

これで、ベテラン設計者の80%まで追い付けます。


5.板金設計の“調味料”を使用できること

本連載の次回以降で解説します。

これで、ベテラン設計者の90%まで追い付けます。


6.板金箱の変形例を上記1〜5で設計できること

本連載の次回以降で解説します。

これで、ベテラン設計者の100%です!



 材料選択を除く、板金の形状設計だけなら、上に示した6ステップだけで10年、15年先輩のベテラン設計者のレベルに追い付けるでしょう。

 板金加工は非常に難しく、恐らく、日本が世界一の加工技術を保有していると思います。しかし、板金設計に困難は皆無です。機械設計に巨匠は存在しません。機械設計でウンチクを唱える「機械設計オタク」が存在しますが、街の飲食店の料理人や大工さんの方がよっぽど「匠のワザ」の持ち主だと筆者は思います。

 若手技術者は、失敗をおそれず、むしろ失敗を楽しんで、機械工学や機械設計の世界へ踏み込んでください。

 ただし、誤解しないでください。それは「学問なき実務」は、「砂上の楼閣」となります。学問とは「学校で学ぶもの」です。学校へ行けなかった方は、独学を強く勧めます。

甚

良君、良かったじゃねぇかい。オメェは、学問だけはバッチリだ。年齢に見合わず欠落しているのは「実務」だ。一生懸命に勉強しろ。


良

甚さん、よろしくお願いします!


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