CTスキャンした大腿骨のモデルに解析メッシュを切る3次元って、面白っ! 〜操さんの3次元CAD考〜(19)(4/4 ページ)

» 2012年11月22日 11時00分 公開
[水野操 テクノロジーコラムニスト/3D-GAN,MONOist]
前のページへ 1|2|3|4       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 次に、今作成したデータをScanIPに読み込んで、メッシュ作成の作業を開始します。画像を読み込んだら処理のために前準備します。

 ところでスムージングする場合、複数のマスクが重なる領域では、どのような順番で処理するかで結果が変わってしまうので注意が必要です。

 優先度の高いマスクから処理が実行されますが、その順番は「Data Browser」(データブラウザ)で確認できます。ここで順番が意図通りでない場合は、データブラウザ上で入れ替えます。

スムージングを掛ける順番による結果の違い

 今回は「インプラント→大腿骨→骨髄」の順番で設定します。

 今回のストーリーでは、インプラントを使用するので大腿骨の骨頭の部分を除去します。

図の◯の中を除去する

 除去には、「3D editing tools options(3次元編集ツールオプション)」ツールを使用します。

除去用のツール

 後は、このキューブの大きさや形に対してハンドルを操作しながら場所を確定させたら、骨頭部を除去します。

除去後

 この後はメッシュを作成します。

メッシュを作成

 メッシュがこのように作成されます。基本的な操作は、大腿骨のみのメッシュを作成したときと同じなので、細かい手順はここでは省きます。

 前回同様に、断面を切って中のメッシュの状況を確認できます。

メッシュの断面

 また、透明表示にしてあらためて位置関係などを確認した後は、目的のソルバーの形式に合わせてデータを出力すれば作業完了です。

作業完了!

 今回は駆け足で、スキャンデータからのメッシュの作成、CADから来たデータを取り込んでのメッシュ作成、とやってきました。

 現在、設計者によるCAEがトレンドになっています。設計現場でのCAEの適用範囲は今後、どんどん拡がってくるでしょう。そして、解析データは、CADのジオメトリだけでなくなるでしょう。「スキャンデータによる現物ベースの解析」、あるいは「スキャンデータとCADで設計中のデータを合成しての解析」というケースが増えてきそうです。「CADでは形状の定義が難しい」、あるいは「図面や3次元モデルがなく、現物しか残っていない場合」に処理したい場合には、スキャンの作業や解析が必須になってくるでしょう。

 「解析を目的にしているのであれば、スキャンデータからだって直接解析ができる」、そして「そんな手段が実際にあった」ということは、今回の冒頭でも言いましたが、私にとっては「目からウロコ」なことでした。

 私自身、このような作業に慣れていないので、少々戸惑いました。が、いったん手順を覚えれば、作業の流れ自体は単純に進みました。もちろん実業務での作業はこんな簡単なものではなく、試行錯誤の繰り返しでしょう。

 今回は比較的小規模なデータだったので、Core i5を搭載したPC(メモリ4Gバイト)で特に問題なく動きました。本当の作業では、メモリは大きければ大きい方が望ましいようです。少なくとも、現実の作業環境では16Gバイトかそれ以上は欲しいところ、という話も聞いています。

 とはいえ、このような新しいツールを覚えることで、「自分がやれること」がさらに増えたように思いました。

 たかがツール。されどツール。

 新しい武器を手にすれば、エンジニアができることは増えるものです。もし、スキャンデータから解析データがご入用な方はぜひ一度試されてはいかがでしょうか。

Profile

水野 操(みずの みさお)

1967年生まれ。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。マルチ・ディメンション合同会社社長。3D-GAN理事。外資系大手PLMベンダーやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わったほか、プロダクトマーケティングやビジネスデベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開しているほか、マーケティングやIT導入のコンサルティングを行っている。著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)などがある。



筆者の新刊書籍「デジタルで起業する!」(かんき出版刊)

ソーシャルメディア+3Dソフトを活用した起業の本。大がかりな組織に頼ることなく自分の判断で思い通りのビジネスが進められる! 高校生でも十分に起業が可能! 3Dソフトの活用例から賛同者の集め方、資金調達、販売方法まで 理系の人のみならず、文系の人も読める。 1人起業で成功した6名のインタビュー付き。



「3次元って、面白っ! 〜操さんの3次元CAD考〜」バックナンバー
前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.