三次元CADのリモート活用が実用段階に――先駆するIBMの取り組みデスクトップ・クラウド ― CADソリューション

三次元CADをリモートからセキュアに利用するプライベート・クラウド環境「IBM SmarterCloud Engineering Desktop」が注目を集めている。この新たなCADソリューションの開発経緯や特長を、誕生に深く関わったIBMの3人のキーパーソンが語った。

» 2012年11月27日 10時00分 公開
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 2012年9月、日本を発信源とするIBMの1通のプレスリリースが、大きな反響を巻き起こしました。三次元CADを、リモートからセキュアに利用するプライベート・クラウド環境を構築したというニュースでした。

 それは、エンジニアリング・ワークステーションが行っていた処理をサーバー側で実行し、ワークステーションと同等の機能をクラウド型のサービスとして設計者に提供するエンジニアリング環境向けのデスクトップ・クラウドの登場を意味していました。

 オフィス・アプリケーションや営業支援ツールなどの利用を前提とした一般的なデスクトップ・クラウドとは異なり、大容量データの転送が必要となる三次元CADやCAEのデスクトップ・クラウドを本番環境として構築した例は、それまでどこにもありませんでした。

 日本発となるこの「IBM SmarterCloud Engineering Desktop (デスクトップ・クラウド - CADソリューション)」の誕生に深く関わったIBMの3人のキーパーソンが、このソリューションの開発経緯や特長について語ります。

「デスクトップ・クラウド - CADソリューション」誕生の背景

photo ITS事業部 エンタープライズ・セールス
担当部長 白木榮三氏

白木: IBMには、エンジニアリング・ワークステーションやCAD、CAE、PDMなどを多くの製造業のお客さまに提供してきた長い歴史があります。その経験と技術力をベースに、約2年前からクラウド・コンピューティングによるエンジニアリング・ソリューションの開発に取り組んできました。

 今年(2012年)9月には、お客さまのエンジニアリング・デスクトップ環境を仮想化するプライベート・クラウドの構築を支援し、3Dグラフィック・アプリケーションのリモートからの利用を可能にしました。

 この「IBM SmarterCloud Engineering Desktop (デスクトップ・クラウド - CADソリューション)」は、世界初の三次元CADクラウド・ソリューションであり、いまだ実証実験段階にあるほかのITベンダーを大きくリードすることになりました。

photo 構成図

 このソリューションの開発に当たって、私たちは約100社に上るお客さまに直接お会いして、ご要望やご意見を伺い、設計・開発環境のさまざまな課題をお客さまと共有しながら、その解決に向けた開発を進めてきました。

エンジニアリング環境の課題を解決

photo ITS事業部 エンタープライズ・セールス
担当部長 シニアITアーキテクト 尼子公仁彦氏

尼子: デスクトップ・クラウドに対するお客さまの関心は非常に高く、さまざまな期待やご要望を伺うことができました。

 特に、セキュリティーに関しては大きな期待が寄せられています。CADデータは企業の競争力の生命線ともいえる重要な情報ですので、これがサーバーに格納され、クライアント端末に一切データが残らないというデスクトップ・クラウドの特長は大きな意味を持ちます。どこで設計をしても、あるいは、どこから設計情報にアクセスしても、設計データがデスクトップ端末から漏えいするリスクはありません。

 また、商品開発期間を短縮するためのフロントローディング開発やコンカレント開発においては、設計部門と生産部門が開発の早い段階で情報を共有する必要があり、デスクトップ・クラウドによってどこからでもアクセスしてCADデータを手軽にレビューすることが可能になることで、設計から生産までのコラボレーションを強化する環境が整います。


photo GTS事業・ITSデリバリー.ITソリューション
ユーザー&コミュニケーション
ITスペシャリスト 近藤哲司氏

近藤: システムの運用・管理という観点からのお客さまの要望として大きいのが、データのバックアップや障害復旧、アプリケーションの更新やパッチ適用の作業負荷を軽減したいということがあります。従来の環境では1台1台のワークステーションに対して、バックアップやパッチ適用を行う必要がありましたが、デスクトップ・クラウドの仮想化環境では、サーバー側の1つのマスターを管理し展開するだけで完了させることができます。これにより、運用管理に掛かる労力とコストを大幅に削減することが可能になります。運用管理が一元化されることで、万一の災害時にも迅速に復旧でき、事業継続対策としても大きな役割を果たすことができます。

白木: これまで、CADなどのエンジニアリング領域は、一般的なライン部門に比べ効率化や生産性向上への取り組みが難しかった面があります。それは設計者がワークステーションの設置場所でしか作業できなかったり、ワークステーションの変換処理の間ほかの作業ができず待たなければならないなどの制約が多かったことに起因しています。デスクトップ・クラウド環境では、どこからでも、いつでも作業を行うことが可能になり、設計者に柔軟なワークスタイル環境を提供することで、より効率的で生産性の高い設計・開発業務への転換が期待できます。

尼子: 電力供給不足が懸念される中で、製造業のお客さまは節電対策も大きな課題になっています。これまでの開発・設計環境では、ワークステーションごとに無停電電源装置をセットすることが多く、消費電力の多さとともに放熱、マシーンの稼働音などによる作業環境の悪さも問題でした。デスクトップ・クラウド環境へ移行することで、これらの問題は一気に解決されます。

エンジニアリング向けデスクトップ・クラウド環境を構築できた理由とロードマップ

白木: IBMが他社に先駆けて三次元CADのデスクトップ・クラウド環境を構築できた理由は、サーバーやグラフィックカード、デスクトップ仮想化ソフトウェア、CAD/CAEアプリケーションなどをベスト・プラクティスとして組み上げる総合力の高さにあると自負しています。そして、その能力を支えるバックボーンとして、Citrixなどとのグローバル・レベルでのアライアンスがあり、またCAD/CAEの専門技術者の存在があります。この専門技術者は、IBMおよび関係企業(株式会社エクサ)、ビジネス・パートナーに数多く在籍しており、その技術者たちが、お客さまのご要望に一つ一つ対応し、お客さま固有のプライベート・クラウド環境をベスト・プラクティスとして構築することをサポートしています。

尼子: Citrixとの緊密な提携関係を物語るエピソードをご紹介します。三次元CADをクラウド・サービスとして提供するためには、高いグラフィック処理能力やデータ転送能力が必要となり、一般的なデスクトップ・クラウドでは顕在化しなかった、Citrixのバグが発見されたことがあります。そのとき、Citrix社の技術責任者が日本に駆け付け、原因を追究し速やかに修正モジュールが配布され、問題を短期間で解決することができました。

近藤: 総合力ということでお話しすると、IBMが構築に成功した同じグラフィックカードや仮想化ソフトウェアを使って組み立てたとしても、多くの場合、失敗に終わると思います。それはなぜかと言えば、デスクトップCADのような、パフォーマンスが課題になるシステムでは、ハードウェアもソフトウェアもネットワークも最適なチューニングが必要になるからです。サーバー、ストレージ、デスクトップ仮想化ソフト、CADアプリケーション、ネットワークなど各構成要素を最適化する高度なチューニング技術が必要なのです。

 IBMにはできて、ほかではできない、最も大きな差がそこにあるのかもしれません。

尼子: プレスリリースとして発信させていただいたトヨタ紡織株式会社様の構築事例のほか、既に十数社の構築が進み、海外からも多くの問い合わせがあります。

国内の製造業のお客さまも、盛んに海外進出をされている中で、このエンジニアリング環境に向けたデスクトップ・クラウドも、近い将来、ソフトウェア・ライセンスなどの問題をクリアして日本からグローバルへと自在に展開していきたいと考えています。

白木: クラウドとデスクトップ仮想化技術を活用したIBMのエンジニアリング・ソリューションは、先行しているCADソリューションに続いて、今後CAEソリューションやPDMソリューションなどを計画しています。これらは、CADソリューションで結実したデスクトップ・クラウドを共通のプラットフォームとして展開させることができ、コスト的なメリットへの期待にもおこたえしていけると考えています。

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提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2012年12月26日

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