チャリティーグッズの筐体設計をしてみようぜぃ面談不要の加工・成形屋さん(4)

今回は、MONOist「メカ設計フォーラム」でおなじみの「甚さん&良くん」コンビが登場! カッコイイ!? チャリティーグッズの設計にチャレンジだ。プロトラブズの見積もりサービスで樹脂部品設計を支援。

» 2012年11月27日 10時00分 公開
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当連載の登場人物

甚

根川 甚八(ねがわ じんぱち)

根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん

良

国木田良太(くにきだ りょうた)

ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生まれのイマドキな若者。機構設計者。通称、良君


*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。


こんな僕でも、プロダクトデザインできます

良

甚さん! 僕がノートPCの筐体設計で、CAE担当って知っていますよね〜?


甚

あぁ、知りたくねぇがよぉ、知ってしまったぜぇ! 「図面読めねぇ、描けねぇ院卒」で、しかも「仕事取りに行かねぇ、待ってるだけ」だろぅ? あん?


良

甚さんもしつこいですね〜。「図面は描けないけど、読めます!」と何度も言ってるでしょ! それからCAE担当の僕は、確かにかつては「待つ身」でした。でも今は、仕事を取りに行っていますよ。フーンだっ!


甚

おう、悪かったなぁ。ところで、オメェが忘れちまった「頑張れ日本!」は、その後、どぉ〜した?


良

言っておきますけどねぇ、僕は「頑張れ日本!」を忘れていませんよ! 今、会社のサークルでチャリティーグッズを作って、全利益を東日本大震災の被災地に送る計画を立てているんです。若手社員教育と社会貢献を兼ねた活動ということで、会社も公認のプロジェクトなんです!


 

甚

いい取り組みじゃねぇか。でも、オメェが発案者なワケねぇよなぁ、あん?


良

ズンズン図星!! エリカちゃんの発案ですよ〜ん。どうせ、そうですよ〜ん! 僕は役立たずの院卒ですとも……。


甚

オメェ、そんなに自分のことを卑下すんなぁって。院卒だからといって、そんなに自信をなくすな!


 良君の勤める会社の陸上部には、世界選手権や五輪で大活躍のマラソン選手 風早走太君がいます。チャリティーグッズの筐体に、風早選手のサインとメッセージをシルク印刷することにしました。販売台数は2500台を予定しています。そのうち数台は、風早選手の直筆サインを描き込みます。

 会社のWebサイトやSNSを使って販売の告知を出し、受注や出荷はボランティアの有志社員が対応します。

良

せっかくなのでカッコイイデザインにしようと思っています。僕、デザインセンスにはちょっと自信あるんですよ。2500台の限定生産! 「リョータ・クニキダデザインの限定モデル!」


甚

「良君デザインの限定モデル」……、そりゃーかなり微妙だなぁ、あん。まあ要は、“小ロット生産”ってやつだな。


良

今回は、販売管理費はあまり掛からないのですが、原価はなるべく安く抑えたいんですよ。僕が設計を担当する筐体では、できるだけ機構をシンプルにし、なるべくサイズを小さくします。そこでコストダウンした分は、“リョータ・クニキダデザイン”という付加価値に投資だ!


 基本は間違っていないのですが、良君は何か勘違いしているようです……。

甚

“良君のデザインの付加価値”の話は置いておいて、低コスト化のセロリをよく知っているじゃねぇかい。あん?


良

甚さん、もしかして、「セオリー」では……。


 “足し算の企画”が大好きで、「なんでもあり!」の商品を作り続けている日本人技術者は、低コスト化設計が苦手です。低コスト化手法には、「5+2」種の手法があります。歴史ある5つの手法と、コンピュータを駆使する2つの手法のことです。

  1. VE(Value Engineering、価値工学)
  2. QFD(品質機能展開表)
  3. 品質工学(タグチメソッド)
  4. TRIZ(ロシアで開発された問題解決技法)
  5. 標準化(材料や部品に関する標準化や共通化)
  6. モンテカルロシミュレーション(高性能コンピュータを駆使)
  7. コストバランス法(CB法、即効性あり)

その一方で、手法とは別に、下記に示す低コスト化の概念が有名です。

  1. 部品をなくすこと
  2. 一体化にすること
  3. コンパクトなサイズにすること
  4. 軽くすること

良くんが設計した部品で、見積もりを取ってみよう

甚

そんでもって、オメェはどの箇所の低コスト化設計を担当するんだ? まさか、「待つ身のCAE」じゃねぇだろなぁ? あん?


良

だから、今は待っていません! 僕の専門である、筐体部分を担当しています。僕たちの考えている鉛筆削りの構想図がこれです。筐体はまだデザインされていませんが。


甚

ちょいと見シてみろ!


 良君は、以下の図の筐体部分のデザインと、赤文字の部分の設計を担当するようです。

鉛筆削り器の分解構成図
甚

ところで、なぜこの構想に鋼板カバーがあるのか? 要るのか?


良

あれ〜? えーっと、何だっけな、これ……。あ、補強か?


甚

バーロー! そんなことも分からねぇのかい!! 本当にCAEやってるのかっ!?


良

イッテェ! 久々のゲンコツ! 親父にもぶたれたことないのにぃ!


甚

ったく、オメェなあ……。この鋼板、別に補強というわけでもねぇみたいだしなぁ。絵柄違いの筐体を作るのに、この方が都合がよかっただけなんじゃねぇかな。違う絵柄を印刷したカバーを用意しておけば、必要に応じてそれを取りかえればいいだけだしな。


 仮にこの鋼板カバーを1000個作る場合、これだけで型費用が65万円ぐらい、部品単価だと680円ぐらいになるでしょう。ここでは、材料は「SGCC」、展開した鋼板の幅を「76mm」、長さを「140+75+140mm」、曲げ工程が4つあると仮定して計算しました。なお、鋼板(板金)部品の見積もり方法は、以下の記事でも解説しています。


良

そんなに掛かるんですね。そういえば僕らが参考にした物もアニメキャラの絵が描いてありました。今回は流線形のカッコイイ形にしたいし、鋼板カバーは要らないですね。


甚

そうだろう? 筐体は、樹脂箱1つってことだな。


 「部品をなくす」「一体化」は、低コスト化の基本ですね。

良

実は……早くしないと、来週中に打ち合わせがあるんです。助けてください〜。


甚

オレサマの本業は板金加工だから、樹脂の射出成形となると、深いアドバイスはできねぇし、きちんとした見積もりも無理だぞ。その上、オメェ、すげー急いでんだろう? こんなときにはな……。


良

プロトラブズですね!


甚

ん? なんでぇオメェが知っているんだぁ、あん?


良

今年の9月に、プロトラブズ主催の樹脂射出成形のセミナーが静岡県の浜松市であって、僕とエリカちゃんで出席したんです。そこで知ったんですよ。でへへ……。


甚

オレサマはよぉ、新横浜でやっていたセミナーに行ってきたぞ。ニューウェーブを感じたぜぃ! だったらようぉ、さっさと、「餅(もち)は餅屋」に相談しろーいっ!


今回は、この部品をプロトラブズの見積もりに出してみましょう!

 良君は、「肉厚はなるべく均等に」「抜き勾配を入れておく」など、甚さんから基本的なアドバイスを受けながら、射出成形できるレベルの部品に仕上げていきました。

一体型に変えた筐体
筐体の図面
鉛筆削りのデザイン
良

流線形のフォルムに、無駄のない機構! 筐体の上面には「Remember 3.11」(あの日を忘れない)の文字を入れます。カッコイイっしょ! 「国木田&風早コラボモデル!」


甚

オメェが風早選手と並ぶなんて、おこがましいなぁ、おい。


翌朝に、既に見積もりが!

 その翌朝、良くんがPCのメールをチェックすると、既にプロトラブズからメールが届いていました。メールには、3次元モデルと一緒に見積もりが見られるURLが付いていました。

国木田良太 様

このたびはお見積もりをご依頼いただき、誠にありがとうございました。

下記URLをクリックすることで、お見積もりをご確認いただくことができます。パーツごとに双方向対話型の見積もりページをご用意しております。

ProtoQuote見積もりは、双方向システムになっており、見積もり条件を変更した場合の製作費のシミュレーション、設計や材料に関するアドバイスの確認、3Dモデルを回転・ズームなどして成形性の課題などを確認していただくことができます。

なお、見積もりの“(2)成形性、製造性の解析”で、「要設計変更」として記載している事項については、その提示内容以外にもお客さまのご要望に沿ったご提案が可能な場合がございますので、お気軽にお問い合わせください。

 早速、甚さんにもメールで転送し、電話で報告です!

良

甚さん、おはようございます! なんと、もうプロトラブズから回答が来てますよ〜! 3次元モデルのビューを使って問題や製造性がていねいに説明されていて、僕にも分かりやすいですよ。


甚

いんやぁ、オレサマも驚いちまったぜぃ。なんと見積もりが早ぇ〜んだ! まるでネットショッピングのようじゃねぇかい、あん? これをニューウェーブってんだなぁ?


見積もりの結果(製造性)
良

もう少し安くできるかもしれないし、まだ直さないといけない部分もありますけど、修正自体は何とかなりますし、直したらまたすぐに見積もりを出せばいいし……。おかげで、打ち合わせに間に合いますよ! 僕だけじゃ絶対無理でしたよ〜。


見積もりの額:まだ検討の余地がありそう
甚

おう、ひとまず一件落着だな!


良

甚さん、実はお願いがあるんです。今回の見積りは、プロトラブズではなく、僕がやったことにしてくれませんか?


甚

エリカちゃんの前で格好付けてぇ〜てわけだなぁ。まぁ、不正行為だがよう、恋も芽生えるかもしんねぇから、今回だけ、大目に見てやらーな! そんじゃ、寒くなってきたからよぉ熱燗(かん)といくか?


記事協力

國井 良昌(くにい よしまさ)

技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会 幹事、埼玉県技術士会 幹事。日本設計工学会 会員。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。

1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。Webでは「システム工学設計法講座」を公開。著書に「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)がある。



プロトラブズで小ロット生産

「小ロット生産って何個から?」というご質問を受けることがよくあります。プロトラブズの答えは「1個から」。企業の規模にかかわらず、機能や市場性を見極めてから量産したいというニーズや、今回のチャリティーグッズのように当初より数量限定で販売するような場合があります。プロトラブズのオンデマンド製造であれば、少量多品種であっても、必要なときに、必要な数量の小ロット品を短納期で入手でき、在庫を抑えられます。

小ロット生産を行った場合の単価について、今回の記事のチャリティーグッズ筐体を例に説明します。まずはサンプルとして25個射出成形して形状やデザインを確認し、「Go」が出た後、追加で2500個を成形した場合の試算結果が以下です。


鉛筆削り筐体 2525 個製作の場合の試算

ProtoQuoteの金型費用および追加製作シミュレーション欄に提示されている価格とセットアップ料金を試算に加えると、2525 個製造した場合の総コスト単価は822円になります。

射出成形は、通常「1万個以上の量産向け製造プロセス」という認識がありますが、プロトラブズでは違います。まずは3 次元モデルを送り、ご希望のパーツのProtoQuote見積りを依頼し、小ロット生産プロジェクトの試算にご活用ください。平均4時間以内で、製造性解析を含んだ見積りを回答しています。



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提供:プロトラブズ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2012年12月26日

提供

シリーズ「面談不要の加工・成形屋さん」

MONOistの記者が、iPadスタンド作りにチャレンジ! Web上の加工・成形屋 プロトラブズの見積もりサービスで、自分が作ってみた、ちょっといいかげん(?)なモデルが切削加工でいくらになるのか試してみた。

MONOistの記者が、iPadスタンド作りにチャレンジするシリーズ。今回は、“本職の設計者”という素晴らしい助っ人をゲット! また今回もWeb上の加工・成形屋 プロトラブズの見積もりサービスを使いまくった。

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