東芝やキヤノンが優位、微細加工技術の「ナノインプリント」知財ニュース(1/2 ページ)

数十nm単位の微細加工に適した技術「ナノインプリント」。ある種の印刷技術を使って樹脂表面などに微細なパターンを転写する米国の大学発の先進技術だ。同技術の特許出願状況を調査したパテント・リザルトによれば、強い特許を持つ上位5社の中に、日本企業として東芝、キヤノン、富士フイルムが入った。

» 2012年12月10日 19時45分 公開
[畑陽一郎,MONOist]

 材料の表面に微細な加工を施す手法はさまざまだ。機械部品であれば金型を使った射出成形の他、切削や研磨が主流であり、nm(ナノメートル)単位の加工が必要な半導体であればリソグラフィとエッチングを組み合わせが適している。それではリソグラフィやエッチングには不向きな材料の表面に十〜百nm程度の微細な加工を施すにはどうすればよいのだろうか。

 ナノインプリント技術がある。同技術にはさまざまな派生形があるが、基本的な考え方は「はんこ」と同じだ。例えば、はんことなる金型に数十nm程度の凹凸を刻み、基板上に塗布した樹脂材料に押しつけてパターンを転写する。樹脂の他に光学部品の加工にも適する。

 いったん作り込んだはんこを繰り返し利用できるため、加工コストを抑えることができ、製造時間を短縮できることが利点だ*1)

*1) はんこの表面の加工にはリソグラフィ技術を用いることが多いが、1度加工すると繰り返しはんこを利用できるため、有利である。ただし、はんこのように押しつけて形状を転写するため、加工を受ける側に根元が細くなっているキノコのような形(逆テーパー形状)を転写することはできない。

 ナノインプリントの歴史は、現在米Princeton UniversityのNanostructure Laboratoryの教授を務めるStephen Chou氏が1995年に発表した「nanoimprint lithography(NIL)」技術から始まる。同技術は2003年に発表された米Massachusetts Institute of Technology(MIT)がTechnology Review(PDF)で発表した「10 emerging technologies that will change the world」(世界を変える10の新技術)に選ばれてもおり、「ナノ界のグーテンベルク」と評されている。

 同年、国際半導体技術ロードマップ(ITRS)において、32nmノード以降のリソグラフィ技術の候補としても選ばれている。

総合力では東芝やキヤノンが優位

 Chou氏の発表から17年が経過し、ナノインプリント技術の開発が進み、企業ごとの知的財産(知財)を比較できる段階に達している。どのような企業がナノインプリント技術の開発に集中し、優位性をもっているのだろうか。

 特許分析ソフトウェア開発や特許分析情報提供を行っているパテント・リザルトは、2012年12月6日、ナノインプリント関連の特許の評価結果を発表した。日本に出願された特許が対象である。特許ごとの注目度を重み付けして点数化する同社のパテントスコア技術を適用し、企業名別に独自の評価をしている。

 同社によれば特許の総合力ランキング*2)では、東芝、米Molecular Imprints、キヤノン、オランダASML Holding、富士フイルムが上位にある(表1図1)。Molecular Imprintsはナノインプリント用の装置メーカーだ。キヤノンとASML Holdingは半導体露光(リソグラフィ)装置メーカーでもある。

*2) 同社は特許の出願件数だけでなく、同社独自の基準を用いた個々の特許に対するスコアリングを使って特許の質も評価している。その際、「パテントスコア」という基準を使った。パテントスコアとは、市場における特許の注目度を数値化した指標。ここでは、特許審査官の引用が多いことや、出願した企業が権利化に対して意欲が高いこと、競合会社からの無効審判を跳ね返した実績がある場合に、高いパテントスコアを与えている。パテントスコアが50点以上のもののみを集計した値を「権利者スコア」と呼ぶ。

表1 ナノインプリントに関する「強い特許」をもつ5社 権利者スコア順に上位5社を並べた。東芝の権利者スコアの高さが目立つ。有効特許件数も多い。出典:パテント・リザルト
図1 ナノインプリントに関する特許の総合評価 特許の出願件数を円の大きさで示し、縦軸は権利者スコア(総合力)を示す。横軸は最も高いスコア(パテントスコア)を得た特許の点数(個別力)を表す。1992年から2012年10月末までに日本の特許庁で公開された特許公報を対象とした。出典:パテント・リザルト

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