「SiC」と「GaN」のデバイス開発競争の行方は?(企業編)知財で学ぶエレクトロニクス(4)(6/6 ページ)

» 2012年12月26日 10時05分 公開
[菅田正夫MONOist]
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特許の分析仕様・条件

 前回と今回のいずれも、以下に示した分析条件で各社の動向を考察しました。特許データベースの使い方が分かれば、皆さん自ら、下記の条件検索パラメータを活用して確認できます*B-1)

*B-1) IPC(国際特許分類)は国際的な特許分類ではあるが、必ずしも同一基準で付与されているわけではない。日本特許庁は特許の主題(クレーム)に基づき、日本特許特有の特許分類FI(ファイリング・インデックス)を付与している。なお、日本公開系特許公報では、付与されたFIを機械的に変換されたものがIPC(国際特許分類)となっていることに注意が必要だ。


データベース

項目 内容
外国特許 CPA Global Discover(日本技術貿易のご好意で試用しています)
日本特許 CKSWeb(中央光学出版のご好意で試用しています)

分析条件

項目 内容
外国および日本特許 特許検索方法
 次世代パワー半導体を分析するには既に用意された特許分類だけを用いた特許検索では無理があります。そこで、IPC(国際特許分類)と技術用語を組み合わせた簡略な特許検索式を作成しました。SiC/GaNデバイスの特許検索に利用できそうなIPCとしては次のものがあります。

(1)H01L:「半導体装置,他に属さない電気的固体装置」

H01L 29/872:「整流,増幅,発振またはスイッチされる電流を流す1つ以上の電極に電流または電圧のみの変化のみを与えることにより制御可能なもの」である、「ダイオード」のうち「ショットキーダイオード」
H01L 21/336:「半導体装置または固体装置またはそれらの部品の製造または処理に特に適用される方法または装置」のうち、「少なくとも1つの電位障壁または表面障壁,例.PN接合,空乏層,キャリア集中層,を有する装置」であり、「ユニポーラ型の装置の製造のための多段階工程」で、「不純物,例.ドーピング材料,を含むまたは含まない周期律表第IV族の元素またはA↓I↓I↓IB↓V化合物から成る半導体本体を有する装置」である「電界効果トランジスタ」のうち、「絶縁ゲートを有するもの」

(2)H01L 29:「整流,増幅,発振またはスイッチングに特に適用される半導体装置であり,少なくとも1つの電位障壁または表面障壁を有するもの;少なくとも1つの電位障壁または表面障壁,例.PN接合空乏層またはキャリア集中層,を有するコンデンサーまたは抵抗器;半導体本体または電極の細部」

H01L 29/739:「半導体装置の型」のうち、「整流,増幅またはスイッチされる電流を流さない電極に電流のみまたは電位のみを与えることにより制御できるもの」である、「バイポーラ装置」のうち、「トランジスタ型装置,すなわち,供給される制御信号に連続的に応答できるもの」で、「電界効果により制御されるもの」
H01L29/337:「半導体装置または固体装置またはそれらの部品の製造または処理に特に適用される方法または装置」のうち、「少なくとも一つの電位障壁または表面障壁,例.PN接合,空乏層,キャリア集中層,を有する装置」であり、「ユニポーラ型の装置の製造のための多段階工程」で、「不純物,例.ドーピング材料,を含むまたは含まない周期律表第IV族の元素またはA↓I↓I↓IB↓V化合物から成る半導体本体を有する装置」である「電界効果トランジスタ」のうち、「PN接合ゲートを有するもの」
H01L 29/808:「電極」「であり、「整流,増幅またはスイッチされる電流を流さない電極に電流のみまたは電位のみを与えることにより制御できるもの」である、「ユニポーラ装置」のうち、「電界効果トランジスタ」であり、「PN接合ゲートまたは他の整流接合ゲートによって生じる電界効果を有するもの」のうち、「PN接合ゲートを有するもの」
H01L 29/73:「半導体装置の型」のうち、「整流,増幅またはスイッチされる電流を流さない電極に電流のみまたは電位のみを与えることにより制御できるもの」である、「バイポーラ装置」のうち、「トランジスタ型装置,すなわち,供給される制御信号に連続的に応答できるもの」のうち、「バイポーラ接合トランジスタ」

(3)H02M:「交流−交流,交流−直流または直流−直流変換装置,および主要な,または類似の電力供給システムと共に使用するための装置:直流または交流入力−サージ出力変換;そのための制御または調整」

(4)H01L:「半導体装置,他に属さない電気的固体装置」

H01L 25/04:「複数の個々の半導体または他の固体装置からなる組立体」のうち、「個別の容器を持たない装置」


SiCデバイス簡略特許検索式

 SiCあるいは炭化珪素、炭化ケイ素という材料を示す技術用語が、発明の名称/Title、特許請求の範囲/Claims、抄録/Abstractに使われているであろうことを考慮すると、簡略な検索式は次のようになります。なお、IPCはクレームに基づき付与されるので、付与された特許の技術分野は特定されたことになります。

SiC SBD:
H01L 29/872*(SiC+炭化珪素+炭化ケイ素+シリコンカーバイド+シリコンカーバイト)+H01L*SBD*(SiC+炭化珪素+炭化ケイ素+シリコンカーバイド+シリコンカーバイト)
H01L 29/872*(SiC+Silicon Carbide)+H01L*SBD*(SiC+Silicon Carbide)

SiC FET:
(H01L 21/336+H01L 29/739)*(SiC+炭化珪素+炭化ケイ素+シリコンカーバイド+シリコンカーバイト)+H01L*FET*(SiC+炭化珪素+炭化ケイ素+シリコンカーバイド+シリコンカーバイト)
(H01L 21/336+H01L 29/739)*(SiC+Silicon Carbide)+H01L*FET*(SiC+Silicon Carbide)

SiC JFET:
(H01L 21/337+H01L 29/808)*(SiC+炭化珪素+炭化ケイ素+シリコンカーバイド+シリコンカーバイト)+H01L*JFET*(SiC+炭化珪素+炭化ケイ素+シリコンカーバイド+シリコンカーバイト)
(H01L 21/337+H01L 29/808)*(SiC+Silicon Carbide)+H01L*JFET*(SiC+Silicon Carbide)

SiC BJT:
H01L 29/73*(SiC+炭化珪素+炭化ケイ素+シリコンカーバイド+シリコンカーバイト+H01L*BJT*(SiC+炭化珪素+炭化ケイ素+シリコンカーバイド+シリコンカーバイト)
H01L 29/73*(SiC+Silicon Carbide)+H01L*BJT*(SiC+Silicon Carbide)

SiC IJBT:
H01L*IGBT*(SiC+炭化珪素+炭化ケイ素+シリコンカーバイド+シリコンカーバイト)
H01L*IGBT*(SiC+Silicon Carbide)

SiCコンバータ:
H02M*(SiC+炭化珪素+炭化ケイ素+シリコンカーバイド+シリコンカーバイト)
H02M*(SiC+Silicon Carbide)

SiCモジュール:
(H01L 25/04+H01L 25/07)*(パワー半導体+ワイドバンドギャップ半導体)*(SiC+シリコンカーバイド+シリコンカーバイト+炭化ケイ素+炭化珪素+炭化シリコン)
(H01L 25/04+H01L 25/07*(Power Semiconductor+Widebandgap Semiconductor)*(SiC+Silicon Carbide)



GaNデバイス簡略特許検索式

 GaNあるいは窒化ガリウムという材料を示す技術用語が、発明の名称/Title、特許請求の範囲/Claims、抄録/Abstractに使われているであろうことを考慮すると、簡略な検索式は次のようになります。なお、IPCはクレームに基づき付与されるので、付与された特許の技術分野は特定されたことになります。

GaN SBD:
H01L 29/872*(GaN+ガリウムナイトライド+窒化ガリウム)+H01L*SBD*(GaN+ガリウムナイトライド+窒化ガリウム)
H01L 29/872*(GaN+Gallium Nitride)+H01L*SBD*(GaN+Gallium Nitride)

GaN FET:
(H01L 21/336+H01L 29/739)*(GaN+ガリウムナイトライド+窒化ガリウム)+H01L*FET*(GaN+ガリウムナイトライド+窒化ガリウム)
(H01L 21/336+H01L 29/739)*(GaN+Galliumu Nitride)+H01L*FET*(GaN+Gallium Nitride)

GaN JFET:
(H01L 21/337+H01L 29/808)*(GaN+ガリウムナイトライド+窒化ガリウム)+H01L*JFET*(GaN+ガリウムナイトライド+窒化ガルウム)
(H01L 21/337+H01L 29/808)*(GaN+Garium Nitride)+H01L*JFET*(GaN+Garium Nitride)

GaN BJT:
H01L 29/73*(GaN+ガリウムナイトライド+窒化ガリウム)+H01L*BJT*(GaN+ガリウムナイトライド+窒化ガリウム)
H01L 29/73*(GaN+Galliumu Nitride)+H01L*BJT*(GaN+Gallium Nitride)

GaN BJT:
H01L*IGBT*(GaN+ガリウムナイトライド+窒化ガリウム)
H01L*IGBT*(GaN+Gallium Nitride)

GaNコンバータ:
H02M*(GaN+ガリウムナイトライド+窒化ガリウム)
H02M*(GaN+Gallium Nitride)

GaNモジュール:
(H01L 25/04+H01L 25/07)*(パワー半導体+ワイドバンドギャップ半導体)*(GaN+ガリウムナイトライド+窒化ガリウム)
(H01L 25/04+H01L 25/07)*(Power Semiconductor+Widebandgap Semiconductor)*(GaN+Galliumu Nitride)



筆者紹介

菅田正夫(すがた まさお) 知財コンサルタント&アナリスト (元)キヤノン株式会社

メールアドレス:sugata.masao[at]tbz.t-com.ne.jp

1949年、神奈川県生まれ。1976年東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻修了(工学修士)。

1976年キヤノン株式会社中央研究所入社。上流系技術開発(a-Si系薄膜、a-Si-TFT-LCD、薄膜材料〔例:インクジェット用〕など)に従事後、技術企画部門(海外の技術開発動向調査など)をへて、知的財産法務本部特許・技術動向分析室室長(部長職)など、技術開発戦略部門を歴任。技術開発成果については、国際学会/論文/特許出願〔日本、米国、欧州各国〕で公表。企業研究会セミナー、東京工業大学/大学院/社会人教育セミナー、東京理科大学大学院などにて講師を担当。2009年キヤノン株式会社を定年退職。

知的財産権のリサーチ・コンサルティングやセミナー業務に従事する傍ら、「特許情報までも活用した企業活動の調査・分析」に取り組む。

本連載に関連する寄稿:

2005年『BRI会報 正月号 視点』

2010年「企業活動における知財マネージメントの重要性−クローズドとオープンの観点から−」『赤門マネジメント・レビュー』9(6) 405-435


おことわり

本稿の著作権は筆者に帰属いたします。引用・転載を希望される場合は編集部までお問い合わせください。



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