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» 2013年01月21日 10時00分 公開

3次元って、面白っ! 〜操さんの3次元CAD考〜(21):【2013年版】3次元プリンタの普及のための5ポイント (2/2)

[水野操 テクノロジーコラムニスト/3D-GAN,MONOist]
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3.材料費(ランニングコスト)が“ある程度”下がること

 3つ目は、実はランニングコスト、つまり造形材料の費用の問題です。3次元プリンタも「プリンタ」というだけあって、ビジネスモデルは紙のプリンタと似た傾向です。つまり、「機械本体で稼ぐ」というよりは「材料で稼ぐ」というビジネスモデルが主流です(とは言っても、今は機械本体も“よいお値段”ですが)。

 そこで問題になるのが、材料費です。読者の皆さんも、紙のプリンタで「インクって、どうしてこんなに高いんだろう……」と思うことはありませんか? それと同じことが3次元プリンタでも起こり得ます。

 当然、「メーカー側の事情」もあると思います。材料の価格は「機械本体そのものよりも、むしろ材料研究にコストが掛かっていること」の現れでしょう。しかしここはあえて、ユーザーの都合だけを考えて話をします。“ある程度”は材料費(ランニングコスト)が下がらなければ、「あまねく普及」というわけにはいかないでしょう。

 現在、日本で使われている3次元プリンタの多くが海外製です。国産では、産業用ならキーエンスの「アジリスタ」か、個人用であればホットプロシードの「Blade-1」くらいしかないのが現状です。つまり、本体だけでなく材料も、“輸入モノ”が主流ということになってしまうのです。そこで避けて通れないのが「内外価格差」です。

 既に「Shapeways」や「Sculpteo」など海外の3次元造形サービスを利用したことがある人であればお分かりかと思いますが、発注したタイミングによって結構な差が出るものです。

 例えば、私が以前iPhone 4S用マイケースを出力(造形)したときは、国内(自社)で出力(造形)し、6000円弱かかりました。その後、作ったケースを壊してしまったので、同じモデルをShapewaysに発注したところ、日本円にして約3000円(約17ドル+送料約20ドル)でした。ただし以前のものと材料は異なり、最も安価な材料を選んではいますが、仮に同じ材料であっても大きな差は出たでしょう。また発注した時期が「かなりの円高」だった影響もあります。とはいえ「半額」という結果にかなり衝撃を受けました。

 何にしても、円高傾向がいつまで続くか分かりませんし、逆に円安に触れれば材料代が高くなる場合もあります。材料代が高くなれば、おいそれと出力するわけにいかなくなります。

 ということで、やはり造形の材料費も今後の普及の大事なポイントになるでしょう。

 さて以下で挙げる2つは、「2013年中」というような短期的タイムスパンではなく、少なくとも数年は要する長期スパンで期待することです。

4.国産3次元プリンタがもっと登場すること

 次のポイントは、「新たに日本の3次元プリンタが登場するかどうか」です。

 前述したように日本製をうたうのは、私の知る限り、キーエンスとホットプロシードから出ている装置のみです。個人的には、「日本メーカーが、“日本の品質”で3次元プリンタを出してほしい」と願っていますが、それにはまだ時間がかかりそうです。日本のとある大手メーカーでも検討が進められているようですが、現時点ではまだ形が見えません。

 既存の3次元プリンタを見ていると、その機械としての安定性は増してきてはいるものの、「なぜ、ここでトラブルを起こす!?」と思うようなこともよくあるものです。その製品が高価であるのか安価であるのかを問わず、使い勝手も含めて細かいところまで行き届いていることが日本の製品の良さだと思います。

 国産メーカーの製品がもっと出てくれば、さらに一般層への認知度も高まるでしょうし、使い手の要望がプリンタにも反映されやすくなると思います。そして、3次元プリンタがもっと身近になるだろう……、という考え方はさすがに短絡的かもしれませんが……。少なくとも「3次元プリンタの作り手と使い手が日本にいること」で、そのビジネスの流れは確実に変わるのではと期待します。

 特に大手メーカーの場合、仮に開発できる技術があったとしても、やる以上は市場規模の見極めが重要になってくるでしょう。これから3次元プリンタの市場に参入するとすれば、明らかに後発となります。とすると経営面で気になってくるのは、今後の市場規模やその成長のスピードです。

 複合コピー機やあるいは紙のプリンタのように業種を問わず、事務所には必ず置いてある機械と比較すれば、3次元プリンタの場合、市場規模が明らかに小さいことは否定できません。ですので、「そのようなビジネスドメインに、大手企業が積極的に進出してくるかどうか」、疑問です。

 考えてみれば、3D Systemsにせよ、Stratasysにせよ、Objetにせよ……、既に実績ある組織からは出発せず、ベンチャーから出発しています。新しい市場開拓は、新しい会社に向いているものなのかもしれません。

5.造形物のレベルが従来技術による最終製品に匹敵すること

 そうそう、「真の革命」を目指すのであれば、忘れてはならない点があります。それが最後のポイントである「3次元プリンタそのものの性能向上」です。材料の種類や仕上げの品質、強度、経済性などどれを考慮しても、射出成形などの現在主流の製造方法とは、まだ比較の対象になりません。

 つまり“最終製品レベル”の品質の出力が期待できるプリンティング方式、造形材料の改良、あるいは「材料の自由選択」など、そこまでのレベルに持っていけるほどに研究開発が進めば、「真の革命的ツール」となるでしょう。

MAKERSは、ジワジワと増える!?

 3次元データ業界と直接的関係はありませんが、間接的関係(ユーザー)があるということで、引き続き日本の活性化の一環として期待される日本のMAKERS、あるいはベンチャー家電メーカーとして期待されている「プロのMAKERS」の2013年は、どうなるでしょうか?

 これは「3D(3次元)が」とか、「プリンタが」とか、「スキャナが」とかいう、“特定のテクノロジー”で直接的にナントカするわけではありません。

 ベンチャー家電メーカーの皆さんは、魅力的な人たちばかりです。そして現在、メディアで報道される人たちは、比較的“お決まりのメンバー”です。「そのような人たちが、今後もどんどん増えていくか」、つまり2013年は「MAKERSの世界がもっと発展していくこと」が日本や世界のモノづくりが元気になるかどうかを占う1つの指標になりそうです。

 そのような動きと同時に、それに続く人たちがどんどん出てくることです。つまり、今はまだ「点」で存在する“MAKERSな皆さん”が「面」に発展していくことがポイントでしょう。

 言い換えれば、2012年は時代をリードする一部の“ヒーローな皆さん”が目立って活躍したけれども、2013年以降はMAKERS層の人口自体がもっと増えていくのではないかということです。これは「私の予測」というよりは、「私の期待」という意味合いの方が大きいのもしれません。


 ハードウェア寄りの話はここまで。次回は、CADなどソフトウェア寄りの話題がメインです。

筆者からお知らせ

2012年末に「Kindle Direct Publishing」を利用した3次元プリンタの入門本を出版しました。それほどボリュームのある本ではありませんが、3次元プリンタの基本的な情報を網羅したつもりです。既に業界通の方も、そうでない方も、ちょっとしたリファレンスにはなるかと思いますので、よろしければぜひどうぞ。

「初心者Makersのための3Dプリンタ&周辺ツール活用ガイド」(Kindle版)

Kindleをお持ちでない方は、iPhoneやiPad、Androidをお持ちであれば、フリーのKindleアプリを使って閲覧できます。



この記事に出てきた書籍「MAKERS」の著者 クリス・アンダーソン氏が講演します

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Profile

水野 操(みずの みさお)

1967年生まれ。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。マルチ・ディメンション合同会社社長。3D-GAN理事。外資系大手PLMベンダーやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わったほか、プロダクトマーケティングやビジネスデベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開しているほか、マーケティングやIT導入のコンサルティングを行っている。著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)などがある。



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