連載
» 2013年01月29日 13時42分 公開

前田真一の最新実装技術あれこれ塾:第14回 DesignConの注目発表 (2/3)

[前田真一,実装技術/MONOist]

2. 今年の動向

 今年の発表動向としては、高速シリアルデータ伝送とそれに関連したテーマが多く発表されました。また、TSV(シリコン貫通電極)が実用化され、それに関連する発表も目を引きました。

 データ転送の高速化としては、現在4GHz(8Gbps)のPCI Express Gen3の次の規格や40Gイーサネットや100Gイーサネットを見すえた開発、検討があります。

 基板配線で、このような高速信号の伝送を実現するためには損失が最大の問題となります。

 基板配線で高速信号を伝送するとき、信号の高速化によって問題が大きくなってくるのは、損失の問題です。 損失は信号の周波数が高くなればなるほど大きくなります。このため、高速信号ではドライバで出力した信号の振幅が損失によって小さくなり、レシーバで正しい信号が受信されなくなります(図4)。

図4 損失で信号レベルが小さくなる 図4 損失で信号レベルが小さくなる(クリックで拡大)

 損失の大きさは配線の長さに比例します(図5)。このため、長いケーブルでは損失が大きくなり問題が生じるため、高速通信では損失が小さな光ケーブルが多く使われています(図6)。これまでは、基板上の配線は比較的短かったので、損失が問題にはならなかったのですが、基板上の信号がGHz以上になり、この損失が大きな問題となりはじめました。

図5 損失は配線長さに比例する 図5 損失は配線長さに比例する
図6 光ケーブル 図6 光ケーブル 出典:3M

 損失には誘導損失と抵抗損失の2つの原因があります。一般に損失の中では誘導損失の方が影響が大きいのですが、この誘導損失は基板材料の誘電率と誘電正接と呼ばれる2つの特性で決まります(図7)。

図7 誘電正接と誘電率 図7 誘電正接と誘電率(クリックで拡大)

 現在多く使われている基板のFR-4材は、損失が大きいのですが、もっと高価な基板材料では損失の小さなものもあります。しかし、これらの損失の小さな基板材料では、価格、加工性や難燃性などの面でFR-4材に大きく劣っています。損失の少ない基板材料を使い、誘電損失が小さくなってくると、今度は抵抗損失が問題となります。

 抵抗損失に対する対策は、まず、配線パターンに使う銅の純度を高め、配線の導電率を高くします。また、表皮効果により、銅の表面にしか電流が流れなくなります。銅の表面には細かい凹凸があり、高速信号では、電流はこの凹凸に沿って流れます(図8)。

図8 導体上面には凹凸がある 図8 導体上面には凹凸がある(クリックで拡大)

 凹凸が大きいと電流の流れる距離が長くなり、長さに比例して、抵抗が増大します(図9)。銅の表面粗さを小さくし、電流の流れる距離を短くすると同時に配線を広くして配線の表面積を大きくします(図10)。

図9 導体の表皮効果と表面粗さ 図9 導体の表皮効果と表面粗さ
図10 導体の表面積を大きくする 図10 導体の表面積を大きくする

 しかし、銅の純度を高くし、表面を平滑にすると、銅箔の価格が上昇します。また、配線幅を広くすることは基板上の配線密度を下げ、配線層数が多くなったり、配線の特性インピーダンスを揃えるために層の厚さが厚くなったりします。

 PCI ExpressがGen2で2.5GHzであったクロック速度をGen3では倍の5GHzではなく4GHzにしたのかは、基板材料や配線の長さ制限をGen2とGen3で同じにしたかったためです。次のGen4ではGen3の倍、8GHz(16Gbps)を狙っているといわれていますが、配線長さや基板材料の規格を変更しないと難しいといわれています。

 スマホやタブレットPCの爆発的な普及によって、通信回線の不足が深刻になっています。無線回線の不足を補うため、WiHiによる通信もありますが、これらはすべて基地までが無線で、その後は光ファイバなどの通信となっています(図11)。

図11 ネットワークの構造 図11 ネットワークの構造(クリックで拡大)
図12 ネットワークサーバ 図12 ネットワークサーバ 出典:Cisco Systems

 基地局では光では情報処理ができないので、光を電気信号に変換して処理をします。

 このようなデジタル通信データを処理したり、コントロールしたりするコンピュータがネットワークサーバです(図12)。

 音楽や写真、ムービーなどの多くのデータをダウンロード配線するためには、非常に高速で高容量のネットワークサーバが必要です。

 このネットワークサーバでは、外部とのデータのやり取りには40Gイーサネットや100Gイーサネットなど、光ケーブルを主体とした高速ネットワークを使っています。

 例えば100Gイーサネットでは外部から送られてきた100Gbpsの信号を8ラインの12.5Gbpsの電気信号や4ラインの25Gbpsにして、バックプレーンを使い、いろいろな信号処理基板に分配して処理しています。

 多くの信号を一つにまとめ、集中的にやり取りをするには光ケーブルは良いのですが、非常に多くの基板間でデータをやり取りするためには、何千、何万という配線マトリックスを光ケーブルで実現するのは大変で、大きなコストが掛かります。バックプレーンの配線が必要です(図13)。

図13 バックプレーン 図13 バックプレーン(クリックで拡大)

 このため、25Gbps(12.5GHz)の信号を基板で伝達する要求があります。

 ネットワークサーバは処理するデータ量も多く、規模も大きなものとなります。演算の処理速度を最優先にするスーパーコンピュータとは異なりますが、データ処理量、通信速度に特化したスーパーコンピュータなので、性能が重視されます。

 このため、一般サーバやPCで使われるPCI Expressよりも信号伝送の高速化に対して、材料やコストをかけることができます。

 また、汎用規格のPCI Expressよりも配線長さを短くしたり、層厚を厚くしても配線幅を広くするなど、必要な条件をつけることによって信号伝送の高速化を実現することもあります。

 これら25Gbpsや12.5Gbpsの技術や事例の紹介とこれらに対する基板材料やシミュレーションなどに関する発表が数点ありました。

 さらに、『光』伝送に関する発表もありました。

 また、銅配線による高速信号伝送の限界といわれている40GHz信号へのアプローチ発表も、コネクタとかシミュレーションの分野であります。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.