将来のモノづくりを担う人材を力強く支えよう車を愛すコンサルタントの学生フォーミュラレポ2012(3)(2/3 ページ)

» 2013年02月06日 10時00分 公開

京都工芸繊維大学

 さて、京都工芸繊維大学の登場です。このチームのピットを訪れると、「お〜い、みんな! MONOistさんが! 関さんが来てくれたぞ!」と大歓迎を受けました(笑)。第9回の私のレポートも読んでくれていて、「うちのチームにも取材に来てほしいなぁ」と思ってくれていたそうです。本当にありがたいことです。

 さて以降は、同大学のチームリーダーの岡本さん(以下O)にお話をお聞きしました。

京都工芸繊維大学の車両

SS 今回のマシンの特徴はどんな感じ?

O 今回のエンデュランスコースのレイアウトが前回よりもテクニカルなので、脚周りのジオメトリーを変更し、サスペンションユニット(Ohlins Racing製学生フォーミュラ用)のセッティングも詰めました。

SS セッティングはシミューションで決めるの?

O いいえ、走行後のタイヤの状態を目で見て決めます。「きちんと使えているか」「偏摩耗はないか」など。また、ドライバーのインプレッションも重要な情報です。

SS 今回は相当成績が良さそうだね!

O はい。オートクロスは予想がはまってうまくいきました! 前日の天気予報から、路面温度が最適になる時間帯に出走するようにしたんです。テスト走行時よりも良いタイムが出ました!

SS 走行シミュレーション的なことはしないの?

O はい。過去の経験やデータを重視しています。頭の中のコンピュータシミュレーションですね(笑)

SS リアブレーキに冷却ファンが付いているのは珍しいなぁ。

O センターのシングルブレーキなので、エンデュランスではどうしてもフェードしてきて、ペダルの踏み代が変化してしまうので、その対策です。

YY 細かい部品の作り込みがすごいね。これは5軸加工だなぁ……。

O 溶接ですと精度が出ないし、平面部品ですと自由度が小さくなります。スポンサー企業さんにお願いして作ってもらっています。本当に助かっています。

SS この真っ赤なエアチャンバー、武骨な形をしているねぇ。

真っ赤なエアチャンバー

O 実は3次元プリンタで作り、強度UPのために樹脂で覆ったんです。内部は結構精密なんですよ。

SS 3次元プリンタはどんなタイプを使ったの?

O ABS樹脂を溶融して積層するタイプです。

SS おお、最近主流になりつつあるよね。エンジンは何を使っているのかな?

 ――ここでエンジン担当の学生さん(以下E)登場

E スズキLTR450です。ミッションもそのまま流用ですが、エンジン内外部にショットピーニング加工を行っています。

SS 外にショットピーニングするのは冷却に効果があるだろうけど、内部とは?

E 出力UPに寄与すると思ってやっていますが、エンジンは分解して組み立てる度に微妙に性能・特性が変わりますので、どれくらい寄与したのかは分かってないです。

O ステアリングはバルサ材で芯(しん)を作って、カーボンクロスを貼り付けています。(笑いながら)人間工学に基づいた設計です。

車両のフロント

SS シートが2つ置いてあるけど?

2種類のシート

O 2人のドライバーの体格が違うので、それぞれに合わせています。人間工学的な考えに基づいています(笑)

SS シートの色も青と黄色で識別できるようにしてあっていいねぇ。で、なぜ黄色なの?

O はい、ファーストドライバーのラッキーカラーが黄色なんです。彼のウェアにも黄色が入っていますでしょう?

SS このチームは他チームとは少し雰囲気が違うなぁ。シミュレーションよりも感覚重視、ラッキーカラーを取り入れる。デジタルとアナログが融合したチームかな。必ず記事書くから楽しみにしていてね!

O ありがとうございます!

 ――京都工芸繊維大学は「CATIA V5」を使っています(ちなみに今大会2位〜10位のチームは「SolidWorks」)。設計にハイエンドCADを使いながらセッティングはアナログ重視、実に興味深いです。

 そして成績は、コスト2位、プレゼンテーション11位、デザイン8位(以上静的審査)、アクセラレーション16位、スキッドパッド2位、オートクロス1位、エンデュランス1位、燃費1位とアクセラレーションを除く動的審査で圧倒的な強さを見せつけました。特にオートクロスでは「58秒07」と唯一1分を切り、2位の大阪大学に9秒もの大差を付けての“ブッチギリ”でした。そして京都工芸繊維大学は、2007年の初参戦から6年目にして、とうとう初優勝! おめでとうございます!

編集部より

京都工芸繊維大学チームについては、後日公開する山本照久さん執筆の記事

で詳しく紹介します。



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