ワイヤレス充電で世界最先端を走るWiTricity、その実像に迫る和田憲一郎の電動化新時代!(1)(2/3 ページ)

» 2013年05月17日 09時00分 公開

ワイヤレス充電の導入は医療機器とEVから

 電気といえば、1882年9月4日、エジソンによる「エジソン電気照明会社」が電力を供給開始して以来、130年余りが過ぎた。その供給方式は、当初は直流であったが、1893年のシカゴ博覧会からは交流が導入されている。それ以降、電力供給は、交流電力を電線を使って直接接続するという方式から基本的に変わっていない。

 そして、交流電力の直接接続という呪縛から初めて逃れるのが、このワイヤレス充電(磁界共鳴方式)になるのかもしれない。通信が無線で行えるようになっても、相変わらず残っていたのが、直接接続による電力供給なのである。なお、WiTricityの会議室の壁には、エジソンではなく、電磁気学を確立したマクスウェルの肖像画が飾ってあったのが印象的だった。

WiTricityがワイヤレス充電の適用を想定している分野 WiTricityがワイヤレス充電の適用を想定している分野

 さて、WiTricityのバイスプレジデントを務めるDavid Schatz氏によれば、同社がワイヤレス充電を適用しようと考えている分野は多岐に渡るようだ。家電、住宅、工業用ロボット、工具、軍事用機器などがあるが、現時点で採用に向けて最も有力視されているのが医療機器とEV(プラグインハイブリッド車を含む)のようだ。

 医療機器の中でも、例えば体内に埋め込む補助人工心臓の場合、体外のバッテリーから電力を供給するのに皮膚を貫通するチューブやケーブルが必須となる。ワイヤレス充電で電力を供給できれば、チューブやケーブルが不要になり、患者にとっての自由度も大きく増す。これは患者、医療関係者、そして医療機器メーカーにとっても格段の進歩となる。既に発表済みであるが、WiTricityは米国の医療機器メーカーであるThoratecと提携して基礎試験を行っているようだ。

 一方、EVのワイヤレス充電については、多くの自動車メーカーはまだ原理試験の域を出ていない。磁界共鳴方式と車両とのマッチングに時間を要するからであろう。しかし、なぜEVにワイヤレス充電が必要なのだろうか。EVはまだ黎明(れいめい)期にあり、車両価格が高い、満充電からの走行距離が少ない、充電インフラが不足しているという課題がある。充電インフラは、急速充電器、普通充電器ともに普及が進んでいるものの、まだその使用場所は限定されている。

 このため、EVを初期のアーリーアダプター層に購入してもらう場合であればいざしらず、ボリュームのあるアーリーマジョリティ層まで広げるには、より良い使い勝手が求められる。充電については、充電方式の多様化や、充電時に手が汚れないといった操作性、夜間や雨天時にも安全かつ安心に充電できることなどが求められる。充電の使い勝手を高める上で最も効果的なのが、充電するという意識からの解放であり、そのためにワイヤレス充電は大きな助けになる。

「第42回東京モーターショー2011」における三菱自動車のワイヤレス充電に関する展示 「第42回東京モーターショー2011」における三菱自動車のワイヤレス充電に関する展示

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