「ASIMO」の技術を応用した「高所調査用ロボット」が原子炉建屋内で初仕事そのとき「PackBot」は見ていた!

ホンダと産業技術総合研究所(産総研)が東京電力 福島第一原子力発電所向けに共同開発した「高所調査用ロボット」が2013年6月18日、当初の予定通り、2号機 原子炉建屋内1階の上部空間の調査を実施。東京電力が調査結果に関する資料を公開した。

» 2013年06月20日 12時47分 公開
[八木沢篤,MONOist]
高所調査用ロボット

 ホンダと産業技術総合研究所(産総研)が東京電力 福島第一原子力発電所向けに共同開発した「高所調査用ロボット」(関連記事1)が2013年6月18日、当初の予定通り稼働し、2号機 原子炉建屋内1階の上部空間の調査を実施した。東京電力が翌6月19日に、調査結果に関する資料を公開している。

 今回のミッションは、原子炉建屋内の除染作業およびPCV(原子炉格納容器)調査を最初に実施する計画である2号機(比較的線量も低い)を対象とし、高所調査用ロボットの進入が可能な原子炉建屋内1階の西側通路と南西エリアを調査範囲とした。上部にある機器などの除染・遮蔽は、空間線量を低減できる効果があるため、事前に上部空間の線量や干渉物を把握しておくことで、効率的な作業計画を立てることができるという。

調査項目について 調査項目について。今回の調査は図の【STEP1】に該当する(※出典:東京電力)【画像クリックで拡大表示】
高所調査用ロボット ホンダと産業技術総合研究所が開発した「高所調査用ロボット」(※出典:東京電力)

 今回の調査結果を踏まえ、高所PCV貫通部周辺の調査(STEP2)の実施可否、調査エリアの拡大や他号機への展開を検討。今後の原子炉建屋内の線量低減対策、PCV調査・補修などの作業計画の策定に役立てるとしている。

 高所調査用ロボットは、ホンダが同社のヒューマノイドロボット「ASIMO」の技術を応用して開発した「調査用アームロボット」と、産総研が開発した「クローラー式高所作業台車」で構成される。クローラー式高所作業台車のマスト部を伸ばすと最長7mまで到達できる。調査用アームロボットのアーム部は11自由度(関節)を持ち、全長1.7m。最高速度が2km/hで、400mの光ファイバーを用いた有線LANおよび無線LANによる遠隔操作が可能だ。調査用の機能として、「静止画記録」「線量率測定」「温室度測定」「3Dデータ取得(レーザレンジファインダーによる3D形状計測)」などが搭載されている。

 今回の調査で投入されたのは、高所調査用ロボット1台と、米iRobotの軍事用ロボット「PackBot(パックボット)」(関連記事2関連記事3)1台である。さらに、通信途絶時の復旧用救援機として、千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)の「Quince2」(関連記事4関連記事5)もスタンバイしていた。人員体制として、調査現場(ロボットの準備・片付け・運搬)に東京電力社員4人と協力会社社員3人が、免震重要棟(遠隔操作)に東京電力社員5人と協力会社社員2人がそれぞれ配置された。

 6月18日12時00分に2号機 原子炉建屋内1階にロボットを投入し、遠隔操作による調査を開始。西側通路および南西エリアの上部壁面の状況調査が行われ、6箇所での雰囲気線量率の測定、5箇所(西側通路天井2箇所、上部壁面3箇所)での干渉物の有無を確認した。上部壁面の状況調査においては、最長で床上4.3mの高所の状況を確認できた。

「PackBot」からの映像 東京電力 福島第一原子力発電所 2号機 原子炉建屋内1階の上部空間の調査を行う「高所調査用ロボット」の様子。画像は米iRobotの軍事用ロボット「PackBot」からの映像をキャプチャーしたものである(※出典:東京電力)

 同日16時14分に調査終了。東京電力は「上部の線量が高いことを確認できたが、下部に対して顕著な差異はみられず。上部空間の狭隘(きょうあい)な状況を確認。機器類の損傷は特に確認できなかった」と調査結果をまとめている。なお、調査範囲の周辺温度は23.6度、湿度は78%(高さ2.5mで測定)。調査終了後のロボットの被ばく線量は、高所調査用ロボットが38.5mSv、PackBotが41.0mSv。ロボットの準備・片付け・運搬などにより、2.0mSvの被ばくを計画していた現場作業人員の被ばく線量は最大0.98mSvであった。

調査結果(雰囲気線量率) 調査結果(雰囲気線量率)(※出典:東京電力)【画像クリックで拡大表示】
西側通路天井上部壁面 干渉物の有無の確認。(左)西側通路天井/(右)上部壁面(※出典:東京電力)【画像クリックで拡大表示】

ロボット開発の最前線

ロボット/ロボット開発コーナー
あらゆる技術の集大成といわれる「ロボット」をテーマに、産業、レスキュー、生活支援/介護分野などにおけるロボット開発の実情や、関連する要素技術、研究開発、ロボットコンテスト、ロボットビジネスの最新動向などをお届けする。

>>ロボット特集のTOPページはこちら



防災・災害対策技術

防災・災害対策技術
3.11 東日本大震災の発生以降、防災・災害対策に関連する技術に、ますます注目が集まっています。自然災害、原発対応、被災地支援といった各分野における最新技術や取り組みを紹介します。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.