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» 2013年06月21日 11時45分 公開

和田憲一郎の電動化新時代!(4):テスラは「モデルS」をどのように開発したのか、EV開発の核心に迫る (2/3)

[和田憲一郎(エレクトリフィケーション コンサルティング),MONOist]

苦心した静音化設計

和田氏 遮音がロードスターに比べて格段に良くなったように思うが、何か対策をしたのか。

ケルティ氏 (にっこり笑って)実はこれが大変だった。EVだから静かだとう思うかもしれないが、実際に作ってみると車両の各所でいろいろな異音が発生していた。このため、1年前に、イーロン(テスラCEOのイーロン・マスク氏)の指示により、これらの異音を減らすことだけを目的とした特別チームを結成した。毎週、チームのトップであるイーロンに成果を報告するとともに、同じ報告が各部署にも伝えられたので、開発/製造含めて異音を減らすことを重要視した。異音は設計段階で決まるものと、部品で発生するものがあるが、特別チームはつぶさに観察し、個々に低減することに努めた。

「モデルS」のカットモデル 「モデルS」のカットモデル(クリックで拡大) 出典:Tesla Motors

和田氏 ロードスターは生産台数が限定されていたため、法規的には少量生産車種の適用除外(Exemption)で対応できることも多かったと思われる。しかし、本格的な量産車であるモデルSは、衝突要件などの法規対応をどのようにしてクリアしたのか。またCAEは活用したのか。

ケルティ氏 確かに、ロードスターの場合は少量生産ということもあり、適用除外などのルールを活用しながら対応してきた。これに対して、モデルSではいろいろな工夫を取り入れて法規対応を進めた。例えば、初期段階でP/T系のみの小型のプロトタイプを作り、それとモデリング(CAE含む)との比較をしながら開発を進めた。今回はこれらのシミュレーションに多くの時間と開発費用を費やした。イーロンの持論とも言えるが、重要と思われることは社内で行うべきであり、いたずらにアウトソーシングしてはいけない。決して全てを自分たちでやるとは言わないが、われわれが望む部品や開発手法がなければ、自分たちで作るというのがわれわれの基本的な考えである。

和田氏 量産車投入に際し、トヨタ自動車やDaimlerの技術陣から支援はあったのか。

ケルティ氏 「RAV4 EV」の開発はトヨタ自動車と一緒に行っているし、Daimlerとも他のプロジェクトで協力している。しかし、このモデルSについては、両社からの物理的なサポートはない。

和田氏 CHAdeMO(チャデモ)方式の急速充電器が、2013年度内に北米で1000箇所、欧州で1000箇所と普及が拡大する。モデルSの充電インフラとして、日本市場のみチャデモ方式を採用するのはなぜか。全世界で適用しないのか。

ケルティ氏 チャデモ方式は、日本に加え、先日ノルウェーでも採用する方針を発表した。その理由は、ノルウェーでも圧倒的にチャデモ方式が普及しているからである。ただし米国では、チャデモ方式を採用する予定は今のところない。テスラは、充電インフラとして、米国の西海岸から東海岸まで連結する「スーパーチャージャー」ネットワークを構築する計画を進めている。スーパーチャージャーの充電出力は120kWで、同50kWのチャデモ方式よりも2倍以上早く充電できる。また、モデルSそのものも、電池容量が85kWhの場合に約500km走れるので、それほど多くの充電ステーションを必要としていない。

和田氏 テスラでは、18650型(直径18×長さ65mm)のリチウムイオン電池セルを使用しているが、ロードスターとモデルSでは、電池特性やエネルギー密度は異なるのか。

ケルティ氏 ロードスターでは主にSanyo(三洋電機)製を採用してきたが、モデルSでは電池容量が60kWhと85kWh、両方の仕様でパナソニック製を採用している(編注:パナソニックが三洋電機を買収したことによってパナソニック製になったのではなく、パナソニックが三洋電機を買収する前から独自に開発していた電池セルを採用した)。従来のSanyo製に比べてエネルギー密度が20%以上向上した。

「モデルS」の主要コンポーネントのレイアウト 「モデルS」の主要コンポーネントのレイアウト(クリックで拡大) 出典:Tesla Motors

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