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» 2013年06月25日 10時00分 公開

月に向かって「苗木」を撃ち込め!――NHK大学ロボコン2013決勝は近年まれに見る名勝負に(3/3 ページ)

[大塚実,MONOist]
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しかし、決勝戦ではまさかの展開に!?

 ところが、予選最高タイムを記録したのは、東大ではなく、金沢工業大学(以下、金沢工大)「飛翔」チーム。1試合目は1分16秒だったが、2試合目で39秒という好タイムを記録、何とあの東大を上回った。

 ただし、一発のスピードはあっても、金沢工大チームは信頼性が課題。何とか全試合でGPは達成しているものの、特に、自動ロボが木の葉を取り損ねるミスが目立ち、決勝トーナメントでは、準々決勝が2分11秒、準決勝が1分47秒と、ハラハラドキドキの展開。2試合連続の逆転勝ちで、辛うじて決勝に進出した。

 だが、これがロボコンの面白いところだ。決勝トーナメントであれだけ不調だったにもかかわらず、決勝戦ではまさかのノーミス。ここで37秒というベストタイムをたたき出し、東大の3連覇を阻止、見事優勝を果たした。


動画2 決勝戦 金沢工業大学() vs. 東京大学(

 特筆すべきは、東大もベストタイムで来ていたこと。東大チームが放った苗木が月に届いたのは、金沢工大のわずか2秒後。試合後に2本の苗木が月に乗っているという、劇的な幕切れとなった。ミスのせいではなく、お互いのベストタイムでの勝負。まさに決勝戦にふさわしい試合で、ここは両チームを称賛すべきだろう。

 ところで、金沢工大の勝因はどこにあったのか。それを確認するために、両チームの各工程における所要時間を比較してみた。手で計測しているので、コンマ数秒程度の誤差はあると考えてほしいが、かなり明確な差が出た。

決勝戦タイム比較 表1 決勝戦タイム比較

 表1では、GP達成までを6つのステップに分けた。斜めに突っ込む木の葉の収集方法や、自動ロボの走行ルートなど、基本的な戦略は東大と似ているが、その1つ1つが早い。

 ここで筆者が注目したのは、表1の3つ目のステップにおける手動ロボから自動ロボへの木の葉の受け渡しだ。東大は1個ずつ置く方法だったので、決して遅くはないものの、時間をロスしている印象。一方、金沢工大は、最初に手前の2個を置き、向こうの1個はロボットアームが展開して置くので、非常に素早い。東大は他の工程をこなすテンポが速いだけに、ちょっともったいなかった。

金沢工業大学は3個の「木の葉」をほぼ同時に置けるので、非常に早い 金沢工業大学は3個の「木の葉」をほぼ同時に置けるので、非常に早い

 ちなみに金沢工大の手動ロボは、東大とは違って、レーザーによる測距は行っていないという。苗木の射出時、左右の方向を合わせるために、ガイドとなるレーザーは出しているが、手動ロボの発射位置や射出角度は、操縦者が調整している。それでも大会中、6発中5発が命中しているのだから、かなりの練習を積んだのではないだろうか。

最もたくさん苗木を飛ばしたチームは?

 今回のNHK大学ロボコンでGPを達成できたのは、東大と金沢工大の他、名古屋工業大学、長岡技術科学大学、電気通信大学(以下、電通大)の計5チーム。

動画3 名古屋工業大学のGP達成(予選)

動画4 長岡技術科学大学のGP達成(予選)

動画5 電気通信大学のGP達成(予選)

 会場を沸かせたのは電通大だ。このチーム、特筆するようなスピードはないものの、しかしミスが少なく安定しており、確実に最後の苗木を放出するところまでたどり着くことができていた。

 ところが、だ。このチームの手動ロボ、とにかく苗木が当たらない。予選1試合目は時間中に3発全部外してしまい、することがなくなるという珍事に。2試合目も3回飛ばし、最後の1発がようやく命中。残り時間あと1秒のところで初めてGPを達成した。

 結局、今大会では8発も飛ばして(うち1回は時間切れ後)、命中は1発のみ。苗木を飛ばした回数がダントツに多かったということで、表彰式ではデザイン賞を受賞していた。

電気通信大学の予選1試合目 電気通信大学の予選1試合目。3発目の「苗木」も外してしまった……

今年のABUロボコンはベトナム・ダナン

 前回、金沢工大は東大に決勝戦で敗れており、今回雪辱を果たした形。ちなみに、これまでNHK大学ロボコンで3連覇を達成したチームは1校もないのだが、2010年、3連覇に挑戦した豊橋技術科学大学を決勝戦で下したのも、やはり金沢工大だった。同チームは、2回連続で3連覇を阻止したことになるわけだ。

優勝した金沢工業大学チーム 優勝した金沢工業大学チーム

 一方、敗れた東大チームは悔しいだろうが、金沢工大に対しては「日本の代表として世界で戦い、勝ってきてほしい」とエールを送る。

 優勝した金沢工大チームは、2013年8月18日にベトナム・ダナンで開催されるABUロボコンへ出場する。ABUロボコンでは現在、中国が過去6年で5回優勝と、圧倒的な強さを誇る。ベトナムは2006年以来優勝がないが、過去3回の優勝経験があり、今回は開催国ということで、優勝を狙ってくるだろう。前回、東大が負けたのもベトナムのチームだった。

 強豪ぞろいのABUロボコンでは、全試合でベストタイムを出すくらいでないと、優勝は難しい。金沢工大チームは、まずは信頼性を向上させ、その上でタイムの短縮も狙ってほしい。2005年の東大以来、日本チームとしては2回目となる優勝を期待したいところだ。

 なお、NHK大学ロボコンの模様は、2013年7月15日(月・祝)午前11時から、NHK総合テレビで放送される予定。


筆者紹介

大塚 実(おおつか みのる)

PC・ロボット・宇宙開発などを得意分野とするテクニカルライター。電力会社系システムエンジニアの後、編集者を経てフリーに。最近の主な仕事は「人工衛星の“なぜ”を科学する」(アーク出版)、「小惑星探査機「はやぶさ」の超技術」(講談社ブルーバックス)、「宇宙を開く 産業を拓く 日本の宇宙産業Vol.1」「宇宙をつかう くらしが変わる 日本の宇宙産業Vol.2」(日経BPマーケティング)など。宇宙作家クラブに所属。

Twitterアカウントは@ots_min



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