さらばディストリビューター、点火タイミングは電子制御で最適化する時代にいまさら聞けない 電装部品入門(8)(2/3 ページ)

» 2013年06月25日 11時00分 公開

ディストリビューターのデメリット

 ここまで説明してきたものは、かなり以前の点火装置であり、以下のようなさまざまなデメリットを抱えていました。

  • ディストリビューター駆動に伴う動力損失
  • ディストリビューター内部、ハイテンションコードでの電力損失
  • 点火タイミングを細かく変化、制御できない
  • ディストリビューター各接点の摩耗に伴う、定期的な点検調整

 特に、点火タイミングの最適制御は、完全燃焼による有害ガスの排出削減に欠かすことができません。年々厳しくなる排気ガス規制をクリアするためには機械的な制御だけでは越えられない壁があります。

 さらに、常に向上が求められる燃費は、燃焼圧力によって発生したクランクシャフトの動力を、いかに損失なく前進する力に変えられるかに直結しています。つまり、ディストリビューターの駆動に伴う動力損失を排除できれば、それだけ燃費を向上できるということになります。

 また、構造上避けることができない電力損失の部分においても、必要以上に高電圧を発生させる必要がありますので、コスト面や耐久性においてマイナスとなります。

 これらを踏まえますと、ディストリビューターを用いずに最適なタイミングで点火を行うことが非常に理想的であることが分かります。

 そこで、まずは構造上の進化として、接点式の点火方式における電力損失や接点摩耗に対応するため、ディストリビューター内にイグナイタを設置し、一次電流の遮断にトランジスタを用いたトランジスタ式点火装置が普及しました。

 しかし、これではまだ動力損失や点火タイミングの最適制御の問題を解決できていません。さまざまな創意工夫が行われていた中、時代の流れによってマイクロコンピュータ(マイコン)による精密な電子制御が自動車業界にもどんどん取り入れられていきます。

 その流れは、最終的にディストリビューターを用いない、現在の主流である電子制御式点火装置という形態にたどり着くことになります。

 電子制御の仕組みは、各社それぞれ異なっていますが、基本的な考え方は同じです。

 まず大前提として必要となる情報は、現在のピストン位置です。ピストンの位置を把握するために、ディストリビューターはカムシャフトと連結していましたが、カムシャフトに電磁誘導作用を利用したピックアップコイルもしくはフォトダイオードを利用したTDC(Top Dead Center:上死点)センサーを設置し、ECU(電子制御ユニット)へ現在のピストン位置を伝えます。

TDCセンサー(左)とクランク角センサー(クリックで拡大)

 カムシャフトだけではなく、クランクシャフトに設置したクランク角センサーの情報を使う場合もありますが、双方のセンサーの使い方は各社で異なります。いずれにしても、カムシャフトもしくはクランクシャフトのセンサーで、現在のピストン位置を正確にECUに伝えています。

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