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» 2013年07月04日 12時00分 公開

ETWest2013 基調講演:中小企業の技術を集めて取り組む「コックピット内蔵型巨大ヒューマノイドロボットの開発」 (2/3)

[三月兎,MONOist]

搭乗型巨大ロボットに搭載された町工場の技術

 NKKとの出会いがあって、ロボットは2007年に1m、2009年に2mとサイズを大きくしながら順調に開発を続けてきた。

 しかし、4mロボットを製作するに当たってはいくつものハードルがあったそうだ。何しろ前例がないものを造るので、どこにもノウハウがない。部品もない。単純に大型するわけにもいかない。大きいから製作費も掛かる、しかし費用はない。

 そうした“ないない尽くし”の状況を、「世界初だからやりがいがあります。部品が売ってなければ自分たちで作ればいい。買うと高価な材料も、工場の隅で在庫になっているものを使えば、タダです。シミュレーションと試験をしっかりやれば、コストは抑えられます」(坂本氏)と、メンバーが知恵と技術と手持ちの材料を持ち寄ってクリアしてきた。

 中でもシミュレーションには、かなりの時間を割いたという。3次元CADを使って干渉をチェックし、重量と重心位置を計算。何十回と図面を引き直して、最適な形状を探ったそうだ。

 その結果、4mロボットの股関節部分は、板厚2mmのアルミ板金を面接着の箱型構造で造ることになった。板厚2mmというのは、坂本氏が初期に製作していた40cmサイズロボットのフレームと同じ厚さである。巨大ロボットの一番力がかかる部品も2mmというのは、話しだけ聞くと「薄すぎるのでは?」と思うくらいだ。

photo 股関節部分のフレーム。軽量化のため2mm厚のアルミを使用。箱型構造と面接着で強度を確保した

 もちろんシミュレーションだけではなく、試験機を自作して加重試験を行っている。こうした試験機から自作できてしまうのが、町工場と組んで開発をしている強みだろう。

photo 吉則工業(大阪市西淀川区)で試験機を開発し、300kgの加重を掛けて耐久試験を行った

 シミュレーションでは分からないところは、モックアップを作ることもある。現在、4mロボットの上半身を開発中だが、コックピットのサイズを決めるためにダンボールでモックアップを作り、中に入って大きさを検討したそうだ。

photo コックピットのサイズを決定するためにモックアップを作って実際に入って確認。コスト削減のためにダンボール製だ

 ロボットの操縦は、モーターに角度指令を与えるコントローラーで行う。二足歩行ロボットは全身で20個前後のモーターを持っている。それぞれがジャイロセンサーや加速度センサーと同期しながら協調して動くようになっているそうだ。プログラムは主にC言語で書いているという。

photo 自律制御の部分はPCに接続されている。マイコンボードは5×4cmくらいのサイズ

 ちなみに4mロボットは、歩行はジョイスティックで行い、上半身のモーションはマスタースレーブで行う予定だという。ROBO-ONEに出場するロボットは、ロボットのモーションをシーケンス制御していたが、それでは臨機応変に動くことができないため自由に動けるようなシステムを検討しているそうだ。

 マスタースレーブの操縦は2mロボットで既に実装している。操縦者が送信機となるロボットと同形の小型機を操ると、Bluetoothでマスターからロボットへ毎秒50回の頻度で関節角度を送っているそうだ。同様の仕組みを4mロボットのコックピットにも搭載する予定だという。

 歩行は、あらかじめ計算した歩行を再現するようにしておき、ジョイスティックを倒した方向へ移動するインタフェースを検討しているそうだ。

 コックピットは運転席正面にモニターを付けて、ロボットの頭に搭載したカメラから送られてきた映像を見ながら運転するという。「ガンダムの世界観を再現したいので、直接外を見るのではなくわざわざコックピットに閉じこもることを考えています。その方が、夢があるかなと思って(笑)」(坂本氏)

photo 最新の完成イメージ。坂本さんが設計した図面にデザイナーが外装を載せた。青いフレーム部分が上に開いて、搭乗口となる。デザインは、ブリューナク(大阪市福島区)が担当
photo 関節アクチュエータユニットは、ブラシレスDCモーターとハーモニックドライブを組み合わせて作っている

 モーター基板もオリジナルで製作している。東芝製のベクトルエンジン搭載マイコンを用いており、これにはベクトル制御エンジンがコアCPUの中に入っているので、レジスタの設定だけでベクトル制御ができるという。また、モーターにエンコーダをつけて差分で速度フィードバックを行っている。

photo モーター基板もオリジナルで製作。東芝製のベクトルエンジン搭載マイコンを用いている

 人型ロボットの場合、歩行時に地面と足裏が接触するときに、関節が固すぎると足裏が跳ねて反動で倒れることがある。足首をやわらかめのトルクになるように調整するため、コンプレアイアンス制御も入れているそうだ。

 モーターは、産業用ACサーボモーターを使用している。2mロボットのときには50ワット、4mロボットでは20倍の1キロワットにアップした。身長が2倍になれば、体積と重量は8倍。関節を可動させるためのトルクは16倍以上必要になる。4mロボットは搭乗型なので、パワーを重視したそうだ。

photo 脚に搭載しているアクチュエータ。1キロワットの産業用ACサーボモータを使用している
photo 足首と股につけている3軸ユニットは、重量が30kg位あるという
photo 薄板の加工は、ニシザキ(大阪市西淀川区)がレーザー加工で対応
photo コックピットの内部構造は、強度が必要なため、中空の鉄パイプを溶接している。アラキ(大阪市浪速区)が担当。
photo 足裏は樹脂でクッションを作製。木枠に樹脂を流し込んで厚板を作り、突起を削りだしている。突起を後付すると強度が出ないため、何日も時間をかけて削ったという
photo 個々が作った部品を組み立てる。重量があるため、組み立てには人手が必要だ

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