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» 2013年07月10日 10時00分 公開

現実世界をプログラミング可能に:キミは知っているか? 魔法の世界を創り出すディズニー・リサーチを (3/3)

[宮田健(dpost.jp),MONOist]
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「Touché」で世界全体をインタラクティブに!!

 そして、プピレフ氏は、さらに一歩進めて「世界全体をインタラクティブにしたい」と語る。その理由は、バーチャル空間やコンピュータが生成した環境は、高い応答性やインタラクティブな操作が可能だからだ。そのために、ディズニー・リサーチはRevelなどを開発しているのである。

 では、現実世界でインタラクティブ性を実現するにはどうしたらいいだろうか。そのための研究が、センシング技術「Touché」(「トゥシェ」と発音する)だ(動画4)。



 基本的な動作原理のポイントは、「交流信号は常に信号の周波数に基づいた、最もインピーダンスの低い経路をとる」という特性にある。例えば、ある物体を、指1本で触れている状態、手のひらを押し当てている状態、2本の指でつまんでいる状態とでは、人の体に流れる電流の通り道が変化し、それぞれ異なる周波数パターンを持つ。Touchéは、この異なる周波数パターンを、あらかじめマシンラーニングシステムで学習しておくことで、ただ1つのセンサーでどのように触れているかを把握できるシステムだ。これを応用すると、ドアノブを握っているのか、単に触れているだけなのかを判別することができる。

つかむ、つまむ、指で触るなどのプロファイルを学習するドアノブにタッチしたときの信号を認識 (左)画像13 つかむ、つまむ、指で触るなどのプロファイルを学習する/(右)画像14 ドアノブにタッチしたときの信号を認識 【※画像クリックで拡大表示】

 このセンサーの応用範囲は広い。例えば、シリアルを入れた食器にセンサーを付けることで、手や箸を使って食べたときにはブザーが鳴り、スプーンを使ったときにだけ正解音が鳴るという食べ方トレーニングなどが考えられる。また、センサーを鉢植えに入れるだけで、植物に触れると音が鳴るといったようなインタラクティブ性を簡単に付加することができる。このインスタレーションは、2012年に米国で開催されたコンピュータグラフィックス関連イベント「SIGGRAPH」でも発表されている。



 この技術を使って植物の大きな葉をドラム代わりにして演奏するデモを、ディズニーのテーマパークでテスト公開するなど、エンターテインメントにおける応用も既に行われている。Touchéを使うと、植物そのものが魅力的なアトラクションになるのだ。

現実世界は仮想世界のようになっていく

 プピレフ氏は最後に、仮想現実感と現実世界との関係についてまとめ、「現実世界は仮想世界のようになっていくだろう」と述べる。新しいセンシング技術を発明することにより、世界全体をインタラクティブにすることができる。しかも、ディズニー・リサーチは、それを活用する場として、世界最大規模のテーマパークを持っている。

 『2001年宇宙の旅』で知られる英国出身のSF作家アーサー・C・クラーク(Arthur Charles Clarke)氏は『十分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない』と述べたという。ここで紹介した幾つかの技術は、モノづくりの世界において“高度なもの”として映るだろうが、仕組みは至ってシンプルだ。

 ディズニー・リサーチには、世界全体をプログラミングできるようにするという目標と、ディズニーが目指すエンターテインメントが同居し、“実現できる魔法”を作っているように見える。モノづくりという道は、堅実が故に、一見すると夢や魔法とはほど遠く感じるかもしれない。しかし、モノづくりこそ、仮想現実と融合し、夢と魔法を現実世界に作り出せるエリアなのかもしれない――。今回の講演でそう感じた。

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