13の力を1つの大きな力に――総合力発揮のために旭化成が選んだERPシステム統合製造ITニュース(1/2 ページ)

「1つの旭化成」を実現するために13あったERPを1つに統合することを選んだ――。SAPジャパンのユーザーイベント「SAP Forum Tokyo」では、旭化成が現在進行中のERPの統合プロジェクトについて紹介した。

» 2013年07月10日 16時30分 公開
[三島一孝,MONOist]

 SAPジャパンは2013年7月10日、パートナー企業やユーザー企業などを招きSAPの戦略やユーザー事例などを紹介する「SAP Forum」を東京都内で開催。その基調講演として旭化成の取締役兼常務執行役員の小林宏史氏が現在進行中のERP統合プロジェクトの経緯や背景などについて紹介した。

 SAPジャパンでは、毎年夏にSAP Forumを東京、大阪、名古屋の3会場で開催。昨年は3会場合計で約2000人の来場者があったが、今年は「東京だけでも2000人以上の登録者がいるなど、熱気は増している」とSAPジャパン代表取締役社長の安斎富太郎氏は話す。その中で今回は「Experience the Future of Business」をテーマと掲げ、新たなビジネス価値の再発見に向け、構想力と実行力の重要さを訴えた。




SAPジャパン代表取締役社長の安斎富太郎氏 SAPジャパン代表取締役社長の安斎富太郎氏

 安斎氏は「鍵となる成功要因として、新興市場が成長する中限られたリソースをどこに配分するか、データ量が膨大化する中データをどう活用するか、モバイルデバイスが爆発的に普及する中リアルタイムビジネスをどう実現するか、の3つがある」と話し、SAPの技術でこれらに貢献していくことを訴えた(関連記事:ビッグデータとの親和性高めたSAP HANA最新版、製造業ならどう使う?)。また「変化への俊敏な対応力」などもキーワードとして示された。

「技術への粘り」がDNA

 基調講演に立った旭化成 取締役兼常務執行役員の小林宏史氏は、まさにこの「変化への対応力」を得るために、事業会社ごとに構築していた基幹システムを1つに統合するプロジェクトを進めているとし、システムが分散化してきた今までの経緯や背景、統合の目的などについて説明した。

旭化成 取締役兼常務執行役員の小林宏史氏 旭化成 取締役兼常務執行役員の小林宏史氏

 旭化成は現在「ケミカル・繊維」「エレクトロニクス」「住宅・建材」「ヘルスケア」の4つの大きな事業カテゴリーを保有し、それぞれに2〜3社の事業会社を抱えている。同社はもともとはアンモニア合成などによる化学肥料や再生繊維などから創業したが、90年近い歴史の中で事業の多角化や主力事業の移行などを進めながら、成長を続けてきた。

 小林氏は「飛び地のように全く新しいところに挑戦し、その周辺を固めていくことで事業に育てていくという経営を得意にして多角化を進めてきた」と話す。また一方で旭化成のDNAとして「技術への粘り」があるとし、その例としてスーツの裏地などに使うキュプラ繊維「ベンベルグ」の例を紹介した。

 「ベンベルグは、1980年代には大きなビジネスとなっていたが、その後徐々に縮小傾向にあった。しかし化粧品用途のフェイスマスクやインドのサリー用などに転用を図ったことで需要が拡大。国内の衣料系工場への設備投資については、最近は業界全体でもほとんどない状況だったが、宮崎県延岡の工場に30億円を再投資し設備の増設を行った」と小林氏は話す。

事業カテゴリー売上高概要 旭化成グループの事業概要(左)と売上高構成比(右)

自主自立の事業会社

 このような形で事業の多角化を進めてきたため、同社ではBtoBの設備産業からBtoCまで求められるビジネス要件の幅が拡大。そのため同社では2003年にはグループ持ち株会社制に移行。その傘下に事業会社を設立し、自主自立を基本方針としてそれぞれ運営を行ってきた。事業会社は、最も大きな構成比率を占めるのが41.1%を持つケミカル事業で、次が29.2%の住宅事業、以下8.0%の医療・医薬事業、7.9%のエレクトロニクス事業などが続く。

 それぞれの事業分野がバラバラであるため、基幹システムもそれぞれが導入する形となっていた。「個々の事業強化には良かったが、それぞれが部分最適となっており、グループ全体で見た場合重複が多く、無駄な要素もたくさんあった」(小林氏)。これらの流れが、リーマンショック後の不況やグローバル化、などの環境変化により徐々に変わってきた。

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