バリ取って、リベット締めて、金型で曲げて――板金スカイツリー作ろ!親子でモノづくり体験(3/3 ページ)

» 2013年08月12日 00時00分 公開
[小林由美,MONOist]
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出荷検査

 最後にプレス金型工場内の部屋に戻ると、出荷検査が待っている。石川氏による目視チェックで、間違いのない製品ができているかチェックする。

 「本物とそっくりか」も大事な項目なので、窓から見えるスカイツリーと見比べて外観をチェックする。

石川チェック「これはいいメタルツリーですね」

 指定の項目を満たしていれば、名札の裏の作業指示書に合格印を押してくれる。今回は、無事全員合格だった。

「合格です!」

記念撮影

 最後は、プレス金型工場の屋上へ行き、自分で作ったメタルツリーと、向こうに小さく見える本物のスカイツリーと一緒に記念撮影。お疲れさまでした!

記念撮影

 「今、モノづくりの新しいムーブメントが起きています。生まれたてのブームが本物に変わるには、このようなモノづくりの体験で得る感覚が役に立つのではと思っています。もちろん、まずは『モノづくりが楽しい』と思ってもらうのが基本で、堅苦しくならないように気を配っています」(石川氏)。

ワークショップへ込めた思い

 このワークショップは、「子どもを工場に招き入れて、職業体験・工作体験のようなイベントを行いたい」という浜野製作所の代表取締役 浜野慶一氏の思いが発端だった。今回は石川氏が、浜野氏から伝え聞いたことを教えてくれた。

 「浜野は弊社の2代目で、生まれも育ちも墨田です。墨田は町工場が至るところにある街でした。昔は、どの工場も、春から秋はドアを開け放して仕事をしており、中の様子が丸見えでした。子どもたちが学校帰りなどに町工場をのぞき込んでくると、仕事を見せてくれたり、端材や鉄の塊をくれたり、ときにはお菓子やジュースをくれたり……。とにかく、そのようにモノづくりの現場が生活の中に溶け込んでおり、子どもにとっては、自然とそういう仕事がキラキラとかっこよく思えたそうです」(石川氏)。

 その後、時が経過すると、製造業は次々と海外へ移転し、不景気も相まって、墨田の町工場の数も減っていった。近所の騒音のクレームを気にしたり、エアコンを付けるようになったりで、ドアを開け放って作業をする町工場もすっかり減ってしまった。

 「今、モノづくりの現場は、距離的にも意識的にも、その当事者以外からはどんどん遠ざかり、モノづくりの尊さや面白さに触れる機会のないままに、『暗い・汚い・きつい』(3K)というイメージで製造業を敬遠する風潮も強くなってきました。浜野が子どものとき、モノづくりに感じた親しみやトキメキを今の子どもたちにも感じて欲しいという思いがずっとあったようなのです。私は異業種から転職してこの世界に入ってきたのですが、社長の浜野と同様、子どもたちにもっとモノづくりの世界を知ってもらいたい、モノづくりのエッセンスを体験してもらいたいと思いました」(石川氏)。

 実は、大人向けのワークショップも構想としてあるそうだ。特に、浜野製作所の常務 金岡裕之氏が乗り気。さまざまな分野のプロやマニアを集めて、複数回実施する本格的なモノづくり教室をやってみたいとのことだ。

「電気自動車や人型ロボット、あるいはバイクのパーツ、調理器具とか……、とにかく時間とお金がかかってもでも、『自分が欲しいものを自分で作りたい!』という人向けのプログラムをやってみたいですね」(石川氏)。

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