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» 2013年08月22日 10時00分 公開

ビルをぶら下げる? 水に浮く建物? 世界最先端、地震で揺れない技術の世界未来を変える“尖り”技術(2/2 ページ)

[MONOist]
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塔頂免震の建築「安全安震館」

 清水建設は、第一工房の建築家・高橋てい一氏(「てい」は青偏に光)、東京工業大学の和田章氏、竹内徹氏、オーヴ・アラップ・ジャパンの彦根茂氏らとコンソーシアムを組成して技術を開発、2006年に清水建設技術研究所の一角に「安全安震館」を完成させた。中央のコアからぶら下がった建物という見慣れないデザインは、塔頂免震の発想の新しさを伝えるには十分なインパクトがある。


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 地震が来るとコアとつり下げられている居室部分の間に変形が生じるため、コアの周りの床は電車の連結部分と同様に、スライドする構造になっている。

 「『安全安震館』では固有周期を5秒に設定しています。塔頂免震構造では、積層ゴムの傾斜角の調整によって、5秒という免震建物としては非常に長い固有周期を実現できました」

 コアと周囲の建物部分の間にはオイルダンパーが設けられている。オイルダンパーは、地震の際に、揺れのエネルギーを吸収する働きをする。

 「居室部はつっているため、強風に対する揺れを抑えることが必要でした。地震の際に機能するオイルダンパーを使って、強風時の揺れも抑えられないかを考えました」

 そのため、ロック機能を持つ特殊なオイルダンパーを開発した。普段はロックされた状態で居室部が揺れないようにしているが、地震を感知すると同時にロックは自動的に外れて居室部が免震されるようにする。

 「コアの中には階段、トイレ、設備配管などを設置して、スペースを有効に活かしています」

地震国家日本を守る最新の免震技術

 免震構造の場合、耐震構造と比べて初期の建設コストが一般に5〜7%程度上がるとされている。しかし、地震時の高い安全性、資産価値の保全、優れた事業継続性などから、地震の多い日本では免震構造の普及が進むと思われる。まだ開発課題もある。

 「現在の免震構造は横揺れにしか効果がありません。地震には縦揺れもあります。そこで三次元の揺れに対応できるように、積層ゴムに加えて、縦方向の振動を電車の車両などで使われている空気バネの大型版を使って絶とうという技術も開発しています」

 三次元免震構造は、東京・阿佐ヶ谷のマンションに実際に導入されているのだそうだ。

 「パーシャルフロート免震構造は、地面に造ったピット部内に水を張り、積層ゴムの上に載った建物の地下部分を水に沈める構造になっています。そこで浮力が発生します。船と同じです。建物の重量の半分を水で支えるため、積層ゴムへの負荷を半分にし、積層ゴムの数を減らし、長周期化できるメリットがあります」

 南海トラフ地震の発生が危ぐされ、地震対策が急がれている。清水建設の開発した最新の免震構造が利用されることで、被害を防ぎ、地震に強い街づくりが実現するのだ。

プロフィール

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中村 豊(なかむら ゆたか)

清水建設株式会社

技術研究所 上席研究員

1984年、京都大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程を修了後、清水建設株式会社に入社。1992年、米国カリフォルニア大学バークレー校土木工学科修士課程を修了。1997年、京都大学より博士号(工学)を取得。清水建設株入社後は、技術研究所に配属され、地震による建物の揺れを小さくし、人命・財産・事業を守るための免震構造、制震構造に関する研究開発に従事。2001年、粘弾性体を利用した制震ダンパーの開発で日本材料学会技術賞を受賞。現在は、海外への技術展開を担当する。


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