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» 2013年09月04日 14時25分 公開

モノづくり最前線レポート(38):「レッツノート工房」に見るパナソニックの強さ――同質化競争を逆手に取れ (2/3)

[三島一孝,MONOist]

多彩な機能を持つマザー工場「神戸」の役割

 パナソニックはPC市場で後発であることを逆手にとり、特長的な製品展開を行ってきた。ノートPC「レッツノート」シリーズでは、軽量、タフ、長時間などを訴求。さらに、モノづくりの力を生かし、1台からのカスタマイズなどに応じる「一品一様」提案や、ソフトウェアやサービスなどを組み合わせて納品するソリューション提案など、顧客ニーズにより深く対応する形で差別化を進めてきた。

パナソニック AVCネットワークス社 ITプロダクツ事業部 プロダクトセンター(神戸工場) 所長(工場長)清水実氏 パナソニック AVCネットワークス社 ITプロダクツ事業部 プロダクトセンター(神戸工場) 所長(工場長)の清水実氏

 その主要生産拠点である神戸工場の位置付けは、多くのPCメーカーと比べても異色だ。神戸工場はマザーボードの実装工程から、組み立て工程まで一貫生産する他、品質保証部門、コールセンター部門、修理サービス部門など多彩な機能を併せ持つ生産拠点となっている。さらに工場内に体験型のショールームなどもオープンした。

 パナソニックのPCユーザーは、大半がビジネスユーザーだ。製品の故障や不具合は顧客のビジネスに支障をきたす。そのため工場にコールセンター部門や修理サービス部門などを備えることで、対応を素早く行えるようにしているのだ。また修理の発生箇所などを生産部門にフィードバックすることで生産工程の修正も容易に行える。

 さらに修理サービス対応の短期化も推進している。従来「48時間以内の返却」を目標としていたのを「24時間以内」に短縮した。オペレーションの改善や物流面での向上などにより、現在は修理品の95%以上を24時間以内に修理して戻すことができるようになっているという。B2Bユーザーのニーズに徹底的に応えるため、かなり“融通の利く”体制を構築している。

 清水氏は「工場側としても競合他社と同じことをやっていては生き残っていけない。生産能力の強化はもちろん機能としても高めていく必要がある」と力を込める。

T字型モノづくりを推進

落下試験なども工場内で行う 落下試験なども工場内で行う

 当然基本となる生産革新活動にも積極的に取り組んでいる。ソリューション提案や「一品一様」のカスタマイズなどは、高いモノづくりのポテンシャルがあってこそ実現可能となる。パナソニックのPC部門では台湾にも工場を持つが、神戸工場をマザー工場とし、神戸工場で実践した生産技術を台湾工場に展開する方式を採っている。先進製品の生産ラインなどはまず神戸工場で立ち上げるという形だ。

 PCの生産において、実装工程ではマザーボードに1500の部品を実装するが、その工程は自動化を推進。その先はソリューション提案やカスタマイズなどで、多品種少量生産となるため、人手による組み立て方式を採用する。「一種のT字型モノづくりだ」と神戸工場の工場長である清水氏は話す。VMI(Vender Managed Inventory、納入業者が購入者の在庫を管理する仕組み)方式を採用する他、需給に合わせてこれらのオペレーションを日ごとに変更できる体制になっているという。

 清水氏は「神戸でしか行えないことをやるようにしている。日本市場向けのスピードや品質などは圧倒的に有利だ。また難易度の高い製品の立ち上げなど、距離が近いことにより、開発陣や品質保証部門など、すぐに関係者が集まって対応することができる。日本でモノづくりを行う価値はまだまだ大きい」と話す。

 将来的な市場環境を見据え、今後はPCだけでなくタブレット端末の生産などについても研究を進めているという。

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