あ、あの部品が見えるのか? MR技術によるモノづくり革新とは――ISID製造ITニュース

ISIDは「グローバル開発競争で勝ち抜くために」をテーマとし、MR(Mixed Reality:複合現実感)をモノづくりに活用するソリューションについてのセミナーを開催した。

» 2013年09月10日 18時15分 公開
[三島一孝,MONOist]

 電通国際情報サービス(以下、ISID)は2013年8月30日、MR(Mixed Reality:複合現実感)のモノづくりへの活用を提案するセミナー「ISID MR PLM Solution Seminar 2013 〜グローバル開発競争で勝ち抜くために〜」を開催した。

 MRとは、バーチャルリアリティ技術の一種で、現実と仮想をシームレスにリアルタイムで融合させる映像技術のことだ。例えば、今見えている視界に実際には存在しない自動車を映し出したり、部屋に仮想の家具を配置するようなことができる。



MRによる製造プロセス革新

 ISIDではキヤノンのMRシステム「MREAL」を活用した新たなモノづくり環境のシステム導入を推進している。グローバル競争における開発競争力強化に向けて、このMR技術を設計や製造などのモノづくり現場に活用しよう、というのが今回のセミナーの趣旨だ。

MREAL事業を統括するキヤノン イメージコミュニケーション事業本部 MR事業推進センター 所長の鳥海基忠氏 MREAL事業を統括するキヤノン イメージコミュニケーション事業本部 MR事業推進センター 所長の鳥海基忠氏

 セミナーでは、MRシステムを製品化しMRの普及促進に取り組むキヤノンから、MREAL事業を統括するキヤノン イメージコミュニケーション事業本部 MR事業推進センター 所長の鳥海基忠氏が登壇。MREALの現状と活用事例などを紹介した(関連記事:キヤノンのMR技術が生み出すコミュニケーションの力とは?)。

 キヤノンが開発したMREALは、「ヘッドマウントディスプレイ HM-A1」と基本ソフトウェア「MRプラットフォーム MP-100H」を中心に構成されている。独自の光学技術と高精度な位置合わせ技術を活用したヘッドマウントディスプレイ(HMD)と、位置認識技術などを組み合わせ、自由に移動しながら現実と仮想を組み合わせた世界を自由視点で見ることができる。活用の利点は「実寸大の臨場感」「自由視点の実現」「双方向性の実現」などだ。1997年から研究開発を進めてきたが、2012年7月から正式に展開を開始した。

 自動車や建設機械、住宅など、ディスプレイ内ではイメージしにくい製品を扱う企業からの引き合いが強いという。鳥海氏は「正式リリースからの1年で、製造における新たなコミュニケーションツールとして製造業に価値をもたらすことができることを確信できた。MRを活用することで、従来の製造プロセスを大きく変えられる可能性がある。MR市場を創造していきたい」と話した。

 また、3次元CGコンテンツ作成用のミドルウェア「Unity」に対応し、より簡単にMRコンテンツの制作や活用を行える利点について、キヤノンITソリューションズMR事業部MR技術部 部長の向井利光氏が紹介した。

設計・開発の場面でのMREAL活用のイメージ図(出典:キヤノン) 設計・開発の場面でのMREAL活用のイメージ図(出典:キヤノン)(クリックで拡大)

現場でなくてはならないモノに

 これらのMRソリューションを既に有効活用し効果を得ているのが日立建機だ。日立建機は、全長が数十mにも及ぶ大型の建設機械の製造・販売などを行っているが、これらの設計・開発にMRを導入。現在まででも非常に効果を発揮しているという。

日立建機 実験解析評価センタ センタ長 田村和久氏 日立建機 実験解析評価センタ センタ長 田村和久氏

 日立建機 実験解析評価センタ センタ長 田村和久氏は「建機市場は海外比率が高く新興国の成長などにより開発機種数の増加が必須。効率良く開発を行うためのサポートツールを探していた」と話す。

 同社では1997年に3次元CADへの全面移行を行い、従来はプロジェクターやディスプレイを通じて設計した機器の3次元データを見てきたが、感覚的に全体像を把握するのが難しかったという。「MRを活用し実寸大の感覚でモノを見られるということの意味は非常に大きい。現場で使っていると設計者たちが自由に『ここはもっとこうできる』というような議論が始まり、自発的に改善が進む。今やMRなしの製造プロセスは考えられないようになっている。今後は経験の少ない新人の技術研修などにも活用したい」と田村氏は話している。

流体解析を実際に見る

 その他の用途提案として、ISIDのエンタープライズソリューション技術統括本部ソリューション開発第2ユニット 戦略技術2部 部長の西村浩行氏は、実際の組み立てやメンテナンスの作業性の検討、生産ラインやショールームなどの配置検討などの他、流体解析の結果を実物大の製品の周辺に表示させることなどに効果があると説明。ハンディスキャナなどと組み合わせたバーチャルモノづくりの提案を推進する。

 「今後は、クレイモデルをバーチャル化するバーチャルクレイモデルの実現に取り組んでいくことも検討している。クレイモデルと同様人の手による動きに連動してCADデータの形状を変更するようなシステムが実現すれば、より自由度の高いモノづくりが可能となるだろう」と西村氏は話している。

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