一人メーカー流お買いもの! LEDや電源を選ぼう【一人メーカーことはじめ】LEDフロアスタンドを作ろう(2)(2/2 ページ)

» 2013年10月04日 11時00分 公開
[佐久間茂/キテラス,MONOist]
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 当初狙った照度よりも明るく、照明範囲は若干狭くなっています。この先は実際に作ってみてからフィルターなどを使って調整したいと考えています。このような調整をするときに便利なものとしては、オプティカルソリューションズ社が販売しているLSDというマイクロレンズアレイフィルターやLEE Filters社の舞台照明用フィルターがあります。前者は少々値が張りますが、透過効率と配光制御に優れていまして、使いやすいものです。後者のものは比較的安価ですので、気軽に試せる利点があります。

 次に天井を照らすための照明に使う部品を選定して行きます。

 こちらに関しては、具体的な照度値を求めるのがやや面倒ですので……、ここでは経験値で仕様を仮決めします。先に検討した手元用の照明よりもその照明距離は長く、照明範囲は広い方がよいですね。その上、天井に当たって反射した光を室内の明るさを上げるために用いるので、相当の明るさがあった方がよいでしょう。あと色温度に関してですが、室内の雰囲気の軽さを出すためにも手元用のものよりも高い色温度の方が好ましいでしょう。

 このような事柄をまとめつつ考えて、実際に選んでみた部品は以下です。

  • LED:Cree社「MK-R 4000K」(700mA駆動)
  • レンズ:Carclo社「10108」

 配光の調整に関しては、手元灯用同様にフィルターで調整する可能性があります。これも実際に光を見てから考えたいと思います。

 後は、電源の選定です。前回もお話しましたが、電源の安全性に関する評価を個人的に作るモノで、いちいちやっていたら大変なことになります。第三者の評価で安全性が確認できているものを使いましょう。

 具体的にはごくありふれたACアダプターです。国内で販売流通しているACアダプターには次の写真にあるように菱形の中に「PSE」と書かれたマークが付いています。

PSEマーク

 このような電源を介して、脱着容易なコネクタで照明器具と電源が接続している構造であれば、電源のみこのPSEマークが付いたものを使っていれば法的に問題のない照明器具となります。今回の照明器具では15V、18WのACアダプターを使います。

 LEDを点灯させるには単に直流電源に接続するだけでは、不十分です。LEDに流れる電流を任意の値に制御することが必要となります。簡単な方法としては、LEDと電源の間に適切な抵抗を入れ、LEDに掛かる電圧を適切な値に制御する方法があります。しかしこのような方法ですと、LEDの温度が上昇するに従い流れる電流が大きくなってしまい思わぬ事故を招く可能性があります。

 そこで、今回は定電流基板を用意します。定電流基板も部品が実装された完成品でいろいろと売られています。今回はそうした中から、入力電圧の幅がDC7〜30Vと広く、出力電流が基板上のボリュームを調節する事で300〜1000mAの間で設定できる使い勝手のよいものを選ぶことにします。

部品の購入先

 これまでに選んだ部品とその購入先を以下にまとめます。

 LEDに関しては、1つの製品あっても色温度や明るさで細かく分類されていて、以下の表ではその細かく分けられた発注コードを記します。

部品表

購入先と部品(部品個別のリンクが張ってあります)

 このリストにて紹介している購入先では、この原稿を書いている段階では在庫があったところを紹介しました。LEDやレンズに関しては販売店の状況によって、在庫が突然なくなったりします。このあたりが実際に仕事として単発で製品を作るときに落とし穴にはまって苦労する場合もあります。

 今回は、LED用の基板とLEDをばらばらに購入して、自らでLEDの実装をしなくてはならない構成になっています。この基板を販売しているCutter ElectronicsではLED実装済のものも販売していますが(「XP-E」「MK-R」)、今回選んだような演色性や色温度のものがラインアップされていなかったので、リストに書いたような構成としました。LEDの実装に自信がない方などは、光の質に多少の妥協が出てしまいますけれど、Cutter Electronics社から実装済基板を購入するのもよろしいでしょう。

 また、海外通販の場合は部品のコストに比べて送料が高くつきますので、いずれのも部品も余分を購入しておくことを強くお勧めします。

 余談ながら、いずれの部品も国内で小売りされていれば助かるのですが、私が把握している限りでは、ここで紹介する先ほどの品種や在庫の厚みをもってLEDやレンズを販売している会社を知りません。あくまでも想像ですが、英語で商売をしていて販売先が全世界を対象にしてこそ、経営が回るような在庫の回転率なのかもしれません。勤め人だった頃にこうしたビジネスを構築しようと試みましたが、在庫の回転率の悪さに苦しめられた経験があります。

 購入部品としてはこの他に、コネクタやスイッチ、配線、シリコングリスなどがありますが、これらは設計や製作の解説の中で逐次ご紹介しましょう。

 後、配光具合を調整するためのフィルターですが、こちらは照明器具が出来上がった状態で最後の検討をするものですので、その時点であらためてご紹介することとします。

 これで、照明器具を作るための核となる部品の選定と調達について、めどが付きました。次回は、こうした部品を組み込んだ照明器具の機械設計に話を移して行きます。

Profile

佐久間 繁

佐久間 茂(さくま しげる)

1969年生まれ。株式会社キテラス代表取締役。キャリアの前半では機械設計屋として写真現像機、複写機、レーザーマーカーの開発設計に従事。2002年に照明器具メーカーに転じ、美術館・博物館向け展示用照明分野を中心として従事。「仕事は理系、趣味は文系」の身にとって展示用照明の分野が天職と感じ、勢い余って2010年に株式会社キテラス(「きれいに照らす」の意)を創業。創業後は美術館・博物館向け照明器具の設計製造、時には展覧会のライティングなども行いながら、趣味と仕事の境界がほとんど消失した日々を過ごしている。共著で「LED照明のアプリケーションと技術―光学設計・評価・光学部品―」(シーエムシー出版)がある。

「飛行機は好きなだけで、操縦は出来ません(^_^;)」



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