冷蔵庫サイズのDNA解析装置をスーツケースサイズに、分析時間もわずか25分CEATEC 2013

NECは、開発中の犯罪捜査用のポータブル型DNA解析装置を参考出展した。冷蔵庫サイズの分析装置をスーツケースサイズに小型化したもので、DNAの解析時間も大幅に短縮することができるという。現場に装置を持ち込み、その場でDNAを解析できるようになると期待されている。

» 2013年10月04日 11時11分 公開
[村尾麻悠子,EE Times Japan]

 NECは「CEATEC JAPAN 2013」(2013年10月1日〜5日、幕張メッセ)で、持ち運び可能なDNA解析装置を参考出展した。同社が15年以上かけて開発してきたもので、2014年の実用化を目指しているという。

 DNAの解析は、(1)細胞の採取、(2)DNAの抽出、(3)DNA量を増やすPCR*1)増幅、(4)DNAの大きさを調べる電気泳動、(5)個体差を判別するSTR*2)解析という工程を経て行われる。現在は小型〜大型の装置を用いているが、NECはこれらのプロセスを一貫して行える、スーツケースサイズの装置を開発した。

*1)PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)。DNAを増幅するための原理、あるいはそれを用いた手法。
*2)STR:短鎖縦列反復配列(Short Tandem Repeat)。遺伝子の特定の領域において、数塩基ほどの短いDNA配列が繰り返し並んでいること。

 DNAの解析は1日がかりだが、それを25分程度と大幅に短縮できる可能性もあるという。現時点では、60分を達成している。

NECが開発したDNA解析装置。サイズは752×552×240mmで、重さは32kg(クリックで拡大)

 小型化の鍵は、1枚のアクリル板だ。アクリル板にシリコンゴム製のシートを何層も貼り付け、それらのシートの間に幅5mmの流路を作った。この流路が、試薬が流れる試験管の代わりとなる。試薬は、空気で押し出されることで流路を進んでいく。

DNAを抽出する部分、増幅する部分、DNAの大きさによって分離する電気泳動の部分で構成されている。このアクリル板は、使い捨てになる(クリックで拡大)

 NECは2012年に、このDNA解析装置の精度の評価を、警視庁の付属機関である科学警察研究所と共同で行った。その結果、いくつか課題は残るものの、犯罪捜査で運用できるレベルの十分な精度と再現性を持つことが分かったという。

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