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» 2013年10月16日 15時30分 公開

ベンダー社長が語る「CAE業界にまつわるエトセトラ」:エンジニア社長2人が四半世紀を経てかなえた、米国老舗と日本ベンチャーの協業 (2/3)

[佐々木千之,MONOist]

2社が協業して生みだすものとは

MONOist 2社が“今”協業するのはなぜなのでしょう。

加藤 直近のMSCユーザー会でも、お客さまからTSVの評判がよく聞こえてきたこともあって、「これはよいタイミングかな」と思いました。今のお客さまの課題は、シミュレーションの高精度にすること。そのためには、規模や要素の数を大きくする必要がありますが、そのメッシュを手で切っていたら時間ばかり掛かってしまいます。つまり「良いメッシュ」「安定したメッシュ」を「自動で切る」ということがすごく大事です。その面で、テクノスターは良い技術を持っていると思うので。

立石 TSVでメッシュ作業を自動化してミニマイズし、信頼性・ロバスト性の高いNastranと組み合わせれば理想的なものになる。

加藤 (協業は)アメリカのMSC本社でもサポートしてくれていて、日本で始めて、それがうまくいけば海外にも展開しようというような話をしています。テクノスターのTSVに匹敵するようなソフトは海外にはないと私は思います。自動的にメッシュをちゃんと切るというようなものはね。皆、そういうツールを求めているはずなのに、実際は、手作業でメッシュを切るのが主流です。“自動的”と言っていても、どこかは手動で修正しなくちゃいけないとか……。

立石 TSVは、画一的にメッシュを切れるようにしています。誰がやっても“ぶれないモデル”が出来上がります。過去に、ソルバーの会社がプリ/ポストツールを作っても、あまりよいものが現れなかったですよね(笑)。

加藤 ……それ、認めたわけじゃないですよ(笑)。

立石 認める認めないは別として、とにかく、ソルバーの会社にはソルバーの魂が、プリ/ポストの会社にはプリ/ポストの魂があるというわけですよ。

MONOist 2社の協業によって、使う側のコスト面でのメリットはありますか?

加藤 相当大きいです。TSVを正式に1本買うよりも、今回のDesktop(MSC Nastran Desktop for TSV)を買う方が安いです。

立石 はるかに安いですね。テクノスターは幾つかの分野で、世界トップの座にあると確信しています。ただ、世界でトップの技術であっても、それが広がるまでにはタイムラグがある。だから、信頼性の高いNastranとのコンビネーションを作ることによって、普及のスピードが上げられればいいわけです。安い製品になってもメリットはあるわけです。それにMSCがわれわれの製品を認めたことによる、お客さんからの信頼、これが大きいですね。

ユーザーが抱える現状の課題とは

MONOist 今後はどのようなことをお考えですか?

加藤 まず日本のお客さまのニーズ、NastranにおけるニーズをどんどんTSVに反映させていって、簡単にNastranのフル機能を使えるようにしていくということですね。あとわれわれが期待しているのは、テクノスターの開発中の次期製品「Jupiter(ジュピター)」です。それとも連携していきたいです。例えば、Jupiterでサポートする予定の「疲労」。疲労解析をNastranに組み込むこと自体はできますが、処理に結構な手間が掛かります。ところがTSVでサポートすれば、それが手早くできるようになります。

立石 プリ/ポストツールが長い歴史の中で、お客さんのニーズに応えるうちにだんだん複雑になり、スパゲッティ化してしまい、本来簡単にできたことが、非常にややこしいことになってしまったのです。

MONOist 今や、CAEの精度も向上し、機能も充実してきましたが、まだまだ解決されていない課題はあるかと思います。

加藤 1つが高周波の問題です。最近増えてきている電気自動車(EV)の開発では、モーターや電池などの電気系と構造系まで含めた、高周波対策と大規模音響解析が必須となってきます。このような解析では、もっと解析精度を上げていかないといけないし、要素数も圧倒的に増やさないといけません。

次に、材料の問題です。従来は、「この部品だったら、この鉄」といった感じで材料を決めてきました。これからは、材料物性そのものが設計変数になっていきます。そういうことに適したプリ/ポストとソルバーも必要でしょう。

立石 われわれが取り組んでいるのは、大規模問題を簡単にモデル化して、かつ信頼性のあるソフトウェアでCAEの主領域をカバーすることです。そうすることで、解析者でも設計者でも、自分自身で使えるソフトウェアに仕上げようとしています。

ツールで組織の壁を少しでもなくしたい

MONOist MONOistのセミナーや座談会企画で「解析専任者は出世できない」という話がよく出てくるのですが、どう思われますか。

立石 私がMSCにいたころから「CAEの人に偉くなってもらおう」がスローガンでした。なぜ偉くならないか、答は単純です。いわゆるCAEの細かな技術の中に入っていくと、結果として、製品の設計とか製品の最適化とか製品全体のことに注意を払わずに、(自分の担当したCAE部分が)いかに精度がよくてサイエンティフィックでという風に考えるようになってしまう。おそらく製造業の中では一番優秀な集団のはずですが、細かなこだわりも多くて、例えば100万のメッシュの中の1つがおかしかったら、それがどう影響するか考えずに、「これはおかしい」という議論が起こってしまうんです。

加藤 もともとシミュレーションでは、「ここに力が集中する」ということを想定してそこにメッシュを細かく切っていました。それが当たり前と思っているのでそこにこだわってしまう。でもTSVみたいなソフトを使えば、そういうのを気にしないである程度詳細なメッシュが自動的に切れていって、その分の時間を節約できます。その時間を、会社のためにもっと良い製品を作る、もっと機能がよいとか、品質が高いとか、そこに使えばいいのですが、そうならなかったことが多々あったということですね。こだわっている間に製品開発はどんどん進んで、結局シミュレーションは最後の確認だけで設計には反映できないということもあり得るわけです。

立石 追求しても分からないものは分からない。例えばメッシュにしたって追求してもそこに終着駅はありません。だから「こういう基準で行きますよ」といった割り切りが必要なんですが、そういうことができる人があまりいないですね。

MONOist 組織の壁が、スムーズな開発を阻んでいるといった話もよく聞きます。

立石 「CAEは難しい」という感覚ですよね。解析者は「設計はある程度分かりますが、専門ではない」。でも「われわれは難しい仕事をしているんだ」という意識があります。一方、設計者から見ると、「(製品開発の)本来の仕事はわれわれがやっている、解析は解析にすぎないじゃないか」という意識があります。そのギャップが壁になります。だから、そこに「解析者でも設計者でも使える道具」があれば解決するわけですよ。

加藤 同じCAEの技術者といっても、動解析、非線形、疲労、衝突……と得意分野がそれぞれ異なります。大学の先生もそうですが。今回のテクノスターさんとの連携は、Nastranのいろいろな機能、いろんなソルバーをバラバラに使っていた部分を、TSVから使うことでフル機能を活用してもらえるようになります。今回のわれわれの製品を使っていただければ、本当に問題は解決の方に、良い製品を作ることにCAEの技術者のエネルギーを使えるようになるのではと思います。……というか、そうなるようにしたいですね。

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