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» 2013年10月17日 13時00分 公開

小寺信良が見たモノづくりの現場(9):富士通のPC工場、勝利の方程式は「トヨタ生産方式+ICT活用」 (3/5)

[小寺信良,MONOist]

多品種少量生産のライン製造

 基板製造はライン生産による自動化で合理化するのは理解しやすいが、バリエーションの多いノートPCの組み立て工程は、セル生産方式が向くといわれてきた。だが島根富士通では、多品種少量生産であるPCの組み立て工程もラインで行っている。

 ここでは“人と機械の協調生産”がキーワードとなっている。つまり、ネジ締めやラベル貼りといった単純作業は全て機械化されている。またロボットなどを使って省力化しながら、組み立て製造と同じベルトコンベア上で、各種の試験や外観検査、梱包までやってしまうという徹底ぶりだ。

2階の装置製造ライン青テープの範囲内で作業を終わらせる 建屋2階に設置された組み立てライン(左)。作業は青テープの範囲内で終わらせなければならない(右)(クリックで拡大)
トヨタ生産方式でおなじみの“あんどん”30台分のストレージに、それぞれ違ったOSイメージを書き込むことが可能 トヨタ生産方式でおなじみの“あんどん”(左)。30台分のストレージに、それぞれ違ったOSイメージを書き込むことが可能(右)(クリックで拡大)
自動ネジ締め機が稼働中キーボードの打鍵検査装置とインタフェース検査装置 自動ネジ締め機が稼働中(左)、キーボードの打鍵検査装置とインタフェース検査装置(右)(クリックで拡大)
シール貼りも自動化梱包まで同一ライン上で行う シール貼りも自動化(左)、梱包まで同一ライン上で行う(右)

“忘却”を回避する「混流生産」

 さらにポイントは、1つのベルトコンベアラインの中に複数のタイプの機器を流す「混流」が標準的に行われているという点だ。作業者は、特に製造指示書などを見ることもなく、違う製品が流れてきたらそれ用の部品で製造を行う。1人分の作業は約10工程で、所要時間はおよそ1分。

 もっとも、これには人間の特性を考慮した工夫がある。大量のロットで同じものをずっと作り続けていると、他のモデルの作業工程を忘れてしまうので、あえて細かくバラしていろいろなタイプがラインに流れるよう、調整しているという。

 このような工夫により、従来装置組み立てラインは80mあり、作業者も24人が必要だったが、現在はライン長は半分に、作業者も17人で済むようになった。もちろん、PCは年々機能追加や小型化、薄型化など付加価値が上昇する。それに伴って製造作業も難しくなっていくが、生産コストは生産革新の取り組みを始めてから逆に70%程度に削減できた。製品の付加価値上昇分も含めたトータルで考えれば、生産性はおよそ2倍に向上していることになるという。

別棟のカスタムモデル製造ライン。部品点数が多いため、熟練工が担当する 別棟のカスタムモデル製造ライン。部品点数が多いため、熟練工が担当する(クリックで拡大)

 ただしこの製造法は、日本でなければ難しい。生産性向上のキーは、高水準の人の能力に依存しているからだ。例えば1人当たりの作業工数の多さや、混流製造に対応できる能力を身につけてもらうためには、技能継承や継続雇用が前提となる。このような雇用形態は海外にはなく、まねしようにもできないものだ。

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