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» 2013年10月17日 13時00分 UPDATE

小寺信良が見たモノづくりの現場(9):富士通のPC工場、勝利の方程式は「トヨタ生産方式+ICT活用」 (4/5)

[小寺信良,MONOist]

徹底的なICT活用モノづくり

 富士通のPC製造は、企画から設計、製造、サポートに至るまで、徹底したICTの活用が行われている。

 製品設計で使用したCADデータは、「VPS(Virtual Product Simulator)」と呼ばれるソフトウェアに読み込まれ、試作評価や生産準備、量産試作に利用される。従来は、設計はできたがそれが作りやすいのか作りにくいのか、あるいは品質的に担保できるのかといったことが、実際に試作してみるまで分からなかった。

 だがこのツールでは、設計の段階で得られるデータを使って、製造プロセスをシミュレーションできる。データ上で断面を確認して、ツメの掛かり具合や部品の隙間といった部分もチェックできる。

 さらには、製造手順をCGアニメーション化することができる。これにより製造者は、テキストの製造手順マニュアルを読み込む必要がなくなり、視覚的に短時間で製造プロセスを習得できる。従って実際の工場内の製造は、垂直立ち上げが可能になる。

 またこの製造プロセスのアニメーションデータは、メンテナンスやサポートといった部分にまで活用される。アニメーションを逆再生すれば、分解手順になるからだ。これにより、ほとんど紙の情報を使うことなく、コスト削減とスピーディな事業展開を可能にした。

製造作業シミュレーターでプロセスを半減

「GP4」の画面イメージ 「GP4」によるシミュレーションの画面イメージ(クリックで拡大)

 もう1つ、製造作業を最適化するためのシミュレーターとして、「GP4」というツールも開発した。これは、機材や人の配置、作業動線、さらには作業者の姿勢や作業視野といった要素を、全て比較検証できる。

 そもそも“人と機械の協調生産”で効率化するためには、機械が人にとって最適な場所にあり、人の移動が最も少なくて済む方法を検討しなくてはならない。これを実際に機材を配置してさまざまに変えながら試験していては、時間も労力も掛かり過ぎる。そこでこのようなシミュレーターを使って、ラインの設計を行うわけである。

 この効果は絶大で、導入前には1サイクルで400mの製品移動が必要であったプロセスが、半分の移動で済むようになった。また一度置いたものをまた配置換えするといった無駄もなくなった。

 これによって最適化された、プリント基板検査試験工程が素晴らしい。プリント基板製造工程では、最後の試験が唯一、人間が関わる作業である。この作業ブースでは、1人の人間が4つのプロセスを順番に検査していく。

GP4によって最適化された検査ブース。1人で4作業を順次こなしていく GP4によって最適化された検査ブース。1人で4作業を順次こなしていく(クリックで拡大)

 1つ目はCPUの吸着用アダプターを取り外すための多関節ロボットに対し、基板セット。2つ目ははんだ付けの検査機で、問題があれば該当製造プロセスのカメラに切り替えて、目視確認。3つ目は試験用OSを使って、機能試験を実施。4つ目は基板を切り離すレーザーカッター装置への基板セット。これだけの作業量を、1ラインにつき1人で行っている。まさにあらゆる手順や作業位置、設備配置、さらにはリードタイムが最適化されていなければ不可能である。

徹底したカスタマイズ対応を実現

 企業向けの納入が多い島根富士通のPCは、徹底的なカスタマイズが可能である。製品の企画から開発、専用ハードの製造も請け負う。さらには「箱を開けて電源を入れたら既に自社サーバと接続設定がされている」「資産管理用のラベルがあらかじめ貼ってある」「カスタムメイドのタブレットを全国に散らばっている従業員1人1人に工場から直送する」といったことまで対応する。

納品先のサーバとつないで設定情報を流し込む 納品先のサーバとつないで設定情報を流し込む(クリックで拡大)

 島根富士通代表取締役社長の宇佐美隆一氏は「カスタマイズできるものほど手元に引きつけるのがポイント」だという。どこのメーカーもカスタマイズには対応しているが、日本の顧客向けのカスタマイズは、結局現場である日本でしかできない。そのため、海外で半完成のものを運んできて、箱を開けてカスタマイズしてまた梱包、などとやっていると、結局日本で生産する以上のコストが掛かってしまう。

 一方島根富士通では、このようなカスタマイズもライン上で一気通貫でやってしまうため、カスタムモデルながら価格競争力がある。つまり単純なモノづくりで競争せず、このような付加価値で差別化していくことで、企業も納得する日本品質の製品を届けることができる。

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