連載
» 2013年10月29日 09時55分 公開

【短期集中連載】ドングルPCが実現するスマート社会(4):ドングルPC活用の留意点と究極の姿 (3/3)

[金山二郎(イーフロー),MONOist]
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フロントエンド強化

 当然のことながら、“表示”はユーザーがまずその品質を体感するものであり、非常に重要です。ところが、Androidの描画系のAPIは設計が古く、滑らかな表示が行えません。ハードウェアのカタログスペックからすると、非常に低いレベルの性能しか出すことができないのです。

 これは、APIの設計レベルからの問題であり、互換性を保ったままで実装を改善しても限度があります。すなわち、エレガントな設計を持つ別の描画系APIの必要性を意味しています。

 スマートフォンのようにマーケットが存在し、膨大なソフトウェア資産をそのまま動かさなければならないという使命を持っているデバイスは簡単にAPIを切り替えたりできませんが、ドングルPCはそのような制約を持っていません。サービスに最適な表示を設計し、実装できます。

 ただし、これをOpenGLプログラミングという形で実現しようとすると、OpenGL技術者が必要になります。OpenGL技術者はJava/Android技術者より桁違いに少ないので、まずプロジェクトの体制を整えることが困難になります。

 そこで、OpenGLのカタログスペックを損なわないようなJava APIを用意することが考えられます。例えば、dongleeではそのようなアプローチのフレームワークを搭載しており、1クラス上のチップセットでのAndroid標準の描画よりも高速で滑らかな描画を実現しています(図4)。

高性能描画API 図4 「donglee」に搭載している高性能描画API。OpenGLのカタログスペックを最大限に引き出しつつ、Java APIを提供することで、滑らか描画を簡単に実現可能とした

バックエンド強化

 ドングルPCは安いので、「無料で配れるかもしれない」という発想が生まれます。ショッピングやファンクラブなど会員制のサービス事業者は、ドングルPCにより、TV経由で自社サービスを提供することに強い興味を持っています。なぜなら、契約者を離れにくくする付加価値と見なせるからです。また、会員制の場合は月額でサービス利用料を徴収することが多いので、無料配布の投資をサービス利用料で相殺していき、「半年後、1年後から黒字化」という図式を立てやすいという面もあります。

 そのような事業はほぼ間違いなくサーバを持ち、通信を行います。適時に適切なエリアやクラスの会員に対してプッシュ配信を行い、利用者動向をつかみたいという欲求があります。そのようなサービスを実現するために必要な基本的なソフトウェア機能をあらかじめ備えておくことで、ドングルPCによる品質の高い付加価値の投入を早めることができます。

 例えば、dongleeの場合、プッシュ配信や利用動向の取得はもちろん、アプリケーションの自動入れ替えなども行うバックエンドシステムを備えています(図5)。

バックエンドシステム 図5 「donglee」に搭載しているバックエンドシステム。Androidには備わっていないサービス向け機能を提供することで、ごく短期間での利便性の高い商用投入を可能とした

TVリモコン対応

 TVが主たる表示先である以上、「TVのリモコンで操作したい」という思いは必ずあります。これに対して、Androidの進化のベクトルは違う方法を向いています。

 初期のAndroidスマートフォンは、物理的なキーを多く持っていましたので、カーソル移動などもそれなりに可能でした。しかし、近年のスマートフォンでそのようなキーがなくなり、ほとんどの操作がタッチで行われるようになると、対応するソフトウェア実装はメンテナンスされなくなっていきました。従って、現在のAndroidではリモコンのようなデバイスで操作を行うことは現実的ではありません。

 また、TVリモコンは赤外線により信号を送りますが、HDMI接続機器にその信号を届けるには、HDMI-CECというHDMIを介したデータ通信をサポートする必要があります。

 手前味噌な話が続いて恐縮ですが、dongleeではHDMI-CECに対応し、UIもリモコン対応することで、TVリモコンからの操作を可能にしています。

 このような努力により、ドングルPCは“さしたる使い道のないAndroidデバイス”から、サービス事業に継続性と拡張性をもたらす“キーデバイス”へと生まれ変わります。

究極のドングルPCの必須要件 図6 究極のドングルPCの必須要件。幾つかの観点から補強を施すことで、安いだけのAndroidデバイスが次世代サービスのキーデバイスに変身する


 以上、駆け足になりましたが、本連載を通じ、最新情報を絡めながらドングルPCの取り巻く環境や利用に際する考え方などについて紹介してきました。ドングルPCは、これからさらに進化し続け、より高度なサービスを、より簡単に実現していくことでしょう。ですから、このタイミングで“ドングルPCの先駆け”となるメリットは大きいといえます。同業他社に出し抜かれてから挽回することは至難の業です。早めの検討が望まれます。(連載完)

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筆者紹介:

金山二郎(かなやま じろう)


株式会社イーフロー ソフトウェア開発部 部長。Java黎明(れいめい)期から組み込みJavaを専門に活動している。10年以上の経験に基づく技術とアイデアを、最近はAndroidを利用したソリューションに活用している。



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