ホンダ「Nシリーズ」の新たな革新「N-WGN」、燃費性能で競合車種と肩を並べるエコカー技術(2/3 ページ)

» 2013年12月06日 21時30分 公開
[朴尚洙,MONOist]

「ツインインジェクションシステム」と「ナトリウム封入バルブ」

 それでは、パワートレインの改良の詳細について見ていこう。

 エンジンは、Nシリーズに搭載されている軽自動車用の直列3気筒の「S07A」を、“全面刷新”と呼べるレベルで各部をリファインした。まず、1気筒につき2本のインジェクターを装着する「ツインインジェクションシステム」を採用。インジェクター1本当たりの燃料噴射量を減らして霧状に微粒化し、燃料と空気がより均一に混ざるようにして燃焼状態を改善した。スズキの「スイフト」に搭載された「デュアルジェット エンジン」と同様の取り組みである(関連記事:スズキが「デュアルジェット エンジン」を新開発、「スイフト」の燃費を2割向上)。

「ツインインジェクションシステム」(右)と従来システムの比較 「ツインインジェクションシステム」(右)と従来システムの比較(クリックで拡大) 出典:ホンダ
「ナトリウム封入バルブ」で熱伝達効率を向上 「ナトリウム封入バルブ」で熱伝達効率を向上(クリックで拡大) 出典:ホンダ

 圧縮比も従来の11.2から11.8に高めている。高圧縮比化するとノッキングが発生しやすくなるため、ホンダ車として初めて「ナトリウム封入バルブ」を採用した。ナトリウム封入バルブの内部に封入したナトリウムは、エンジンバルブの傘部分から軸部分、バルブガイド、冷却水という配熱のための熱伝達の効率を高めてくれる。これにより、高熱になりやすい排気バルブの近傍の温度を下げて、ノッキングの発生を抑制するという仕組みだ。

 最近のエンジンの燃費向上策としてよく取り入れられている、水冷式のクーラーを用いて排気再循環(EGR)を行うクールドEGRシステムは採用していない。その替わりに、EGRパイプをエンジンの冷却水を循環するウォーターパッセージ内に配置し、冷却水の流路と広く接触させることで排気を冷却する手法を採用した。これにより水冷式のクーラーが不要になるので、クールドEGRシステムを採用するのと比べて小型化・軽量化が容易になるという。

「N-WGN」のEGRシステムの構造 「N-WGN」のEGRシステムの構造(クリックで拡大) 出典:ホンダ

 燃費性能に直結するエンジンの摩擦損失も低減した。動弁系ではカムチェーンの背面に工夫を加えてカムチェーンテンショナーとの接触面積を減らし、摺動(しゅうどう)抵抗を削減。また、クランク両端のオイルシールを改良して、封止性能を維持しながら締め付け量を小さくし、ベアリングへのモリブデンコートや、クランクジャーナルの鏡面仕上げも採用して、クランクまわりの摩擦抵抗を低減した。

クランクまわりの摩擦損失低減策 クランクまわりの摩擦損失低減策(クリックで拡大) 出典:ホンダ

CVTの改良点は4つ

 トランスミッションの無段変速機(CVT)も改良を施した。改良点は4つ。1つ目は、アイドルストップの状態からの復帰時にCVTの作動に必要な油圧を供給するのに、電動ポンプに替えて電力を消費しない「アキュームシステム」を採用したことだ。電動ポンプよりも軽量で電力を消費しないので低燃費化に貢献するという。

CVTに新たに採用したアキュームシステム CVTに新たに採用したアキュームシステム(クリックで拡大) 出典:ホンダ

 2つ目の改良点は、CVTの潤滑に用いるCVTフルードを、エンジンの冷却水の熱を使って温める「CVTフルードウォーマー」の採用である。これにより、エンジン始動の直後から最適な状態でCVTを動作させられるので燃費を向上できる。ムーヴが採用した「CVTサーモコントローラ」と機能的にはほぼ同じだ。

 3つ目となるのが、燃費向上効果が期待できる最終減速比のハイギアード化だ。しかしその一方で加速性能が低下するという問題がある。そこで、トルクコンバーターの流体特性を変更することにより、走行性能に主軸を置いたN-ONEと同等の加速性能が得られたという。最後の4つ目は、トルクコンバーターダンパーの特性改良によるCVTの伝達効率向上である。低いエンジン回転数でCVTのロックアップを行うと発生する振動やこもり音を抑制し、従来よりも低回転側でロックアップ領域を拡大した。トルクコンバーターによるスリップも低減できるので、伝達特性が高まり、燃費性能も向上するというわけだ。

 また、アイドルストップシステムについても改良を加えた。従来は停車中のみアイドルストップしていたところを、時速10km以下まで減速するとアイドルストップするように変更しており、さらなる燃費向上が図れるという。

アイドルストップシステムの改良 アイドルストップシステムの改良(クリックで拡大) 出典:ホンダ

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