トヨタの分かりにくさ、BMWの分かりやすさプロダクトデザイナーが見た東京モーターショー2013(7/7 ページ)

» 2013年12月27日 11時50分 公開
[林田浩一(林田浩一事務所),MONOist]
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その他会場で感じたトレンドや兆候

 今回の東京モーターショー2013、冒頭にも書いた通り、最近出展してこないメーカーがあるのは少々寂しいものの、前回より活気が戻ってきたのではないだろうか。会場全体を歩いてみてということでは、次のようなことも印象的だった。

余白ある商品開発

 ダイハツ工業のKOPENや日産自動車のIDxなど、ユーザーに手を加える余地を残すとか、開発時点からユーザーを巻き込んでいくとか、これまで自動車メーカー内の開発チーム内でのみ行っていた取り組みに“余白”のようなものを取り入れることで、新たな商品開発に対する試みが出始めたように思う。IT関連のサービスではないけれど、β版的なものから世の中に送り出す仕組みが、クルマのように開発期間が長い商品開発においてどのように進化していくのか楽しみである。

見たことのないカタチから美しいカタチへの兆候も

 ボルボのConcept Coupeに見られるような、基本的にシンプルできれいな面やキャラクター線で見せるデザインは、ここ最近の「これまでに見たことのないカタチ」を求めるかのようなデザインに対する反動の兆候なのかもしれない。ボルボのブースではターンテーブル上で回るConcept Coupeを長時間眺めている人も少なくなかったので、一定数の心を捉えているのは間違いないようだ。これがApple製品のデザインのようなところまで行くのかは分からないけれど。

実質的なダウンサイジング

 スバルは「レヴォーグ」という「レガシィ」よりひと回り小さなクルマを投入。アウディは「A3」にオーソドックスなセダンボディを追加。メルセデス・ベンツも、「Aクラス」にセダンボディの「CLA」を設定。VWの「ポロ」と「up!」は、サイズ感の関係で見ると、かつてのゴルフとポロの関係のようだ。

 モデルチェンジのたびに、ボディサイズをジワリジワリと拡大(肥大?)させてきた各社の主力モデルに対し、元のサイズの穴を埋めるかのようなモデルが増えてきたことを感じる。何だかまるで、実質的なダウンサイジングのような雰囲気だ。

 これまでは、乗車するニンゲンの体格が良くなっているからとか、年々厳しくなる安全基準への対応のためとか、正当な(と主張する)サイズ拡大の理由があったわけだか、そろそろボディ拡大に不便・不満を感じる人も増えてきたということか。

 そしてプジョーに至っては、「207」を「208」へモデルチェンジした段階で、ボディサイズを小さくしている。ボディサイズに関しても、これまでへの反動的な傾向がでているのかもしれない。



 今回の東京モーターショー2013が、前回よりも活気あるような雰囲気に感じたのは、ここまでに書いてきたような新しい動きを会場のあちらこちらで感じ、未来がどうなっていくのか楽しみになったからということが大きい。とはいえ、海外勢で出展を控えた自動車メーカーからは、東京モーターショーに投資する意味や価値が薄いとみられているわけで、東京モーターショー自体の今後のあり方も変化してくるのかもしれない。

Profile

林田浩一(はやしだ こういち)

デザインディレクター/プロダクトデザイナー。自動車メーカーでのデザイナー、コンサルティング会社でのマーケティングコンサルタントなどを経て、2005年よりデザイナーとしてのモノづくり、企業がデザインを使いこなす視点からの商品開発、事業戦略支援、新規事業開発支援などの領域で活動中。ときにはデザイナーだったり、ときはコンサルタントだったり……基本的に黒子。2010年には異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。最近は中小企業が受託開発から自社オリジナル商品を自主開発していく、新規事業立上げ支援の業務なども増えている。ウェブサイト/ブログ誠ブログ「デザイン、マーケティング、ブランドと“ナントカ”は使いよう。」などでも情報を発信中。



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