2014年、進化する家庭用蓄電池とその未来和田憲一郎の電動化新時代!(10)(1/4 ページ)

家庭用蓄電池市場が大きく伸びている。東日本大震災で注目された非常用電源としての活用のみならず、最近はエネルギーマネジメントの基幹商品としても脚光を浴びている。家庭用蓄電池の有力企業3社への取材から、2014年に大きな発展が期待される家庭用蓄電池の現状とその未来を考察する。

» 2014年01月10日 10時00分 公開
和田憲一郎の電動化新時代!

 家庭用蓄電池は、一般家庭にはあまりなじみがなかった商品であるが、東日本大震災の際に非常時の電源として注目された。最近はそれにとどまらず、太陽光発電システム、電気自動車(EV)などとも連携したエネルギーマネジメントの基幹商品として脚光を浴びている。この家庭用蓄電池市場に今何が起きているのか。そして、今後はどのような方向に進むのか。有力企業であるパナソニック、シャープ、ニチコンの3社にヒアリングを行い、2014年に飛躍が期待される家庭用蓄電池の未来像を探った。

2013年度の国内市場規模は約300億円

 まず、パナソニックのエコソリューションズ社で家庭用蓄電池事業を推進しているエナジーシステム事業部 新事業推進センター センター長の磯崎典夫氏に、現況と将来像についてお話を伺った。

和田憲一郎氏(以下、和田氏) 家庭用蓄電池の市場動向と、その使われ方について教えてほしい。

磯崎氏 業界全体では2013年度の家庭用蓄電池販売額として、移動型、定置型(据え付け型)含めて当社の想定で300億円程度とみている。定置型リチウムイオン蓄電池への補助金政策(現在は終了)の効果もあり前年度と比べても大きく拡大したと考える。

 家庭用蓄電池は、移動型と定置型という2つのタイプに分けられる。パナソニックが販売しているのはほとんどが定置型だ(家電ルート販売分を除く)。それぞれ購入動機が異なり、移動型は3・11の東日本大震災をはじめ災害で困った経験がある方などが、万が一のことを考えてお買い求めいただいているようだ。一方、定置型は、住宅と一緒に購入される方や、太陽光発電システムを導入するのに併せて購入したいと考えているお客さまが多い。

 お客さまの反応から得られた感触としては、移動型は災害の際に役に立つことを想定しているためか、日常で役に立つという実感はやや薄いように思える。それに対して定置型は、安価な深夜電力を充電し、蓄えた電力を最も電力需要が高まる夕刻に使用するなど、経済性を考慮した使い方も可能になっている。そういった部分が、お客さまから高い評価を得られている理由だと考えている。

パナソニックのリチウムイオン蓄電池ユニット(容量4.65kWh) パナソニックのリチウムイオン蓄電池ユニット(容量4.65kWh) 出典:パナソニック

和田氏 家庭用蓄電池の電池容量は将来どう変化していくのか。

磯崎氏 現在市場では、電池容量5k〜7kWh程度が主流となっているが、パナソニックでは住宅用としては4.65kWhの製品を販売している。これは電池容量が大きくすると価格が高くなることや、サイズ、実際の使い方などとのバランスを考えて設定したものだ。万が一の災害が発生した場合に、少なくとも、照明類、エアコン、テレビ、さらには冷蔵庫などをリビングルーム内で利用できるようにすることを想定して設定した容量にもなっている。

 小型・軽量化を図っているので、電池ユニットの奥行きの薄さ(15.6cm)などが評価されている。最近の住宅は、宅内には設備や家具などいろいろ設置するものがあるため、省スペースであることはとても大切な要件だ。

和田氏 家庭用蓄電池の電池特性はどのように進化していくのか。

磯崎氏 今後重要とされる要素としては容量の他に電池寿命がある。パナソニックでは、使用開始から約10年が経過した後の容量として、初期の60%以上が最低でも残るよう設計している。基本的には1日1回、充放電を繰り返すことを前提としての寿命である。ただし、使い方がいろいろあると思われるので、10年間の製品保証は行っていない。とはいえ、今後は住宅も長期保証が必要になるし、太陽光発電システムも10年保証を行っているので、家庭用蓄電池も同じ電設・資材関係と考えれば、より長期の保証が必要になる流れが出てくるのではないかと考えている。

 電池セルは18650タイプ(サイズが直径18mm×長さ65mm)を使用している。EVメーカーのTesla Motorsに供給しているような車載グレードとは異なる特性の品種を使用している。住宅用として、コストや寿命、容量維持特性など総合的にバランスの取れたものになっている。もちろん、安全性(発火・発煙など)についてはさまざまな評価を行い、住環境への設置にも十分配慮している。

和田氏 EVと住宅をつなぐV2H(Vehicle to Home)機器との関係はどうか。

磯崎氏 V2Hと家庭用定置型蓄電池は両立するものだと考えている。おそらく、お客さまが生活スタイルに合わせて選択するようになるのではなかろうか。ただし、V2H機器はまだ最終規格が固まっておらず、本格的な普及は2014年以降になると思われる。

 将来、太陽光発電システム、家庭用蓄電池、そしてV2Hなど複数の電源供給機器が普及してくると、それら全体を最適にコントロールする必要があろう。つまり家全体のエネルギーマネジメントが必要となってくる。

和田氏 将来の家庭用蓄電池が目指すべき姿や課題についてどのように考えるか。

磯崎氏 まずは普及に向けた価格低減の実現だ。先般も移動型の製品で容量が5kWhの蓄電システムを90万円で発売したが、今後需要の裾野を拡大するには価格についても配慮が必要となるだろう。

 また用途拡大も重要。現在はバックアップ電源としての色合いが強い。しかし、将来を考えるとエネルギー平準化のためのバッファとしての役割が広がってくるのではないだろうか。

 家庭用蓄電池が広く導入されて、規模が1万戸、2万戸のレベルに達すると、群としての電池を上手く活用することも視野に入ってくる。その際には、効果的に電力ピークを抑えたり、デマンドレスポンスを活用しながら、街全体のエネルギーバランスをとったりすることができる。

 国内の家庭用蓄電池市場はまだ立ち上がったばかりだ。しかし、今後もますます可能性が広がってくるものと考えている。

パナソニックの磯崎典夫氏 パナソニックの磯崎典夫氏
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