“氷上のF1”ボブスレー、高速滑走支える3次元CAD米ソリッドワークスのプライベートイベントより(1/2 ページ)

米ソリッドワークスが開催中のプライベートイベント「SolidWorks World 2014」2日目の基調講演では、ソチオリンピックのボブスレーで、米国チームが使用するソリの開発者が登壇した。その他、8本の足で自在に動き回るクモ型ロボットや、カーボンファイバで印刷できる3Dプリンタの設計者も事例を紹介した。

» 2014年01月29日 16時54分 公開
[村尾麻悠子,MONoist]

 米ダッソー・システムズ・ソリッドワークス(以下、ソリッドワークス)は、2014年1月26日(米国時間)より、米国カリフォルニア州サンディエゴでプライベートイベント「SolidWorks World 2014」を開催している。

 2日目に行われた基調講演では、ユーザー代表として、ソチオリンピックで米国のボブスレーチームが使用するソリ、複雑な動きをするクモ型ロボット、カーボンファイバでプリントできる3Dプリンタの開発者たちが登壇した。

“氷上のF1”、米国チームのボブスレー用ソリはSolidWorksで設計

 いよいよ開催が来週に迫ったソチオリンピック。「氷上のF1」とも呼ばれるボブスレーは、人気が高い競技の1つだ。そのボブスレー男子4人乗りで、米国チームが使用するソリはSolidWorksを使って設計されている。

 開発に携わったのは、非営利企業Bo-Dyn Bobsled ProjectのGeoff Bodine氏とBob Cuneo氏である。元レーシングカーのドライバーであるBodine氏が、Chassis DynamicsのエンジニアCuneo氏を誘い、ボブスレー用のソリを開発することになったという。両氏が最初に開発したソリ「Night Train」は、2010年のバンクーバーオリンピックで、米国のボブスレーチームを62年ぶりの金メダルに導いた。

「Night Train 2」を引っ提げ、登壇したGeoff Bodine氏(右)とBob Cuneo氏。Night Train 2は、バンクーバーオリンピックの時のように、米国チームを優勝に導くことができるだろうか

 最高時速100kmを超えるスピードで滑走するボブスレーは、わずか0.01秒の差が勝敗を決める競技だ。おまけにソリの仕様は細かい規定が数多くある。

 Night Trainは2次元CADで設計したが、ソチオリンピックに向けて、厳しい規定の範囲内でより速いソリの開発を目指す中、Cuneo氏は2次元CADに限界を感じて3次元CADのSolidWorksを使用し始めた。そして開発されたのが「Night Train 2」だ。2次元CADに慣れていたCuneo氏は、最初はどうしても3次元CADを使うことに抵抗があったと話す。だが、部品の細かい変更がすぐさま反映されるといった3次元CADの利便性は、やはり魅力的だったようだ。SolidWorksの導入は、工数の削減に大きく貢献したという。

Night Train 2のモデルを表示したSolidWorksの画面
Night Train 2の風洞実験の様子

操縦してみたい? クモ型ロボット

 カナダのNPO(Non Profit Organization)であるeatART Foundationは、環境保護の啓蒙活動を行う団体だ。基調講演には設立者のJonathan Tippett氏が登壇し、取り組みを紹介した。

Mondo Spiderの開発者でもあるJonathan Tippett氏(左)

 eatART Foundationの活動の仕方はちょっと変わっている。太陽電池を搭載したクモ型ロボット「Mondo Spider」を開発したり、ガソリンを入れるドラム缶を積み上げて巨大なシリンジに見立て、それを自動車のエンジンルームに突き立てたりするなど、“エンジニアとアートを組み合わせたツール”を使って活動することがポリシーのようだ。

排気ガス・ゼロ運動? ドラム缶で作った巨大なシリンジが、エンジンルームに突き刺さっている
Solid Worksを使って設計された「Mondo Spider」。クモ型ロボットの第1号は、がらくたや廃材で作っていたが(ゴミ・ゼロ運動?)、「SolidWorksを使ってちゃんと設計してみよう」と思い立ったらしい
8本の足で動き回るMondo Spider。「開発チームのメンバー以外は操縦してはいけない」というルールがあるのだとか。
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