VR/ARが描くモノづくりのミライ 特集

VRの世界を中小企業にも届ける! 「3次元データの中を自由に動き回ろう」HMDによる設計者向け新サービス

3次元データの中に入り込んだような体験ができる、製造業向けのVRサービスが登場した。従来、非常に高価だったサービスを廉価で提供するという。

» 2014年01月30日 18時00分 公開
[小林由美MONOist]

 製造業向けに3次元データ活用コンサルティングを提供するプロノハーツは2014年1月30日、VRヘッドマウントディスプレー(HMD)による3次元CADデザインレビューコンテンツ作成サービスを開始する。

 従来は、PCのディスプレーを通してCAD空間という“箱の中”にある3次元モデルを外から眺めるしかなかったが、このサービスによりCAD空間に自分自身が入り込んだようなデザインレビューが可能となる。

 このサービスで使用する「OculusRift(オキュラスリフト)」は、広い視野角を持つ3Dステレオ立体視に対応したHMD。ディスプレー装着者の頭の向きを認識することで、CG空間の中の自分の立ち位置を決める仕組みだ。2012年にKickstarterに登場し、短期間で約243万ドルの寄付を集めたプロジェクトだった。

HMDを装着する
コントロールしている様子

 このサービスでは、実寸に近い3次元CADモデルを、コントローラーもしくはPC用アナログジョイスティックコントローラーなどを用いて回転、視点移動しながら確認できる。

 また、製品を100倍以上に拡大した3次元モデルや、プラントなど大規模設備の3次元モデルの中を、PC用アナログジョイスティックコントローラーを使い、歩き回りながら、頭を動かして自由に見回せる。後ろを振り返ることも可能だ。

スケールを約100倍にした3Dプリンタの中を探検!(操作中のPC画面画像):HMD越しに見える画像は、写真に収められない……。実際見えるのは“3次元データそのもの”

 3次元CADでは洗い出せない箇所はもちろん、試作品で見えづらい、あるいは見えない箇所の検証も可能となる。3次元CADの場合は、いくつも断面を切って内部を確認するが、完全には問題を洗い出せないし、操作も面倒だ。今回のサービスであれば、“モデルの中をのぞくだけ”なので、そういった細部の確認を直感的に行える。

 製造業向けで同様なVRのシステムは以前から存在したが、非常に高価だった。同社のサービスは廉価で、中小企業でも手が届く価格に留めた。

 OculusRiftは、現在「開発者向けキット」(HMDとソフトウェアなど含む)として流通しているもの(正式な製品版は、2014年秋に販売開始予定)を利用し、こちらの価格は3万円程度。OculusRift一式とコントローラーと併せて、5万円程度でそろえられる。ただしOculusRiftについては現在、海外から輸入するしかない。購入方法などの相談もプロノハーツで受ける。OculusRiftの貸し出しも実施する予定だ。

 またプロノハーツでは、3次元CADデータを受け取り、コンテンツの実行プログラム作成までのプロセスを12万円〜で請け負う。各種カスタマイズ、OculusRiftなどシステム一式納品・サポートなどは別途見積もりとなる。

 コンテンツ作成については、自力でも不可能ではないものの、3次元CADデータについての専門知識が必要である。プログラミングと3次元CADデータの知識がある専門家が作成するのが現実的ではあるようだ。「将来、3次元CADデータをゲームエンジン向けのポリゴンデータに自動変換できるようなソフトが登場すれば、もっと可能性が広がるだろう」とプロノハーツの早稲田治慶氏は述べている。

 従来、OculusRiftはゲーム用途では既に幅広く応用されてきたが、標準的な開発環境で対応できる3次元データがカラーUVテクスチャ付きポリゴンモデルに限られていたことから、設計用の3次元CADデータを利用できる手段がなかった。

 プロノハーツでは3次元データの「STEP AP214」などを3Dコンテンツ開発環境にインポートし、ゲーム用コントローラーなどで視点の移動、回転などの操作が可能なコンテンツを作成するワークフローを確立した。早稲田氏がOculusRiftの実機を初めて見たのが2013年夏頃。「3次元CADのデータで利用できないか」と開発を開始し、約半年ほどでリリースとなった。

 HMDのサービスは、文字や画像で説明するのが困難である。プロノハーツでは、コワーキングスペース「MONO」(東京都江東区)で、定期的なデモも実施予定だという。

編集部からお知らせ:審査員に水野操さん

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