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» 2014年01月31日 11時00分 公開

車両デザイン:「KOPEN」はモノづくりの新しい仕組みのアイコンとなるのか(前編) (2/2)

[林田浩一/林田浩一事務所,MONOist]
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“着せ替え”は最大の売りではない……けれども

 とはいえ、骨格+樹脂外板という構造によって、着せ替えのようなボディバリエーションの拡大が可能になっていることが、KOPENの最大の特徴であるのは間違いない。

 ただ和田氏によると、「着せ替え自体が最大の売りだとは考えていない」とのこと。では、“着せ替え”に何を期待しているのかというと、クルマを楽しいと思うようになる最初のきっかけとしてだという。「最近はクルマで走ることが楽しいからという理由でディーラーに来る人が少ない。そこで、『着せ替えができることは面白そうだ』という観点から興味を持ってもらってディーラーに来店していただき、そこで実際に乗ってみたら『楽しい』という気付きにつながり、クルマファン、ダイハツファンになってもらえれば」(同氏)。

ダイハツの和田氏 ダイハツの和田氏

 そう、クルマは“乗ってナンボ”のもの。特に、オープンカーのような趣味性の強いクルマの楽しさは、乗らなきゃ分からない(オープンカーに乗ったことがない方は、レンタカーの「マツダ・ロードスター」でもいいので一度乗ってみることをお勧めします。今の季節(冬)なら、ヒーターをガンガンに掛けながらオープンにして走らせると、自然と笑顔になること請け合いです)。

 東京モーターショー2013の開催期間中も、“着せ替えができるクルマ”ということで興味をもってブースにとどまる人が多かったそうだ。和田氏が、「マニアのためのスポーツカーではなく、楽しさの価値観を広げたい」と語るように、KOPENは走りを追求するスポーツカー像を全面に押し出したクルマではない。そういった意味では、ホンダが2015年の発売を予定している軽オープンスポーツカー「S660」とは重ならないユーザー像が想像できる。

「東京モーターショー2013」における「KOPEN」の着せ替えの様子(クリックで拡大)

余白のあるモノづくり

 そして“着せ替えができるクルマ”以上に注目されるのは、東京モーターショー2013のプレスカンファレンスにおいて、ボディの着せ替えに用いる樹脂外板のデータを、メーカーであるダイハツ自身が公開すると宣言したことである。東京モーターショー2013での説明では、KOPENを盛り上げるためにアフターパーツメーカーを積極的に巻き込んでいく呼び掛けのようにも感じられたが、それは一面でしかない。

 この宣言は、メーカーだけが完成品を作って供給するという、これまで常識と思われていたことを否定した瞬間でもある。

 メーカーから送り出されたクルマが、ユーザーによっては必ずしも完成品ではなく、メーカー側も最初からそれを織り込んでいる。ユーザー自身やユーザーのために誰かがひと手間加えることで完成する。従来のクルマにはなかった、新たな「余白のあるモノづくり」の萌芽と言ってもいいだろう。

 「公開されるデータの範囲がどこまでなのか」とか、「メーカー側としてどこまでサポートするのか」とか、細かい話はいろいろある。けれども、従来の自動車メーカーのモノづくりにおいて、一般ユーザーに向けて行うことがなかった考えである。これを実行に移そうとしているというのは画期的なことだ。

 外板を自由に交換できるという余白によって、外部のクリエーションを取り込むことができる。これでユーザーにとっての価値がさらに上がるのであれば、メーカー側にとっても悪いことではない。和田氏は「十人十色」と表現していたが、軽自動車でも、セミオーダーメイドのクルマを提供できる可能性が出てきたことになる。もちろん、仕組みの設計と運用が、ユーザーやクリエーションにかかわろうとする人たちの感情と上手くシンクロする必要はあるが。

 KOPENの開発責任者である藤下氏からは、「アフターパーツメーカーというよりもクリエーターを巻き込みたい」という発言が聞かれた。「モノづくりそのものを根底から変えられるのではないか?」と。今回のコンセプトカーの正式名称を「KOPEN Future Included」としているのは、その思いが込められているからだ。

 KOPENはクルマでもあるけれども、新しいモノづくりの仕組みへの素材でもあるのだ。

 ユーザーやクリエーターを巻き込み、いろいろな人々の創造力を取り込む。そんな仕組みを作っていくというダイハツからの問いかけに対し、世の中からどのような反応が起きるのか、藤下氏や和田氏はニヤリとしながら様子をうかがっているのかもしれない(その藤下氏、名刺交換させていただいた時はスーツ姿だったが、トークショーの時は、「Design&Drive YOURS」と書かれたTシャツ姿で登場し、「自分のために考えて作ったクルマで楽しむ仲間にならないかい?」と呼び掛けているようだった)。

トークショーに登壇したKOPEN開発責任者の藤下修氏(左)と和田氏 トークショーに登壇したKOPEN開発責任者の藤下修氏(左)と和田氏


 後編では、KOPENの新たな取り組みや、ボディに関する情報をメーカー自身が一般公開することによって、自動車業界のモノづくりがどのように変わっていくかについて論じる予定である。

Profile

林田浩一(はやしだ こういち)

デザインディレクター/プロダクトデザイナー。自動車メーカーでのデザイナー、コンサルティング会社でのマーケティングコンサルタントなどを経て、2005年よりデザイナーとしてのモノづくり、企業がデザインを使いこなす視点からの商品開発、事業戦略支援、新規事業開発支援などの領域で活動中。ときにはデザイナーだったり、ときはコンサルタントだったり……基本的に黒子。2010年には異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。最近は中小企業が受託開発から自社オリジナル商品を自主開発していく、新規事業立上げ支援の業務なども増えている。ウェブサイト/ブログ誠ブログ「デザイン、マーケティング、ブランドと“ナントカ”は使いよう。」などでも情報を発信中。



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