水深8000mに負けない国産ガラス球――世界初、超深海4Kカメラ撮影を成功に導く深海探査技術

海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、大深度用小型無人探査機「ABISMO」を用いたマリアナ海溝での調査において、水深7900mでの4Kカメラ映像の撮影に成功したことを発表。「4Kカメラが超深海の様子を捉えたのは今回が世界初」だという。

» 2014年02月03日 14時29分 公開
[八木沢篤,MONOist]
JAMSTEC

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)は2014年1月30日、大深度用小型無人探査機「ABISMO」を用いたマリアナ海溝での調査において、水深7900mでの4Kカメラ映像の撮影に成功したことを発表した。「4Kカメラが超深海の様子を捉えたのは今回が世界初」(JAMSTEC)だという。

 撮影に用いられたのは、JAMSTECが開発した「マルチ4Kカメラシステム」である。水深8000mの圧力に耐えられる国産13インチガラス球の中に市販の4Kカメラ(画素数:3840x2160)、制御基板、電源用バッテリーなどが収められている。ガラス球は、岡本硝子が開発したもので、フリーフォール型深海探査シャトルビークル「江戸っ子1号」にも使用されている(関連記事:下町中小企業が深海探査に挑戦、「江戸っ子1号」プロジェクト本格始動)。

ガラス球(封入前)4Kカメラシステム(黄色の球体) 4Kカメラと制御基板などを組み込んだガラス球(封入前)/「ABISMO」ビークルに取り付けられた4Kカメラシステム(黄色の球体) ※画像クリックで拡大表示

 本システムは、外部からの電源供給や複雑な制御を必要としない独立したシステムとして設計されている。制御回路との通信には、無線通信(Wi-Fi)が用いられ、コネクタやケーブルなどによる探査機との直接接続が一切不要だ。そのため、通信ケーブルやマニピュレータを持たない自律型無人探査機(AUV)や海底地震計(OBS)をはじめとする、さまざまな探査機や観測装置に取り付けることが可能だという。また、撮影された映像は、本システム自身に記録されるため、船舶側に光ファイバー通信設備など、特別な受信設備を持つ必要がない。

マルチ4Kカメラシステムの搭載可能機器 「マルチ4Kカメラシステム」の搭載可能機器。Wi-Fi通信による独立したシステムのため、さまざまなタイプの探査機・観測機器に搭載可能

 今後はガラス球以外の小型容器などにも格納できるよう、システムのさらなる小型化を図り、カメラ機能の拡張による性能向上を目指して、研究開発に取り組んでいく予定だという。

動画1 次世代カメラシステム(4K)による超深海映像の撮影に成功

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