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» 2014年03月14日 10時40分 公開

レイコ先生の「明日から使える! コミュニケーションスキル」(1):口ベタな人こそ身に付けたいコーチング【その1】 (3/3)

[小山新太/MPA所属 中小企業診断士,MONOist]
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耳、目、心で聴く

 誰しもが、毎日、当たり前のように人の話を聞いていますが、そのほとんどが、相手の声や言葉がただ耳に入っている状態でしょう。コーチングにおける「きく」という行為は、これとは全く違います。上述の「きく」を「聞く」と表すなら、コーチングの場合は「聴く」と表せます。「聴」の字には、「耳」「目」「心」が含まれますので、その字のごとく、「耳と目と心できく」のがコーチングにおける聴く(傾聴)の基本です。

 「耳と目と心できく」の具体的なポイントは以下の3つです。

図2 耳、目、心できく

 他にも、傾聴における3つのタブーがあります。これらは、相手に話をしてもらうための信頼関係づくりにおいて大切なポイントとなります。

1.相手の話を遮らない

 人の話を聴くというのは非常に体力がいることです。そのため、相手が変なことを言っていると感じた瞬間からその話を聴くのを苦痛に感じることが誰にでもあります。上司と部下では、上司の方が力関係が上のことが多いので「その話は、今、関係ないだろう!」とつい話を遮ってしまうことも。もちろん、的外れな話をする部下にも悪い面もありますが、話を遮られる経験ばかりしてしまうと、部下は「自分の話を聞いてくれない」と感じてしまい、次第にコミュニケーション回数が減っていきます。そうなると、相手の能力や可能性を最大限引き出すことは難しくなります。まずは、どんな話でも最後まで聴くという姿勢が相手との信頼関係を築くはじめの一歩です。

2.相手の話題を取らない

 おしゃべりな人にありがちですが、相手が話をしている時に自分の関心があるテーマになると、つい相手の話題を取ってしまい、自分がしゃべる側に回ってしまうことも。話を盛り上げるためによかれと思っても、話題を取られてしまった方はよい気はしません。

3.相手の意見を否定しない

 一通り話が聴けても、その後の対応が悪いとそれまでの頑張りが台無しです。悪い対応とは「相手の意見を否定する」こと。ここでいう否定とは、頭ごなしに否定するという意味で、反対意見があってもそれを伝えないということではありません。

 具体的には、人の話を聞いた後に「でも」「だって」「どうせ」「だけど」など「D」で始まる言葉を反射的に使っている人は注意が必要です。恐らく本人は、あまり意識をしていないでしょうが、話した方は自分の意見を否定されたと感じます。毎回のように否定的な反応をする相手には、誰でも話をしたくなくなるものです。

信頼関係を築くための承認のスキル

 コーチングおいて相手との信頼関係を築くことはとても大切です。それでは、信頼関係を築くためには何をすればよいのでしょう? 信頼関係を築くために必要なのが承認のスキルです。

 承認とは「相手の存在を認める」ことです。有名な「マズローの欲求5段階説」では、自己実現欲求の下に尊厳欲求があります。尊厳欲求とは、他者から認められたい、尊敬されたいという欲求です。つまり、自分の能力を最大限発揮したいという自己実現欲求が高まるためには、その前に他者に認められたいという欲求が満たされる必要があります。

図3 マズローの欲求5段階説

 コーチングは「相手が本来持っている能力や可能性を最大限に発揮させること(=自己実現)」です。承認のスキルはコーチングの土台となるスキルであることが分かるでしょう。

 承認のスキルを一言で表すと「相手をよく見る」こと。そして、「きちんと認めている」ということを言葉に出して相手に伝えることです。何だ簡単じゃないかと思うかもしれませんが、相手をよく見るということは難しいことです。例えば、家族や職場の同僚が、昨日はどんな服装だったか思い出してみてください。恐らく思い出せない人がほとんどでしょう。やはり、人間は「自分が見たいものしか見ていない」ということなのです。

 承認には3つの種類があります。それぞれに共通していることは「あなたのことをしっかりと見ていますよ」というメッセージを行為で示すことで、相手に安心感を与えて、信頼関係を構築していく効果があるということです。

1.存在の承認

 承認のスキルのうち基本となるのが「存在の承認」、相手の存在を承認することです。身近な例を挙げると「あいさつ」です。「おはよう」「お疲れさま」といった何気ないあいさつを交わすだけでも「あなたのことを認めています」というメッセージは伝わります。

 職場の同僚や部下に「おはよう」と声をかけられた時、読者の皆さんは、PCの画面を眺めながら「おはよう」と言葉を返していませんか? これでは、相手の存在を認めたことにはなりません。相手の目を見て、あいさつを交わすことでお互いの存在を認め合えるのです。

 その他にも、「ありがとう」や「助かりました」など感謝の言葉を伝えることも相手の存在を認めることにつながります。上司の立場からすると「仕事なのだからやって当たり前」という考えが先行しがちですが、部下が日々のルーチンワークをしっかりとこなしていてくれるから、チーム全体の仕事が滞りなく回っているということがあるはずです。そのような仕事に対して「いつもありがとう」「とても助けられているよ」と声を掛けることで、部下との信頼関係は深まっていきます。

2.変化の承認

 「変化の承認」とは、相手の小さな成長や変化に気が付き、その事実をそのまま伝えることです。成長や変化といっても、仕事上での成果である必要はありません。例を挙げると「何かよいことでもあったかい? いつもより張り切っているようだね」「いつもとやり方を変えてみたんだ」「手帳を新しくしたんだ」といったように「褒める」というよりも「事実」をそのまま伝えることです。

 自分が料理を作る際に、いつもとはほんの少し味付けを変えたとします。そのことに気がついて「お、いつもと味付け変えたね」と声をかけられたら、どのような気分になるでしょう?「私のことを見てくれているな」と感じませんか。何気ない変化に気がついてあげれば「あなたことをしっかりと見ていますよ」というメッセージを伝えることができます。

3.成果の承認

 成果の承認とは「褒める」ことです。「以前よりも仕事のスピードがあがったね」「今日のプレゼンは、とても良かったよ」「○○の件、よく受注できたね」といったように、相手が何かを成し遂げたことを褒めることにより意欲の向上やさらなる成長を促します。

 仕事の成果を出していない相手の場合はどうするのか? と思うかもしれませんが、ここでいう成果には大小は関係ありません。相手が成果と感じていないような小さなことでも、成果として承認すれば相手には「しっかりと見てくれている」というメッセージは伝わります。

 たとえ結果が出なかったとしても、その過程を褒めてもよいのです。「結果としては残念だけど、○○さんの取り組む姿勢はとても良かったよ」「期待した結果は出なかったけど、○○の面ではとても成長したよ」と声をかけることで「次も頑張ろう」という前向きな姿勢を生むことができます。

 褒めるところが1つもないという相手はいません。人間はついつい欠けていることに目が行きがちです。認めるということは、「相手の良い所を心に留める」ということです。一人一人の持ち味や長所をしっかりと伸ばすには、相手をしっかりと観察し、変化や成果を見逃さないようにすることが大切です。

レ

どう? コーチングを実践できるイメージがわいてきた?


カ

はい! 何だかすぐにでも実践したくなってきました。早速、新入社員とのコミュニケーション活用してみます。――あ、いけない! 大切な打ち合わせがあるのを忘れてました。レイコ先生ありがとございます。それでは失礼します〜!


レ

ちょっと!? カズ君? 待って〜! まだ話は終わってないのよぉ〜! ……ああ、そうやってあなたも私も置いてけぼりにするのね……グスングスン……。


 今回は、コーチングの概要と基本スキルである「質問」「傾聴」「承認」について解説しました。コミュニケーションがウマいというと「話がウマい」「話が面白い」というイメージが強いでしょうが、コミュニケーションにおいて「話す」という行為はほんの一部です。口ベタで、人前で話すのが苦手と感じている人でも、今回解説した「質問」「傾聴」「承認」といったスキルを活用することで、相手のコミュニケーションを大きく向上させられます。

 レイコ先生は、まだ何か伝えようとしていましたが、カズ君は今回学んだことを実践で生かせるのでしょうか? 次回はコーチングを実践する上で陥りやすい失敗例やその対応方法について解説します。

参考文献

  • 「入門ビジネスコーチング」(本間正人著、PHP研究所)
  • 「図解 部下を伸ばすコーチング」(榎本英剛著、PHP研究所)
  • 「コーチングの技術」(株式会社ヒューマンバリュー著、オーエス出版社)
  • 「ケーススタディで学ぶ コーチングに強くなる本」(本間正人著、PHP文庫)

Profile

小山新太(こやまあらた)

MPA所属 中小企業診断士。販売促進やマーケティング、コミュニケーションスキルを専門とし、中小企業支援やセミナー講師などを行っている。



MPAについて

「MPA」は総勢70人以上の中小企業診断士の集団です。MPAとは、Mission(使命感を持って)・Passion(情熱的に)・Action(行動する)の頭文字を取ったもので、理念をそのまま名称にしています。「中小零細企業を元気にする!」という強い使命感を持ったメンバーが、中小零細企業とその社長、社員のために情熱を持って接し、しっかりコミュニケーションを取りながら実際に行動しています。

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