3年目のナントカ。「春のおばかモノづくり祭」エイプリルフールだから技術の無駄遣い(5/5 ページ)

» 2014年04月01日 00時00分 公開
[小林由美,MONOist]
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【コラボ】IT屋×メカ屋「コマ狂の詩(うた)」

 今や家電や自動車はメカだけでは成り立たず、ITが欠かせません。そんな中、製造業ではいかにうまく「メカ・エレ・ソフト連携」をやるかが課題となっています。というわけで、今回紹介するのは、メカ屋さんとIT屋さんによるコラボ作品です。

 「全日本製造業コマ大戦」(関連記事:「僕らはどうしてコマ大戦をやるのか」)で度々お見掛けするメカ設計者 中原健司さん(タカノ)は、業務外で「コマ大戦で勝てるコマ」の開発に心血を惜しみなく注ぎ続けている方です。設計技術はもちろん、タグチメソッドや3次元モーション解析など中原さんが持つ技術をふんだんに駆使してきました(本当です)。そのかいあって、中原さんが関わったチームは何度か優勝しています。

コマを作るためにL18直行表までこしらえました
緻密な解析もしました

 というわけで、今回の作品もコマ大戦関係です。アナログっぽいコマの世界ですが、やはりそこにもデジタルの波がやってきているようです。今回、ソフトウェアが絡むシステムということで、日本コンピュータ開発のエンジニア 藤原拓也さんとのコラボになりました。

(左)タカノの中原健司さん、(右)日本コンピュータ開発の藤原拓也さん

 2人のコラボ作品「ケンカコマ検証キット・ハイパー」は、コマ大戦で勝利を収めるための(ついでにタグチメソッドが学べる)ハイパーソリューションです。

コマ実験セットとコマ回し機の試作品

コマ回し機(完成品)

 このシステムでは、PC上でコマ大戦仕様のコマをバーチャルに設計し、対戦まで含めた動作結果がシミュレーションできます。中原さんが開発した、パーツの組み合わせで約20万通りのコマが作れる「コマ実験セット」と回転数が正確にコントロールできる「コマ回し機」と併せて使います。実験とシミュレーションの合わせ込みができるというわけですね! 解析結果は過信してはならないもの。実験の経験は不可欠なのです!

コマ実験セット付属のコマ

 シミュレータは藤原さんが開発。開発環境は「Unity」。「実は、コマのような精密な動作を演算・表示するためには適していないんです」(藤原さん)。え? じゃあ、どうしてUnityにしてしまったのか? その理由については、「マリオみたいなアクションゲームやブロック崩しが簡単に作れるので、じゃー小さいコマ回すくらいなら簡単にいくよね? と軽く考えていた」ということでした。開発がだいぶ進んでから気が付いたので、環境シフトもできず……。物理の勉強をしながら、コマの物理動作は自力でゴリゴリ実装する羽目になったということです。

シミュレータの画面

 開発途中、バーチャルワールドで「コマが土俵をすり抜ける」「コマが土俵上ではねる」「コマをぶつかり合わせたら両方はじけ飛ぶ」といったミラクルな出来事が起こってしまうこともしばしばでした。「今は、現実の動作の約8割の動作再現ができるようになっています」(藤原さん)。

開発風景

 一体、何が2人をここまで突き動かすのか! 技術者の意地か? プライドか!? これからも、職場の人や家族に愛想尽かされない程度に頑張ってくださいね!


【コラボ】デザイナー×町工場「テトラポッドが大好き過ぎて」

 精密加工業のダイショウ 石塚裕さんは、2012年のおばか祭に登場いただいたとき、金属製のテトラポッドミニチュア(メタルテトラ)をコマのように回してくれました。

2012年のおばか祭より

 とにかく石塚さんは、テトラポッドが大好きなんです。ただそれだけのモチベーションで、さまざまなテトラポッドグッズを作り続け、進化させてきました。

やわらかい素材でも作っています

進化し続けるメタルテトラシリーズ

 「最近気が付いたのですが、社会の何の役にも立たないこの存在って、おばか」(石塚さん)。えっ、今さらですか? でもこのテトラポッドグッズ、日本中に散らばるテトラファン(ニッチ層)たちのハートには刺さっているようで、“テトラ友だち”も少しずつ増えてきているみたいです。よかったですね!

(左)ダイショウ 石塚裕さん、(右)西村拓紀さん

 今回は、そんなテトラ友だちの1人、デザイナー西村拓紀さんとのコラボ作品だそうです。「テトラポッドを通じてファンを発掘したり、出会うのが意外と楽しかったりするのですが、今回、西村さんとの出会いがきっかけで、心強い協力者としてメタルテトラを応援してもらうことに至り、今回の作品が実現しました」(石塚さん)。

 ちなみに西村さんはかつてパナソニックに在籍し、ノートPC「Let's NOTE」の筐体デザインなどをしていた方。実はぶっちゃけ、最初はテトラポッドなんて特に興味なかったそうですが、石塚さんと話しているうちに、いつのまにか「毒されてしまった」そうです。今では、目に留まったモノ、人全て、「これがテトラだったらどうなるかな?」「あれがテトラだったらどうなるかな?」と妄想してしまうとのことです。

 さて2人のコラボ作品は、以下の「テトラカップストッカー」です。

「テトラカップストッカー」:デザイン・構成:西村さん 製作・アレンジ: ダイショウ石塚さん

 あれ? 何だかすてきではないですか。インテリアショップに普通に置いてありそうです。

 こちらのテトラカップストッカーは、削り出しの「子テトラ」(小さいメタルテトラ)のコア部品にM3全ねじシャフトを締結、そのシャフトへ「テトラ形プレート(大)・(小)」を連結しています。オールステンレス製です。外寸は、約150mm角です。

 確かに、テトラポッドをわざわざパーツにする必然性って、あまりないですよね。しかもメタルテトラにいたっては、クローズアップしないと使われていることすら分かりません。

 以下のように、4方向にカップ(市販規格の7オンスカップ)を引っ掛けます。

このように使います
いくつも重ねられます

 カップを掛けるとなんだか、“テトラポッド感”が増したではないですか! パステルカラーのカップだと、おしゃれな雰囲気ですね。

 今回の作品と、かつて携わったLet's NOTEとの共通点について、西村さんはこう述べています。「『Form Follows Function 〜形態は機能に従う〜』ということですかね。本質的な価値を追求した結果、その色や形になったという考え方です。そのように出来上がったデザインは取り巻く環境に変化が起きなければ一定の普遍性を持ちますので、しばしばアイコンレベルに到達します」。へ? えっ!? そんなに深いのかっ!? テトラポッド!!!!

 ちなみに4月中に、茅ヶ崎・円蔵工業団地(ダイショウのナワバリ)の皆さんによるバーベキューがあり、早速、紙コップストッカーとしてデビュー予定だそうです。

関連リンク:
ダイショウ
西村拓紀デザイン

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 今年も最後までお付き合いいただきありがとうございました。来年も「おばかモノづくり祭」(あるなら)をどうぞよろしくお願い申し上げます。

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