特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2014年04月04日 11時00分 公開

インダストリー4.0:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】 (4/4)

[川野俊充/ベッコフオートメーション 代表取締役社長,MONOist]
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キーワードは「一品物」×「標準化」

 こうしたドイツでの情勢を見て「『Industrie 4.0』の取り組みを参考に日本でも『スマート工場』を実現しよう。政府も産業にこうした思い切った投資をすべきだ」というのはやや短絡的だ。

 スマート工場の実証や構築は、既に日本でも何年も前から実践されている。また、政府もさまざまな助成プログラムなどを行い、産業の活性化を後押ししているからだ。日本の先進的なユーザー企業は「もうやっている」、日本の機器メーカーは「それができるソリューションがある」、日本の省庁は「かなりの投資をしてきた」と胸を張るだろう。

 私のボスのHans Beckhoffは当初「『Industrie 4.0』というキーワードは単に古いワインを新しいボトルに入れたようなものだ」と表現していたが、2013年に前述の提言書が公開されてからは「これは自動化技術、製造技術、情報技術、通信技術、そしてインターネットの重要な方向性を束ねる良い受け皿になるかもしれない」と意見を変えた。それは「Industrie 4.0」が「標準化」を最重要課題と認識したからだ。

図4 図4:Industrie 4.0を実践する上で解決すべき最も重要な課題は何か?(出典:Final report of the Industrie 4.0 Working Group)(クリックで拡大)

 産業界でドイツが存在感を示す1つの側面はとにかく「標準化」に長けていることにある。PLCプログラミング言語の国際標準IEC 61131-3(PLCopen)は、ドイツ勢のソリューションが主流だ(関連記事:IEC 61131-3とPLCopenの目的とは)。通信で普及しているCANやProfibusやEtherCATは全てドイツ生まれだ(関連記事:いまさら聞けない EtherCAT入門)。

 一方で、日本はとにかく「一品物」に秀でている。スマート工場と銘打たれたモデル工場は欧州に先駆けて実現しているし、日本製の機器は「閉じられたネットワーク」の中では極めて優秀に動作する。日本の助成プログラムは業界や企業規模、適応分野ごとに驚異的な分解能で細分化されている。ただ、これをグローバル展開の原動力として浸透させるのはあまり得意ではないように見える。

図5 図5:ドイツと日本は中小企業が全企業のうち90%以上を占めるという点は共通しているが海外展開の意識は大きな差がある(出典:経済産業省「通商白書2012」)(クリックで拡大)

 ただ、単純に「一品物」を「標準化」する、というのも安易な考えで、標準化競争などを踏まえて考えると、それが「顧客の利益を生み出し市場を育成する」といった建設的な環境を生み出すか疑問が残る。

 確かに両者は対立軸に置くことができる概念ではあるが、もう一歩下がって「一品物」×「標準化」という掛け算で先を見据える視点を持つことが重要だ。すなわち「標準化」や「オープン化」などの観点で、「一品物」をつないだり、組み合わせたりすることで力を磨いていく観点を持つことが「Industrie 4.0」というキーワードから得られるヒントになるのではないかと考えている。


 次回は日米欧の標準規格やオープン技術を活用した「つながる工場・装置」というテーマでこの話を掘り下げていく。(次回につづく


筆者プロフィル

川野氏

川野俊充(かわの・としみつ) ベッコフオートメーション(日本) 代表取締役社長

東京大学理学部 物理学科 卒業、カリフォルニア大学バークレー校 ハース経営大学院経営学修士、慶應義塾大学SFC研究所 上席所員(訪問)。「EtherCAT」開発元のベッコフオートメーションにて、ソフトウェアPLC/NC/CNCのTwinCATによるPC制御ソリューションの普及に努めている。



第4次産業革命は日本の製造業に何をもたらすのか――「インダストリー4.0が指し示す次世代工場の姿」コーナーへ

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ドイツ政府が推進する国家プロジェクト「インダストリー4.0」。その目指すところは、現在よりも一段と高度化した生産システムです。同様のモノづくりのさらなる高度化に向けた取り組みは、米国や日本などでも巻き起ころうとしています。「インダストリー4.0が指し示す次世代工場の姿」特集では、「インダストリー4.0」が目指す姿や標準化の道のりなどを追うとともに、日本で高度な生産方法や生産技術に挑戦する動きを取り上げています。併せてご覧ください。


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