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» 2014年04月09日 11時00分 公開

タイヤは車体よりも先に最適化設計を採用――ブリヂストン事例などMONOistゼミ 2014 レポート(2/3 ページ)

[加藤まどみ,MONOist]

あらゆるところで採用が進む最適化設計

 サイバネットの古市氏は、最適化の手順を分かりやすく示すとともに、最適化ツールを使ったファン形状の検討事例を紹介した。

サイバネットシステム システムCAE事業部 PIDO部 技術グループ 古市洋也氏
図4 最適化の定義

 同氏によると最適化設計はあらゆるところで実施されている。例えば車を例に取ると、車体モデルの複合領域最適化や、モーター制御システムの最適化、テールランプの光学性能の最適設計といったものがある。また設計形状の検討だけでなく、エンジンモデルのキャリブレーションにおいて実験とシミュレーションの差分を小さくしたり、エアコン用コンプレッサの最適な疲労試験条件を逆同定するといった用途にも使われている。

 最適化を実施する場合は、CADで変更した形状データを解析ソフトに読み込んで解析を行い、Excelで目的値を集計した上で別の評価関数を計算するといった作業を何度も繰り返す必要がある。最適化ツールを使えば、この流れを自動化することが可能だ。またツールを使うと最適化アルゴリズムによって自動的に最適な解を求めることができる。結果の分析機能もあるため、どの入力値や出力値がどういった関係になっているかを、統計的なプロットや表によって分かりやすく示すこともできる。

軸流ファンを例に最適化を紹介

 古市氏は、流体解析ツールと最適化ツールを使い、小型軸流ファンの形状の最適化を行った例を紹介した。対象となった軸流ファンはPC内部の冷却などに使われる小型のファンである。流量係数の値が大きいほどファンとしての性能がよいため、流量係数を最大化するような形状を目標とした。

 まず問題を把握するために、設計空間の分析を行った。実験計画法を実施し、応答曲面法を行う。「これらを山登りに例えると、実験計画法は測量すること、応答曲面法は地形図を作ることに相当する」(古市氏)。対象問題の特徴が把握できていないのにいきなり本番の最適化(最適化アルゴリズムを使った自動計算)へと入るのは、何の準備もないまま初めての山にやみくもに登るようなものだという。まず測量して地形図を作成することで、どのルートを使えば短時間で登れるのか分かり、結果的に早く頂上にたどり着く確率が高くなるということだ。

 設計変数については6つ設定した。羽根の根元および先端それぞれにおける弦長、取り付け角度、およびそり率である。これらについて制約条件となる上限値、下限値を設定した(図5)。

図5 小型軸流ファンの最適設計について

 寄与度図によって、それぞれの設計変数が流量係数に対してどのくらいの影響を持っているのかを確認できる(図6)。

図6 寄与度図と3次元プロット

 図6右上のグラフによると、翼の先端の取り付け角度が最も寄与の大きいことが分かる。また応答曲面モデル図6右下では、X、Y軸に特に寄与度が高い設計変数2つを設定し、Z軸に流量係数を示しており、流量係数が変数によってどのように変わるかを視覚的に把握することができる。こういった事前に行う設計空間の分析は、あとの最適化によって得られた解が妥当であるかの確認にも使うことができる。

 続いてこれらの分析を基にして、最適化アルゴリズムを適用して最適解を求めた。最適化アルゴリズムにはEGO(Efficcient Grobal Optimization)を使った。EGOはできるだけ少ない計算回数で最適解を出す場合によく使われるという。最適化を行った結果、初期設計と比べて流量係数が約43%向上するという結果を示した。

流体と構造による複合領域最適化

 一方、実際の製品に適用するためには、流量だけでなく例えば強度についても考えなければならない。そこで必要になるのが構造解析との連携だ。つまり複合領域にまたがる最適化である。そこで古市氏は、流体解析の結果から圧力データを取り出して構造解析ツールの境界条件に受け渡し、流体と構造解析の両方の結果を合わせ込んだ最適化を実施した例も紹介した。CADは「CATIA V5」、流体解析ツールは「SCRYU/Tetra」、最適化ツールは「Optimus」を使用している。最適化の手順は、CADでの形状変更、流体解析ツールへのデータのインポート、流体解析ツールでの解析設定、および実行、結果からの圧力データの取り出し、構造解析ツールへのインポート、そして構造解析ツールでの解析設定、解析実行を経て、またCADを用いるという繰り返しになる。最適化ツールを用いることで、これらの繰り返し作業を全て自動化可能だ。

 古市氏は同じ小型軸流ファンに対し、流体解析と構造解析の解析結果を基にして流量係数と最大応力に着目した最適化を紹介した。まず最適計画法を基にサンプリングを行い応答曲面モデルの作成により、流量係数だけでなく最大応力についても、翼端取り付け角度の寄与度が高いことが分かった。目標は流量係数が大きくかつ最大応力が小さくなることである。そこで出力値空間における散布図でこれらの関係をプロットし、分析した。グラフでいえば右肩下がりが理想だが、分布は図7のように右肩上がりだった。そのため流量係数と応力はトレードオフの関係にあることが分かる。

図7 パラメータスタディ

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