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» 2014年04月14日 10時00分 公開

いまさら聞けない産業用ロボット入門〔後編〕産業用機器 基礎解説(3/4 ページ)

[小平 紀生/日本ロボット学会 会長/三菱電機,MONOist]

日本で目指すべき”高度な自動化”とは

 現在の産業用ロボットの市場規模は、日本が年間10万台、世界全体でも16万台です。自動化を象徴する生産財として期待されるわりには少ない規模だといえます。それにはロボットの利用範囲が限定されていたということがあります。現在ロボットによる自動化が定着している現場は、自動車工場や電気機器工場などにおける、ロボット化が容易な作業がほとんどです。従来ロボット化が難しかった「高度な自動化はまだこれから」と見るべきでしょう。

 一方で、日本の大手企業には製造の国内回帰を指向する動きも広がってきました。単に円の為替レート変化に応じた動きというよりは、本質的な国際競争力を求める健全な判断と思います。日本の製造業にとって、これまで技術的に難しくて見送ってきたさらに高度な自動化にロボットメーカー、システムインテグレーター、エンドユーザーが一体となってチャレンジする良い機会が生まれたように思います。

 組み立てや加工作業のロボット化への期待は大きいものの、作業が多様である上、作業条件も多岐にわたるため、技術的に難しく実現が難しい用途となっています。現状では、組み立てや加工用途でのロボットの使い方は部品のハンドリングが中心です。ロボットがコネクタを挿入したり、工具を保持して直接加工を行うようなシステムや、組み立てセル生産のようにロボットがさまざまな作業をこなすシステムなどの稼働例は、多くはありません。

 目的とする作業を実現するための技術的な難しさもさることながら、個別のニーズに対応するための設計から立ち上げ調整に至るまでに手間が掛かります。その後の安定した稼働を維持するための管理コストも含むとシステムインテグレーションコストが過大になることも障壁となっています。最近のロボット業界は、機能性能の向上のみならずシステムインテグレーションをしやすくするための機能やオプションに注力するようなシステム指向が強くなっています。「どんなロボットをどう使えばどんな優れたシステムができるか」。ロボットメーカー、システムインテグレーター、エンドユーザーが一体となった課題解決活動は、日本の製造業の強みとして期待したいと思います。

ロボット産業に求められる競争力の源泉とは?

 ロボット産業は成長を続けていますが、需要が増える分野では競争も激しくなるのは必然的なことです。ここ10年くらいの間に、中国・韓国・台湾の各国オリジナル産業用ロボットが登場し、徐々に普及が進んでいます。一般的に機械製品の多くは、見よう見まねで作ってみると70%くらいまでは何とかできるといわれています。既に現在の中国製ロボットはこのレベルに達しているといえます。日本製ロボットとの差となっている「残りの30%」の競争力の根源は「キーパーツや材料を使いこなすための目に見えない技術」「目的に合った動作を実現する制御技術や補償技術」「製品開発管理技術」などです。

 競争力の根源をもう少し具体化するためにもう少し説明を加えます。「産業用ロボットには総合技術力が必要である」といわれますが、「総合技術力」とは一体何なのでしょうか。

 ロボットは図13にまとめたように、機械技術と電気電子技術、制御技術と情報処理技術を集大成した典型的なメカトロ製品です。

図13 図13:製造業用ロボットの基本技術構成(クリックで拡大)

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