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» 2014年05月14日 10時00分 公開

レイコ先生の「明日から使える! コミュニケーションスキル」(3):目指せ仕切り上手! 会議が変わるファシリテーション(その1) (2/3)

[小山新太/MPA所属 中小企業診断士,MONOist]

場づくり:いきなり議論を始めてはいけない

 「さあ、会議を始めるぞ!」と気持ちを高めることは大切ですが、いきなり中身の議論に入ってはいけません。会議も料理と同じで、はじめの下ごしらえにひと手間掛けるかどうかで、最終的な成果が大きく変わってきます。

 まずやるべきことは「場の雰囲気」を整えることです。会議の開始直後、参加者の心理状態はバラバラです。忙しくて心ここにあらずという人や、緊張している人、あまり乗り気ではない人など、どちらかというとその会議に対してネガティブな心理状態でいる人が多いでしょう。そのため、そのまま会議を始めてしまっては上手くいくはずもありません。参加意識を高めて参加者を巻き込んでいくことが必要なのです。

 場の雰囲気を整えることに使えるのが「アイスブレイク」です。アイスブレイクとは、緊張を解きほぐしたり、コミュニケーションを取りやすくしたりすることで、さまざまな手法が存在します。ここでは2つのアイスブレイクを紹介します。

緊張をときほぐす「一言チェックイン」

 重要な会議で、参加者のほとんどが緊張した面持ちだった場合、そのまま始めてしまっては自由闊達(かったつ)な意見が出ない可能性があるため、緊張から開放してリラックスした雰囲気を作ることが必要です。そんな時は「一言チェックイン」というアイスブレイクが使えます。

 参加者に現在の気持ちを一言で言ってもらうという単純なものです。「重要な会議なので緊張しています」「ここのところ残業が続いていて疲れ気味です」など、参加者の本音がチラッと垣間見えるだけで、張り詰めていた雰囲気が一変します。もし、気持ちを表現するのに抵抗がありそうな場合は「今の気分を色で例えると何色でしょうか?」といった形にアレンジしてみるのもよいでしょう。

やる気と集中力を高める「漢字テスト」

 アイデアを出すための会議で参加者から積極的に意見を引き出したいのに参加者から「めんどくさいな〜」という雰囲気が伝わってくる場合、そんな時は「漢字テスト」というアイスブレイクが使えます。漢字テストとは「魚偏が付いた漢字を1分以内でできるだけたくさん書いてください」といった感じに、ある条件に基づいた漢字をどれくらい書き出せるかというゲーム感覚のアイスブレイクです。ゲーム感覚で行えるため、アタマのウォーミングアップには最適です。参加人数が多い場合は、数名ずつのチームに分けて競争を行うのも良いでしょう。

大事なのは「いきなり議論に入らないこと」

 アイスブレイクといっても、上記のように何か特別なことを行わなければならないというわけではありません。「昨日は、こんなニュースがありましたね」「先週末に、○○の映画を見たんですけど面白かったですよ」など、ファシリテーター自身が簡単なスモールトークを行うだけでも十分です。大切なことは、いきなり議論に入るのでなく、参加者の心理状態に配慮しながらウォーミングアップをしていくことです。

 「場の雰囲気」が整った後にすべきことは、この会議(船)がどこへ向かうのかを示すことです。そのためには、「目的」と「成果物」を参加メンバーにしっかりと提示することが重要です。目的とは、以下のような会議で議論をしたい、「論点」のことです。

  • 「経費削減に向けてできることはないか?」
  • 「新製品の販促キャンペーンで何をすればよいか?」
  • 「残業を減らすために何をすべきか?」

 目的を提示するときのコツとしては、上記のように疑問形にすることです。こうすることで参加意識を高めることにつながります。

 成果物とは、「その会議が終了した時点でどうなっていたいのか?」という「ゴール」のことです。「経費削減の対応案をリストアップする」「販促キャンペーンのアイデアを3つ出す」といったように具体的に設定することがポイントです。多くの会議では、目的はあるものの、成果物が何なのかということが参加者の中で共有されないまま会議が進められるため、「時間をかけて議論したけどあまり成果がなかった」という状態に陥ってしまうのです。

拡散:「グランドルール」と「リフレーミング」で発言をドンドン引き出す

 場の雰囲気を整えて、いざ会議を始めても思ったように発言が出ないことは、残念ながらよくあります。参加者が発言しないのには、「意見はあるが言葉にするのに抵抗がある」(1)、「意見が思い浮かばない」(2)といった理由が考えられます。

 (1)への対応策として有効なのが「グランドルール」です。グランドルールとは、会議の参加者の間で守るべき約束のことです。例えば、他者の発言に対してすぐに揚げ足を取るような発言が多くなりそうな場合は「誰かが発言しているときは、最後まで話を聞く」というルールを設けます。参加者の特性によってどのようなルールを設けるかは変わってきますが、以下のようなルールを作ると、発言に対するハードルが下がり発言しやすい環境が整えられるでしょう。

  • 「必ず1回は発言する」
  • 「相手の非難しない」
  • 「肩書や立場を忘れる」
  • 「楽しく議論する」

 決められたグランドルールは、ホワイトボートなど目に見えるところ書いておくと、会議の間、参加者がグランドルールを忘れることがないので効果的でしょう。

 次に(2)への対応としては、参加者が新たな意見を思い付くように、ファシリテーターが「考え方の枠組み」を提供します。考え方の枠組みを提供するために身に付けたいスキルが「リフレーミング」です。リフレーミングとは、ある物事を認知している枠組みを変えて、違う枠組みから物事を見ることです。例えば、コップに半分水が入っている状態がある場合、もともとは「もう半分しかない」と認知したのに、「まだ半分もある」と認知の枠組みを変えるということです。

 多くの場合、発言が出ずにシーンとした会議の原因は、参加者が同じフレーム(枠組み)で論点を見てしまい行き詰まっていることにあります。そんな時は、ファシリテーターが考え方の枠組みを変えるような問い掛けを行うことで、議論の再活性化を図るのです。

 リフレーミングをするためにはコツとして、以下の3つの観点から参加者に問い掛けすることが挙げられます。

1.枠組みを広げる

 それまでに議論してきた内容を広げることです。以下のように対象範囲を広げてみたり、新しい要素を付加する問い掛けをします。アイデアが煮詰まってしまった時などに効果的です。

  • A地域だけでなく、日本全体で考えたらどうでしょうか?
  • 製品の機能だけでなく、サポートも含めて考えてみたらどうでしょうか?

2.枠組みを絞る

 広げるとは反対に、議論の内容を絞ることです。以下のように対象を細かく分解してみたり、思い切って対象を絞り込むような問い掛けをします。漠然とした議論がなんとなく続いている時などに効果的です。

  • 「品質、サポート、価格の3つに分けて顧客満足度を上げる施策を考えてみてはどうでしょうか?」
  • 「まずは『働くママ』にターゲットを絞って考えてみてはどうでしょうか?」

3.枠組みをシフトさせる

 それまでの議論の内容を変える新しい視点を提供することです。以下のように、異なる立場からの視点や、逆転の発想を促すような問い掛けをします。議論が誤った方向に行っている時などに効果的です。

  • 「お客さまの視点で考えるとこの問題はどう対応するべきでしょうか?」
  • 「女性ではなく、男性にこの商品を売り込むことはできないでしょうか?」

 拡散のプロセスで忘れないようにしたいことは、ホワイトボードなどを使用して参加者の発言を書き留めておくことです。議論が盛り上がってくると、開始当初にどんな発言が出たかを忘れてしまい同じような発言が繰り返し出てしまう可能性があります。参加者が議論の進行状態を目で把握できるようにすることが必要なのです。

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