「いいから黙ってやれ!」じゃダメ! ――ちゃんと議論して、コンセンサスを取ろう甚さんの「コミュニケプレゼン」大特訓(8)(2/3 ページ)

» 2014年05月16日 10時00分 公開
[國井良昌/國井技術士設計事務所(Active Design Office),MONOist]

エリカ先生のインフォームドコンセント

良真

あっ! ひらめいた! 「時代が変わって、指導方法も変わった」でひらめきましたよ!

甚

何をシラめいたんだ? あん? 全くうるせぇヤツだ! 男は黙ってシラめけ!


エリ怒

あ、「男は黙って」って言った……。


良

病院の話を思い出したんです。えっと、正確に言えばお医者さんです。コンセンサスっていうのは、医学用語では「インフォームドコンセント」ですよね?


甚

何コンセント? あん? 俺んちのコンセントはAC100V。うちの工場の旋盤やフライス、マシニングセンタはAC200Vだ。


良

そのコンセントじゃないです……。


 それでは、良君とエリカちゃん(エリカ先生)に実演してもらいましょう。

図1 インフォームドコンセントの実演解説(その1)

 エリカ先生は、病院内の会議で決定した治療方法を患者の良君に説明しています。まず、その治療法の1つである「点滴による抗生剤投与」の長所短所を良君に説明しました。

 次に、一般的に行われる「外科手術」に関しても、その長所短所を説明しました。エリカ先生としては、会議で決定した「良君に最適な外科手術」を施すことで、良君から合意を得ることに十分な説明を実施したのです。

図2 インフォームドコンセントの実演解説(その2)
甚

なかなか、すんばらしい寸劇だったじゃねぇかい。感動したってもんよ。この相互によるコンセンサスがオメェの会社で取れねぇのかい、あん?


良真

やってみるしかないですね〜。


 これはある外資系企業に勤務する若手技術者からヒアリングした話です。アメリカの企業との技術打ち合わせ、そして、相互コンセンサスを得るための会議体を「Work Shop(ワーク・ショップ)」と呼びます。会議に出席したアメリカ人技術者から、何度も注意を受けることは、以下だそうです。

  1. 日本人技術者は、コンセンサスを取ろうとしない
  2. 日本人技術者は、身勝手な行動を取る
  3. 日本人技術者は、そもそもコンセンサスが取れない
  4. 日本人技術者は「No!」と言いたいのに何でも「Yes!」
  5. 日本人技術者は「Yes!」と言ったのにその後の行動なし

 最近は、韓国や中国人の技術者からも指摘されているとのことです。

良

これらの原因は簡単ですよ。英語力がないからでしょ。僕は、富士山麓大学院の主席卒業ですから、英語なんか趣味の世界ですよ。ダテに院卒ではありませんから。


エリ笑

ああ、海外とのやりとりのとき“だけ”は頼りになりますね。


良泣

だけっ!?


甚

いっつも思うんだけどよぉ。英語ぺらぺらなのに、なんで「図面読めねぇ、描けねぇ院卒」なんだよ。


良泣

それをゆっちゃ、おしめぇよぉ!(泣)


 語学力の問題は第2原因です。第1の原因は、コンセンサスを取ろうとしない社会とその慣習、および、技術者教育の欠如です。

エリ笑

国木田さん、素晴らしいわ! お医者さんのインフォームドコンセントの事例で、私たち技術者のコンセンサスの重要性が、十分に理解できたわ!


良良

いや〜照れちゃうな。これも、以前教わった「比喩」の応用だね。ナハハ〜。


 比喩については、甚さんの「コミュニケプレゼン」大特訓(5)を復習しましょう。

甚笑

良君! 今日は、冴えているじゃねぇかい、あん? さすがは、「院卒」だ。実務経験がゼロでも、一度理解したことはしぶとく覚えているんだな。感心、感心!


良

うーむ。ほめられてんのか、けなされてんのか……。


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