TIが誘導型近接センサとホールセンサの市場開拓へ―車載機器市場と産業機器市場に照準

» 2014年07月28日 10時00分 公開
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 磁気センサの1つであるホール効果センサIC。磁石と一緒に使用し磁界の有無や強度を検出するデバイスで、既に極めて広い用途で使われている。代表的な用途は、ノート・パソコンの開閉検出や、冷蔵庫のドアの開閉検出、モーターの回転子(ローター)の位置検出などである。歴史も古く、ホール効果センサICが実用化されたのは1960〜1970年代のことだ。現在では当たり前の一般的な半導体デバイスと言える。(図1)

図1 図1 ホール効果センサICの用途
ブラシレスDCモーターや位置検出センサなどで使われる

要素技術は開発済み

 既に参入済みのメーカーも多いホール効果センサIC市場に、半導体大手のテキサス・インスツルメンツ(TI)が新規参入した。競争が激しい市場にあえて参入した理由は何か。TIによると理由は2つあるという。

 1つは、TIの市場戦略にある。現在TIは、車載用電子機器市場と産業用電子機器市場の開拓に注力している。実際に、こうした市場に向けたマイコン、アナログIC、電源IC、ソフトウェアなどを数多く投入している。その中で「今後ビジネスを拡大していくには、ホール効果センサICの製品化が不可欠」(TI)と判断したからだ。

 もう1つの理由は、すべての要素技術がそろっていたことである。このホール効果センサを開発している製品部では、従来よりモーター駆動の製品を開発しており、ホール効果センサはモーター駆動技術には欠かせないという知見で蓄えられていた。さらに、ホール効果センサICと機能が近い電流検出ICなどの量産で経験も十分だった。

価格競争力を備える

 こうして量産化した最初の製品が「DRV5000」ファミリである。

 出力形式が異なる4製品を投入した。出力形式がバイポーラ・ラッチ型の「DRV5013(図2)と、出力形式が単極スイッチ型の「DRV5023」、出力形式が両極性スイッチ型の「DRV5033」、出力形式がアナログ・バイポーラ型の「DRV5053」である(図3)。電源電圧範囲は+2.5〜38V。逆電圧は最大振幅で−22Vまで、過渡電圧は最大で+40Vまで耐えることが可能だ。感度の誤差は、全動作温度範囲にわたって±10%。動作温度範囲は、車載機器向けが−40〜+125℃、もしくは−40〜+150℃。産業機器向けが−40〜+125℃である。パッケージは、3端子SOT-23と3端子TO-92を用意した。

図2 図2 内部ブロック図
「DRV5013」の内部ブロック図。ホール効果センサやアンプ、出力回路などで構成されている
図3 図3 磁界の検出例

 感度などの基本的な特性は、競合品と同レベルを確保し十分な価格競争力を備えている。今後TIは、電源電圧範囲が最大+40Vの製品や、実装が容易なパッケージ封止品などを用意する予定だ。

 このほか、上記のような性能には現れないが、大きな特長がもう1つある。それは、車載機器向けの製品を最初に投入したことだ(図4)。通常、半導体デバイスは、民生機器向けを投入し、その後に動作温度範囲などを拡張することで産業機器向けや車載機器向けに手を広げていくことが多い。今回発売したホール効果センサICは、自動車に搭載されることを当初から想定し、デバイス設計や製造プロセス開発に取り組んだ。「既存の製品とは、設計思想がまったく違う」(TI)。このため、自動車メーカーが求める品質基準をクリアできるという。

図4 図4 製品ラインアップ
車載機器と産業機器に向けた製品を用意している

「LDC1000」とは棲み分ける

 今回のホール効果センサICは、TIのセンサ製品ファミリの一部を構成することになる。TIは2013年9月に、誘導型近接センサという異なる方式を採用した磁気センサを実現する「LDC1000」インダクタンス/デジタル・コンバータを製品化している。インダクタンス値を直接デジタル値に変換するコンバータICだ。これは、コイルが作る磁界の中に金属/導電体が入るとコイルのインダクタンスが変化することを利用して、物体の有無を検出したり、物体との距離を測定したりするものだ。

 磁界を検出するという点では、まったく同じセンサである。ホール効果センサLDC1000。この2つは、どのように使い分ければいいのか。TIは「使い方は明確に異なる」と指摘する。

 使い分けを考える際のポイントは4つある。1つめは検出精度である。ホール効果センサICは、磁界の有無、すなわちオンとオフを検出する使い方が多い。距離をアナログ的に測定することも可能だが、その精度は「サブmm」にとどまる。一方、LDC1000を使えば「サブμm」と極めて高い精度で距離を測定できる。

 2つめは、ホール効果センサは磁石の使用が不可欠だが、LDC1000は不要なこと。つまりLDC1000は、コイルと金属(導電体)だけでセンサ・システムを構成できる。3つめも、LDC1000のメリットになるが、インダクタンスの変化を検出するコイルとそれをデジタル値に変換するLDC1000を離して実装できることだ。プリント基板のレイアウト設計が大幅に柔軟になる。一方のホール効果センサICは、後段の信号処理ICとの距離をあまり離すことができない。信号が鈍ってしまうからだ。4つめは価格だ。ホール効果センサICは比較的安価だが、LDC1000はそれに比べると高くなる。

 従って、簡単に用途を分けると、LDC1000は、コストは若干高くても構わないが高い精度が求められる用途。ホール効果センサICは、精度は若干低くてもよいがコストを優先する用途に最適である。車載機器における具体例を挙げると、ホール効果センサICは自動車のドアの開閉検出やモーターの位置検出。LDC1000は、アクセルの踏み込み量検出や、シートに座る人が大人か子供かを判別する用途などがある。

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