連載
» 2014年07月30日 10時00分 公開

アップルにあって日系電機メーカーにないものは何か?再生請負人が見る製造業(2)(4/5 ページ)

[小野寺寛/アリックスパートナーズ・アジア ディレクター,MONOist]

2.外部リソースの活用

 日本企業があるべきコスト曲線を獲得するためには、まず内部リソースを徹底的に圧縮して、高コストとなる要素を取り除かなければならない。その一方で、内部リソースよりも低コストでさまざまな機能を提供してくれる外部リソースの活用も積極的に進めていく必要がある。確かに内部化したリソースを活用する方が、コミュニケーションロスはなく、業務はスムーズに進んでいくだろう。また提供されるものの品質も担保されているであろう。しかし、今真剣に内部リソースの外部置換を考えなければ、あるべきコスト曲線を獲得することはできない。

 間接費用の大胆な圧縮ということでも外部リソースの活用(間接部門のアウトソーシング)は有力な手段である。筆者の経験では、アウトソーシングを大胆に行うことのできる企業ほど、本来自社で戦略的に維持しなければならない機能かを真剣に議論している。その真剣な議論の結果、戦略的に維持する必要がないものを大胆にアウトソーシングできるわけだ。逆に「全て戦略的なものだからアウトソーシングできない」と長々とした議論に終始している企業は、本当に戦略的なものとは何かを適切に把握していないということになる。結果として「あれもこれも戦略的だ」と言っている間に全体が沈みこんでいくというわけだ。

 外部リソースの活用は、コストという側面からだけ求められているわけではない。日本のエレクトロニクス企業のイノベーション(革新)は、自社の開発するテクノロジーに依存し過ぎているからだ。それだけ多くの技術のタネを持っているというのは、日本のエレクトロニクス企業の魅力の1つにもなっているのだが、自社開発至上主義では新たなビジネスモデルイノベーションは生まれない。これは、さまざまな統計資料によって明らかにされていることだ。

 イノベーションは、技術というシーズをさまざまに組み合わせて顧客ニーズを満たし、顧客価値を最大化するものである。日本企業のオープンイノベーションの議論の場でよく聞かれるのは「自社の製品、技術をサポートする技術・部品として他社をどう使えばよいのか」ということである。実際に筆者も「既にわが社はオープンイノベーションを採用している」という経営者と話をすることも多いのだが、あくまで自社の製品・技術が主役である場合がほとんどだ。他社は単なるベンダーや補助機関としてしか見ておらず、自社製品のために他社を利用するという考え方だ。

 しかし、他社の技術や部品を「自社」という閉じた世界で最適化させようとすれば当然他社の技術や部品の本来の能力を押さえつけてしまうことになる。結果として組んだ他社と一緒に共倒れになってしまう危険性すらある。こういう方法ではオープンイノベーションは成功しようがない。他社の技術や部品に合わせて自社の技術を変えてしまうような柔軟性、あるいは自社の技術を他社のエコシステムの中で活用し、価値を生み出すという割り切った考え方が必要になる。

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