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» 2014年09月01日 08時00分 公開

現場革新 次の一手:ウェアラブル端末とモノのインターネットは「現場」の救世主となるか?【後編】 (4/4)

[志田穣/クニエ シニアマネージャー,MONOist]
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課題となるセキュリティの問題

 ウェアラブルと、それを活用する基盤となるIoTは、各種機器やセンサーがPCなど含めネットワークとつながった環境を前提としている。先述した通り現在、世界はその方向へ向けて大きく前進しているが、一方で懸念されるのがセキュリティの問題である。

 インターネットとコンピュータのつながりが深まって以来、コンピュータはさまざまな攻撃に晒されるようになった。その結果、現在のPC、情報ネットワークにはそのような攻撃に対する防御策は幾重にも存在し、使う人間の側も多くはセキュリティに関して意識がある。一方、産業用の制御機器などには、作られた年代にもよるが外部ネットワークにつながった状態で作動することを前提としていないものも多い。結果として、外部からの攻撃で脆弱性を突かれるケースが最近多く報告されている。

 最近では、イランの核濃縮施設がサイバー攻撃を受けたケースが最も有名だろう。Stuxnetと呼ばれるこのウイルスは、もともと米国とイスラエルがイランの核施設攻撃用に作成したといわれているが、ネットワーク経由でもUSB経由でも感染する。Windowsのゼロデイ脆弱性を悪用しており、後に配布された修正パッチ無しでは感染を防ぐことは困難であったと見られている。特定のPLCを対象として攻撃するようデザインされ、これによって不正な制御指示を受けた遠心分離器が数多く破壊された(関連記事:制御システムを狙ったマルウェア「Stuxnet」って何?)。

 このように制御システム・情報ネットワークを攻撃から完全に防ぐことは困難であるが、最近は業界団体でもセキュリティに取り組んでいる例も多い。一例として、NECA(日本電機制御機器工業会)では、セキュリティ運用ガイドラインをリリースし、制御システム全体のセキュリティ対策や、関わる人の管理・教育などの指針を示している。IoTの展開の上ではこのような情報・対策を吟味することが重要となる。

既存のものと全く異なるユーザーエクスペリエンス

 スマートグラスなどのウェアラブル端末はその特性上、ユーザーインタフェースが従来のデバイスと大きく異なっている。読者の中にも従来型携帯電話端末からスマートフォンに変えた時、特にフリックの操作性に慣れるまで時間がかかった方も多いのではないだろうか。筆者もその1人で、スマートフォン時代以前には、携帯電話端末において表示画面から入力するなどナンセンスなことと考えていた。スマートグラスのUIはさらに独自のものであり、従来のものとの差異は、PCとスマートフォンとの差より大きいと考えられる(図5)。

photo 図5:ウェアラブル端末のインタフェースの特性(クリックで拡大)

 表示されるテキストは最小限にデザインされなければならない。Google Glassの開発者向けページのデザイン指針においても厳密に指定されている。そのような制限の中で最大限活用されるべきはオンデマンドの情報提供であろう。作業者が移動している場所、近接する機器や部品など環境や状況に応じて、必要な表示を行うことが、既存のデバイスと比べてもさらに重要になると予測される。言い方を変えるなら、よりスマートに、よりインテリジェントなユーザーエクスペリエンスを提供する機器に進化することが求められる。

まとめ

 インターネットやスマートフォンが大きく人々の世界を変えたように、ウェアラブル端末も、大きく人間を取り巻く環境を変える期待を集めている。本稿では生産や保守の現場視点でウェアラブル端末の可能性を取り上げた。工場の中が大きく自動化されたとはいえ、製品によってはまだまだ生産現場における人間の担う役割は大きい。その人間と機器・製品、人間と生産システム、人間同士の距離を、ウェアラブル端末とIoTは大きく縮められることがお分かりいただけたと思う。そのことによって、全く新しい「現場業務エクスペリエンス」が創出されるのではないだろうか。

 筆者は、優れた現場は、決して単調な作業の繰返しではなく、人間の創造力の絶え間ない発現の場と考えている。今後もハードウェア、ソフトウェア、通信技術の進化によって、現場が創造力あふれる世界であり続けることを期待したい。


筆者プロフィル

志田氏

志田穣(しだ・みのる) クニエ シニアマネージャー

大学院工学研究科卒業後、IT企業を経てPLMベンダーに就職。在職中10数年に渡り、製造業(自動車関連、電機精密系)顧客を対象に機械系3次元CADやPLMの販売促進、業務改革コンサルティングを行う。その後株式会社 クニエに転職。PLM領域を中心に製造業を対象としたコンサルティングに従事している。

メールアドレス: shidam@qunie.com(メールの際は「@」は半角文字で)



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