キーワードは“しなやかさ”――上流から下流までデータをつなぐPLMの将来像とは?革新を生み出すPLM【後編】

「エンタープライズ・オープンソース・ビジネスモデル」という革新的なビジネスモデルでPLM市場に新たな波を起こす米国Aras。オープンソースPLMである「Aras Innovator」はオープンソースながら次々と投資を進め、先進的な機能を次々とリリース予定だ。今回はその機能拡張のロードマップをお伝えする。

» 2014年09月10日 10時00分 公開
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モノづくりに関わるデータを全て共有し連携

 CADデータだけでなく、製品情報に関するあらゆるデータを組織横断的につなぎ、最終的にイノベーションへと導いていく──。米国Arasが目指すPLMの姿だ。「イノベーションへ導く仕掛けに! ──アラスジャパンが目指すPLMのカタチとは?」では、Arasの持つビジョンと、これらの思想を具現化するオープンソースPLMソフトウェア「Aras Innovator」について紹介した。本稿ではこれらのビジョンを実現するために進化を重ねるAras Innovatorのロードマップを見ていくことにしよう。

 前回の記事ではPLMは製品情報を中心としたデータモデルで製品開発に関連する全ての関係者が利用者となり、CADデータもメカニカル、電気、ソフトウェアを全て統合することが重要だと紹介した。Aras Innovatorの今後の進化の根幹になるのがこの「データ連携」だ。

 データ連携の基盤としてまず紹介したいのが「CAD to 3DPDFコンバータ」である。これは文字通り、Aras Innovatorに登録されている3D CAD、2D CAD、Microsoft Office、画像、スキャンデータなどのさまざまな種類のデータをPDFに変換し、3D PDFデータと共にサムネイルを自動的に作成しメタデータとして管理する機能だ。

 3D PDFはPDFフォーマットであるためAcrobat Readerがあれば3次元データをビューイングでき、3Dデータ上での測定や赤入れ、マークアップ、注記の挿入、さらには特定のコンポーネントの表示、非表示が行え、断面図表示や寸法計測など一通りのビューワ機能を実現可能している。これまでにもAras InnovatorではOfficeデータのPDF変換機能や3D CADデータPDF機能を提供していたが、今回、電気CADに最適なデータモデルを新たに追加しメカニカルCADだけでなく電気CADデータも含め統合管理し、共通フォーマットでデータを取り扱えるようになることで、上流から下流までの円滑なデータ連携を実現できる。

photo CAD to 3DPDFコンバータを含むAras Innovatorによるデータ連携の姿。マルチCAD対応を推進する。(クリックで拡大)

マルチCAD活用による効果

 一方で、データ連携の点で問題を指摘される「CADベンダーごとのフォーマットの違い」という問題についても対処を進める。アラスジャパンの社長、久次昌彦氏は「単純にCADのデータをAras InnovatorというPLMで管理するだけではなく、マルチフォーマットに対応したいという思いがありました。なぜならば、上流から下流まで全ての部署・組織で同じCADを使っている企業などないからです」と語る。

photo アラスジャパンの社長を務める久次昌彦氏

 例えば、設計部門では複雑な形状を作成するためにハイエンドCADを使っているが、治工具などそれほど複雑な設計を行わない部門ではミッドレンジからローエンドのCADを使っていることが多いのではないだろうか。治工具の設計などでも設計部門で作成された製品の形状が必要なため、設計部門で作成されたCADデータを利用したいがCADフォーマットが異なるため簡単に読み込むことができないといった問題が発生する。

 久次氏は「設計データを読めるようにするために全部門でCADを統一することはナンセンスです。モノづくりの視点に立って業務に最適なツールを選択すべきです。Aras Innovatorでは作業をするツールに縛られることなく設計データを上流から下流までつなげていくためにマルチCAD対応を進めています」。

 既にメカニカルCADのマルチ対応については、主要ベンダーについては対応済みだとしており、電気CADについてもマルチ化を進めるというのが2014年の戦略だ。「使っているCADの種類が違っていても製品設計が途切れなく行えるようになる」と久次氏は語る。

蓄積したCADデータを有効活用

 さらに久次氏はこれらのデータ連携に加え「今後は蓄積したデータをどう再利用していくかが重要です」と強調する。

 そのため、Aras Innovatorで管理されているCADデータやBOMをはじめとする設計情報を有効活用する機能を充実させる。2014年内には、ドイツKisters社の3D ViewStationのOEMとなる「Aras Digital Mockup」をリリース予定だ。「Aras DMUのコアモジュールである3D ViewStationは、オリジナルの3DVSやJT、PRC(3DPDF)など数十のフォーマットに対応するだけでなく、ネイティブCADフォーマットの表示も可能で、自動車1台分のデータも数秒で表示できるパフォーマンスが特徴です」(久次氏)。

 加えて、Office関連のデータも含めて、全工程の誰もが製品に対してフィードバックを行えるようにする。PDF化したデータを後工程の人たちと共有し自由にフィードバックできるようにソーシャルネットワークサービス(SNS)的な機能を2015年までに搭載していく方針だという。2014年末には、CADデータやOfficeドキュメント、イメージ図面などにコメントをつけてPLM内で管理できるようにする「セキュアソーシャル&ビジュアルコラボレーション(SSVC)」がリリース予定である。これにより、3次元画像からオフィス書類、コメント画面までを1つのビュワーを通してコメントやフィードバックなどを蓄積し、ノウハウとして再利用することが可能になる。

 「設計作業はコンテキストで作業が進められています。コンテキストとは文脈と訳されますが、作業のまとまりと考えた方がよいでしょう」と久次氏はコンテキストの価値について強調する。

 「例えばエンジンの設計をしている場合、自分が担当しているエンジンの部品の品番をキーに仕様や図面、解析結果や変更の情報などを見て作業を進めたいと考えます。作業をコンテキストにまとめることで作業の目的が明確になり生産性を高めることができます。一方PLMのようなシステムを使う場合、CAD図面を見たい場合は、CAD図面メニューから品番を入力して検索したり、設計変更の情報を見たい場合は設計変更メニューから品番を検索して情報を探しています。このようにコンテキストでまとまっていないデータを使って作業をした場合、思考が分断されてしまいます」(久次氏)。

 そこでArasではコンテキストに沿った関連データを全て同じ画面からビューイングできるようにしているという。さらに、そのデータをソーシャルネットワークに広げ「簡単に関係者からのフィードバックやアドバイスを残しノウハウとして蓄積し再利用できる仕組みとしてSSVCを開発しました」と久次氏は語る。こうした仕掛けによって、新たなイノベーション創出をサポートしていくという。

 さらに現在、ユーザーと共同開発しているのが「Arasテックパブリケーション」である。これは、PLMで管理されている3D CADデータやメタデータを取り込んで、ドキュメント構造に合わせて技術文書を作成するものである。ユーザーはボタン1つで、世代管理されたデータを基にした技術文書が作成できるようになるという。

 「設計の上流から下流までのデータ連携のためのデータフォーマットとしてPDFを推奨しています。メールやオフィスデータなどを簡単にPDFに変換できたり、3D CADデータもPDFに変換できるからだけではありません。PDFフォーマットは現在唯一Adobe社が100年間参照できることを保証したアーカイブフォーマットだからです。設計データは20年や30年間参照され活用され続けます。どんなに便利な機能を持ったデータフォーマットでも10年後、表示することができなくなっては設計情報としては意味がありません。安心して長期間設計データが使えるように、私たちはPDFを中心にデータを共有する機能を開発しています」(久次氏)。

photo CADデータ有効活用のイメージ図。例えばCADでCATIAを利用している場合でもPDFに変更することでさまざまな用途で活用することができる。(クリックで拡大)

“生きた”部品データをそのまま活用

 さらに、2014年9月にリリース予定なのが「Aras Component Engineering」だ。同ソフトは汎用的な電子部品を管理するツールだ。クラウド・サービス「IHS」から実際の部品のデータをそのまま取り込むことができ、Aras Innovator内に電子部品ライブラリーを作成できるというものだ。実際の部品情報をあらためてPLMに入力する必要がなく、作業負荷を大きく低減することが可能となる。

 「例えば、IHSからダウンロードしてきた化学物質情報を自社の製品情報に組み合わせることで、その製品が海外の規制に合致しているかが瞬時に把握できます。製品サイクルがますます高速になる昨今、生産工程まで進んで設計変更が必要となるといった事態はどこの会社でも避けたいはずです。これらのリスクを下げ、さらに作業効率を高めることができます」と久次氏は語る。

 同機能は幅広い利用形態も想定しており、現在提供方法の検討を進めているところだという。例えば、サブスクリプションがなくてもAras Innovatorを利用できるコミュニティユーザー(無償で利用可能)での利用も検討されている。これらのライトユーザー向けへの機能提供から、さまざまなコスト分析やBOM分析、プッシュ型アラートなどの機能を利用可能な「プレミア」まで、ニーズに応じた提供を進める方針だ。

photo 「Aras Component Engineering」のサービス概念図(クリックで拡大)

 これらの新機能に加えて、クラウド時代が加速する中でArasが提唱するのが「オープンサービスアーキテクチャ」である。これは、PCやスマホなど、デバイスやブラウザー画面に合わせたUIを提供するというもの。「より多くの人が共通のデータを扱えるようにするには、それぞれのデバイスや環境に合わせたインタフェースが必要になる。PCとタブレットに必用なUIというのは当然異なる。そこで、UIを全てアプリとし、それを最適な形でユーザー側が再構築できるように提供することで、どのデバイスでもそしてどの役割の人でも、同じデータに最適な形でアクセスできるようにする」と久次氏は語っている。

photo 「オープンサービスアーキテクチャ」の概念図(クリックで拡大)

“しなやかさ”を持つPLMへ

 グローバル競争が過熱し続ける中、製造業にも多くの能力が要求されるようになってきている。その中でArasではPLMで実現すべきキーワードとして「レジリエント(Resilient)」を挙げる。この言葉は、「対応力」や「復旧力」などと訳され、強靭さとしなやかさを合わせたような意味を示す。

 「レジリエントの言葉のごとく、外部環境に柔軟に対応できるしなやかさを持ったPLMを提供していく。本質を追求した機能拡張とともに、時代に合わせて変化できるカスタマイズ性、データのセキュリティなどを確保していく。いつの時代も製造業の求める変化に対応できるPLMを提供し続けていきたい」と久次氏は将来の姿を語っている。

photo Aras Innovatorが予定している機能拡張ロードマップ(クリックで拡大)

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提供:アラスジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2014年10月9日

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