自動車部品メーカーに求められる“延長線上ではない改革”再生請負人が見る製造業(3)(2/3 ページ)

» 2014年09月16日 08時00分 公開

自動車部品サプライヤには何が求められるのか

 このような日系OEMの動きは、日本の自動車部品サプライヤ(日系サプライヤ)にとっても、次のような大きな経営課題をもたらしている。

競争のグローバル化

 1つ目は、競合のグローバル化である。ライバルは国内の競合他社ではなく、世界中の自動車部品サプライヤとなり、まさに国境なき戦いが行われている。

 例えば、図2は日系OEMが使用する日本国内生産用の部品のうち、外資系サプライヤの部品の採用状況を整理したものである。これによると、エレクトロニクス部品などの一部の製品を除き、ほぼ全ての自動車部品カテゴリーにおいて、外資系サプライヤの部品が採用されている。また同様に、日系OEMの海外生産拠点についても整理したところ、外資系サプライヤの実績はより顕著となっている。多くの部品カテゴリーの8割超の部品において、外資系サプライヤが納入する状況になっている。

photo 図2:国内生産モデルにおける海外サプライヤの採用割合(クリックで拡大)

グローバル供給体制の構築

 2つ目は、グローバル供給体制の構築である。これまで日系部品サプライヤの海外進出は、日系OEMの海外進出に追随する形での進出が多かった。そこでの視点は、特定地域における海外工場の設立といったものであった。今後は、国単位、地域単位で設立された工場をグローバルに結び付け、どの工場においても、同様のスペック、品質、価格の製品を供給できる体制を作ることが必須となる。

 そのためには、地域単位ではなく、グローバルベースで各拠点が一体の会社として機能することが不可欠だ。自動車部品の製造から販売に至るバリューチェーン(研究開発、購買、製造、販売)をグローバルに管理することが必要となり、それを実現するだけのマネジメント人材の確保も大きな課題となる。日本企業の場合、コミュニケーションの問題もありハードルが高いという事情もある。

 ここで、アリックスパートナーズが支援したある日系サプライヤ(A社)のケースをご紹介する。A社は、海外拠点網の構築に当たりM&Aを積極的に活用し、成長を実現した経緯があった一方、被買収企業の経営陣に裁量を認め過ぎたために、地域拠点間での研究開発、製造プロセス、経営管理などが統一されないという問題が発生した。これが拠点ベースでの利益最大化志向が弊害となり、最終的にはグローバル調達を志向するOEMメーカーからクレームを受けるようになった。

 A社はこのような状況を打破するために、グローバル・ワンカンパニーとして、組織改革を断行。これまでの地域割の組織から、グローバル組織の設立を成し遂げた。抜本的な組織改革だったことから、組織改革の実行に当たっては組織内部からの抵抗や反発はとても大きかった。そのため、全てが当初のもくろみ通りに進んでいるわけではないが、グローバル調達が前提となる市場環境においては、戦略的に極めて正しい意思決定だと思われる。

従来の延長線上にないコスト削減

 3つ目は、従来の延長線上にないコスト削減への取り組みである。多くの自動車部品については、サプライヤ間での技術力、開発力、製品提案力における性能や機能の差異は小さくなっている。一部の部品においてはいわゆるコモディティ化(一般製品化)が進んでいる。特に、今後の自動車市場の成長をドライブする中国および新興国市場においては、この傾向が強い。

 日系サプライヤからは「コスト削減圧力はOEMから常時受けている。そのためコスト削減活動は徹底している」というコメントをよく聞く。しかし、筆者のこれまでの経験では、十分なコスト削減が行われていないことが多い。アリックスパートナーズでは、GMをはじめ数多くのOEMとサプライヤの再生に取り組んできた実績がある。そこでは聖域を一切認めずに、ゼロベースでコスト削減機会を抽出し、それを迅速に実現してきた。破綻状況にあったからこそ取り組めたという事情もあったが、逆にいえば、それだけの余裕をどの自動車サプライヤも持っているといえる。

 その中でも特にコスト削減の余地が残されていると思われるのは、SG&A(販売費および一般管理費)コストである。これは、グローバル単位で機能を見直し、地域拠点ごとの業務の重複を限りなく排除していく必要がある。これを突き詰めることで、大きなコスト削減を図れる。この他、各拠点単位で個別に有している本社機能をグローバルで集約し、それをシェアードサービスという形で集中的に管理することで効率化を図る方法などもある。あるいは市場シェア獲得に無関係なノンコア業務については迅速なコスト削減を図るために、外部のBPO(Business Process Outsourcing)会社にアウトソースするということも方法としては、考えられる。

 ある日系サプライヤは、製品開発業務のアウトソースに関するロードマップを策定し、開発業務の一部を、段階的にBPO会社にアウトソースする活動を進めている。日系サプライヤで、このように抜本的なSG&Aコストの削減に取り組んでいるところはまだ少ないが、外資系サプライヤは、BPO会社を外注先としてではなく、長期的なパートナーとして位置付け、積極的に取り組んでいるところも多い。例えば、米国大手サプライヤのデルファイは、BPO大手であるGenpactに有価証券報告書の作成、管理会計報告書の作成、人事業務の一部などを含めてアウトソースしている。

 ここで、先述した日系サプライヤ(A社)のケースをあらためて紹介する。A社は、グローバル組織変革を成し遂げた結果として、本社機能をグローバルで統廃合することで一般管理費を削減する機会ができた。さまざまな業務分野のうち、財務部門がグローバルに見て比較的高コストな地域(特に米国)に集中していた。これらの業務をオフショアへ外部委託することで、人員削減による抜本的なコスト削減を行うことを決めた。

 日本企業の場合、複数の業者との競争環境を作り出し、そこで交渉を有利に進めていくことができない場合が多い。特にオフショアアウトソーシングの場合、言語の問題もあることから、ターンアラウンドコンサルタントを上手く活用することも、有効な方法も1つだ。実際にA社のケースでは、複数のBPOを競争入札の形で比較検討し、互いに競争状況を作り出すことで、有利な条件を引き出すことに成功した。下記はその一連のプロセスを示したものである(図3)。A社では、現在着々とオフショア地域への業務アウトソースが続いているという。

photo 図3:A社のSG&A削減の取り組み(クリックで拡大)

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