ダイムラーの中国産電気自動車「DENZA」はどんなクルマなのか電気自動車(1/3 ページ)

ドイツ車メーカーの中でも電気自動車(EV)への取り組みで先行してきたDaimler(ダイムラー)。同社がBYDとのジョイントベンチャーで、約4年の歳月と5億ユーロの巨費を投じて開発した中国産EV「DENZA」が間もなく発売される。DENZAはどんなクルマなのか。川端由美氏によるリポートをお届けする。

» 2014年09月25日 11時00分 公開
[木村好宏、川端由美/Kimura Office,MONOist]
「DENZA」の外観

 電気自動車(EV)・プラグインハイブリッド車(PHEV)を巡る戦いがドイツ車メーカーの間で激化している。つい最近まで、EV・PHEVなどに興味のないそぶりを見せていたはずの彼らだが、2009年にドイツの科学技術庁に当たる省庁がEV・PHEVの研究開発に補助金を出すことを決定して以降、急速にこの分野の取り組みが進展した。

 その結実として、BMWから「i3」と「i8」、Volkswagen(フォルクスワーゲン)から「e-up!」と「Golf GTE」、そしてAudi(アウディ)から「A3 e-tron」などが続々と世に送り出されてきた。販売台数自体は、「2020年までに100万台」というドイツ首相のアンゲラ・メルケル氏の公約には届きそうにないものの、ドイツ車メーカーのEV・PHEV開発に向けた取り組みは目覚ましいものがある。

 中でも、老舗の自動車メーカーであるDaimler(ダイムラー)は、EVの「smart fortwo electric drive」を2012年に発売するなど、他のドイツ車メーカーよりもEVに関する取り組みで先行してきた。米国やドイツで、カーシェアプログラム「Car2Go」へのEV導入を推し進めたり、日本でも横浜でEVのカーシェア実証試験を始めたりするなど、先進的な取り組みで定評がある。smart fortwo electric driveに続く実用的なEVという意味では、2014年夏に「B-Class electric drive」を発表したばかりだ。

 そのダイムラーが、中国の電池/自動車メーカーであるBYD(比亜迪)とのジョイントベンチャーで開発していたEV「DENZA」が2014年8月、正式に発表された。これによってダイムラーは、ドイツ車メーカーとして中国市場への一番乗りを宣言したことになる。

「DENZA」の正式発表会見の様子 「DENZA」の正式発表会見の様子。ダイムラーの中国担当取締役のHubertus Troska氏(左端)とBYD会長兼社長の王伝福氏(左から2番目)が出席した(クリックで拡大) 出典:ダイムラー

 2010年3月の両社の提携発表から、約4年の歳月と5億ユーロの巨費を投じて完成されたDENZAは、全長4.6×全幅1.85×全高1.64mで、ホイールベースが2.88mという4ドアのノッチバックセダンである。プラットフォームはサンドイッチ構造のフロアを持つ「T245」であり、ベースとなったのは先代「B-Class」と想像できる。中国市場に合わせてホイールベースを延長し、後席の空間を確保したようだ。

「DENZA」の外観(クリックで拡大) 出典:ダイムラー
「DENZA」のリチウムイオン電池パック 「DENZA」のリチウムイオン電池パック(クリックで拡大) 出典:ダイムラー

 サンドイッチ構造の二重フロアの内部には、文字通りサンドイッチの具のようにリチウムイオン電池が挟まっている。搭載されるのはBYD製のリン酸鉄リチウムイオン電池。安定性が高いことが評価されて、中国や韓国で主流となっている。リチウムイオン電池パックの容量は47.5kWh、重量は550kgに達する。リチウムイオン電池の容量が16kWhの三菱自動車の「i-MiEV」と比べれば、約3倍とかなりの大容量だ。中国の走行モードによる100km当たりの消費電力容量が17.2kWhなっているので、満充電からの走行距離は253kmとなる。なお、時速60kmの定速で100km走ったときの消費電力量は13.0kWhだ。

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