世界最大規模の商用車ショーに見る、トラックとバスの未来のカタチIAA国際商用車ショー2014 リポート(1/5 ページ)

ドイツの自動車ショーと言えば、隔年で開催されている乗用車が対象の「フランクフルトモーターショー」が知られている。しかし、その間の年に開催されている、ハノーバーを舞台にした世界最大規模の国際商用車ショーも、トラックやバスなどのトレンドを見据える上で重要なイベントになっている。川端由美氏によるリポートをお届けしよう。

» 2014年10月22日 10時00分 公開
[川端由美,MONOist]
「IAA国際商用車ショー2014」の会場内風景

 ドイツで「IAA」といえば、一般的には隔年に開催される乗用車の「フランクフルトモーターショー」のことを指す。しかしその間の年には、ハノーバーで、商用車のIAAこと「IAA国際商用車ショー」が開催されている。第65回目となる2014年の開催期間は、プレスデーが同年9月23〜24日、一般公開が9月25日〜10月2日となっている。

 世界最大の商用車ショーであり、会場のハノーバー・フェアは、プレスデーの2日間で見て回るには時間が足りないほどの広さだ。乗用車のモーターショーと比べると、受注会としての要素が強く、会場の雰囲気はかなり異なる。気に入ったバスやトラックがあればその場で発注できるし、オーナーやドライバーが訪れて、自分たちが愛用するメーカーの人たちと交流して、ロイヤルティーを高める場にもなっている。

「IAA国際商用車ショー2014」の会場であるハノーバー・フェア(左)と会場内風景(クリックで拡大)

前夜祭を開催したダイムラー

 乗用車の分野でも強いブランド力を発揮するDaimler(ダイムラー)は、商用車の分野でも存在感は大きい。プレスデー前日の9月21日、ハノーバー空港近くの特設会場で、“Daimler Night”と称するメディア向けの前夜祭イベントを開催した。2013年、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)ブランドのカーズ・オペレーションズ統括業務責任者(取締役)から商用部門のCEOに転身したWolfgang Bernhard(ウォルフガング・ベルンハルト)氏が、次世代を見据えたコンセプトカー「フューチャー・トラック 2025」の運転席に座って、自動運転のデモンストレーションを生中継で見せた。さらに、そのコンセプトカーを運転してイベント会場に入場して喝采を浴びた。

前夜祭イベントに登場したダイムラーのウォルフガング・ベルンハルト氏とプレゼンの様子(クリックで拡大)

 自動運転に加えて、左右の視界確保のために、ミラーではなくカメラを使って合成した画像を室内のモニターに表示したり、半透明のフロントパネルを通してLEDヘッドランプが灯ったりなど、未来感の演出に余念がない。キャビン内の快適性も追求しており、室内空間を2m2広げることにより運転席周辺に余裕ができたことから、自動運転の際にシートを45度傾けてリラックスして座ったり、居間のようにくつろげるコ・ドライバー(ナビゲーター)用シートも設置されたりしている。内外装のデザインを担当したのは、未来的なデザインで定評のあるチーフ・デザイナーのGordon Wagener(ゴードン・ヴァゲナー)氏だ。

「フューチャー・トラック 2025」の外観(クリックで拡大) 出典:ダイムラー
「フューチャー・トラック 2025」の運転席(クリックで拡大) 出典:ダイムラー

 自動運転システムは、「ハイウェイ・パイロット」という呼び名の通り、高速道路での使用を想定している。使われるセンサー類は、長距離レーダー(検知範囲18度/検知距離250m)、中・短距離レーダー(130度/70m)、横方向のレーザーレーダー(170度/60m)、そしてフロント・ステレオカメラ(45度/100m)と、既にさまざまな先進運転支援システム(ADAS)に使用されているものばかりだ。

 日産自動車の「リーフ」やBMWの「2シリーズ」をベースにした自動運転試験車に採用されている、レーザースキャナーは搭載されてない。レーザースキャナーのメリットは、対象物が停止していても距離の測定が可能な点であり、天候にも左右されにくい。アルゴリズムを使って特定の移動する物体を追跡しながら距離を測定することも可能だ。それゆえ、自動運転試験車のほとんどが採用しているわけだが、ダイムラーのフューチャー・トラック 2025は、ステレオカメラで同様のことができるため、レーザースキャナーは不要と考えている。

 自動車用センサーとしては既存のものばかりだが、それがダイムラーの自動運転システムの特徴ともいえる。技術的な課題はほぼクリアしているとしつつも、実際に市販車に搭載するまでには、各国において道路行政関係者との対話が必要だとしている。裏を返せば、法整備の問題がクリアになればいつでも市場に出せるという自信の表れでもある。

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